見出し画像

ガリバー "法螺吹き" 男爵の冒険Ⅶ

「大木の中は天井の高い廊下が続いておりました。大きな木目が波打つ壁には等間隔で薄黄色の灯りが並び、建物の中にいるようでした。いくつかの扉の前を通り過ぎた後、曲線と丸が組み合わさった図形が書かれた扉の前で怪物が止まりました」

「扉がひとりでに、音を立てて開くと、中には同じような姿をした四つ脚の木の怪物が2体並んで佇んでおりました。怪物を留め置く、厩舎のような部屋かと思われました」

「青年とわたくしを乗せた怪物も列に加わり、動かなくなったのであります。青年は怪物のうろ穴から出ると、軽やかに床に降りました。そうしてわたくしを枝から下ろして、そのまま肩に担ぎました」

「わたくしは『ひとまずなされるがまま、行くところまで行ってしまおう』と開き直る気持ちがあったものですから、何も言わず動きませんでした。青年はわたくしと背負い籠を担ぎ、厩舎の奥にある扉の前に立ちました。やはり扉がひとりでに開くと、青年は中に入っていきました」

「短い廊下を歩くと、大きな広間に出ました。脚の短いテーブルがいくつも並び、老若男女が床に腰かけて談笑したり、何か食べたり、あちらこちらを歩き回ったりしておりました」

「青年は皆に聞こえるように、大きな声で呼びかけました。若々しくも太く、聞く者を捉える響きがありました。人びとは話をやめて、こちらを向きました。年少の子どもたちが『わーっ!』と声をあげて走り寄ってきました。大人たちもやって来て、口ぐちに青年に話しかけました。皆、肌は浅黒く、頭髪は緑がかった、艶やかな黒色をしておりました」

「青年は人びとを手で制すると、背負い籠を近くの少年に手渡しました。そしてわたくしをテーブルの上に置き、手でさして話し始めました。どうやらわたくしを拾ってきたことを、皆に説明しているようでありました。人びとは青年の話を聞きながら、時々わたくしの顔をのぞき見ておりました」(続)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?