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ガリバー "法螺吹き" 男爵の冒険Ⅳ

「しかし、わたくしは無事でありました。と申しますのも、わたくしに襲いかかろうとした怪物の真上から樹が落ちてきたのであります」

「幹は短かったのですが太く、張り出した枝には瑞々しい青葉が繁っておりました。根に当たる部分は四本の腕のようなものが生え、蛸か烏賊のようにうねり、怪物に絡みついたのであります。その樹もまさに、怪物でありました」

「樹の怪物に捕まった根の怪物は、途端に大人しくなりました。そうして脚を縮こませて、動かなくなったのであります。樹の怪物に食べられてしまうのだろうか、そう思いながら見ておりますと、樹の怪物からひらり、と人が降りてきました」

「浅黒い肌で、黒い髪を後ろに束ねた、鋭い眼差しの青年でありました。彼は根の怪物に近づいていきました。しゃがみ込むと小さなナイフのようなものを取り出し、怪物から生えた髭を数本切り取り、籠に入れました」

「わたくしは生き延びるには、一人でさまようよりも、この青年に身柄を預けたほうがよいと判断したのであります。青年が籠を背負って立ち上がった時に、思い切って声をかけました」

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