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ガリバー "法螺吹き" 男爵の冒険Ⅴ

「わたくしは士官学校で学んだ、帝国各地で使われる言語、古典共通語、古代デルファイ語、東方の交易商の言葉など、思い出せる限りの言語で名を名乗り、小剣を目の前に置いてひざまづき、抵抗の意思がないことを伝えようとしました」

「青年は、耳慣れぬ言語で何かを言いました。決して語気は強くなく、尋ねるような響きでした。わたくしはどう答えてよいのかわかりませんでしたので、青年が言葉を発している間、身動きせずにかの人を見ていたのであります」

「青年はわたくしの剣を拾い上げ、鞘から刀身を抜き差しした後、背中の籠に放り入れました。そうして再び、わたくしに話しかけたのであります。今度は何か命令するような、きっぱりとした口調でした。わたくしは服従の意思が伝わるように願いながら、ただ黙っておりました」

「かの青年は束ねて腰に留めていたロープのような蔦を解き、わたくしの手足を縛りました。そうして軽々と持ち上げると、わたくしを木の怪物の枝に括り付けたのであります。青年はするりと怪物の上に乗ると、幹の中央にぽっかりとあいたうろ穴に入りました」

「青年の胸から下がうろ穴に収まると、木の怪物が身震いしました。四本の腕を根の怪物から離すと、近くに生えていた大木に絡みついたのであります」

「わたくしが思わず『わっ』と声をあげると、わたくしを観察していた青年は口元を動かし、くすりと笑いました。そして真面目な表情に戻り、正面に向き直ると、うろ穴の中にすっぽりと入りました。青年とわたくしを乗せた怪物は腕をうねらせながら、するすると大木を登っていったのであります」(続)

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