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医療従事者を守る!カスタマーハラスメント対策入門講義
自分は、カスタマーハラスメント等を多く対応している現役弁護士なので、
医療従事者を向けの『カスタマーハラスメント対策入門講義』を作ってみました。
試しに途中から有料記事化にしてます(総文字数6932字)。
続きが読みたくなったら課金してください。
はじめに:
患者やその家族等からの暴力、暴言、理不尽な要求など、医療現場におけるカスタマーハラスメントが増加傾向にあります。
医療従事者の心身の健康を脅かし、医療サービスの質の低下にも繋がる深刻な問題です。
本講義では、カスタマーハラスメントへの理解を深め、適切な対応を身につけることを目的とします。
1. カスタマーハラスメント(カスハラ)とは
定義:
顧客等からのクレーム・言動のうち、当該クレーム・言動の要求の内容の法的社会的に妥当性を欠くもの、または、当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なものであって、当該手段・態様により、労働者の就業環境が害されるもの
ここは、一般の方が結構誤解しがちなポイントですが、要求内容が妥当であっても、その要求手段が不相当ならカスタマーハラスメントとなるということです。
例えば、お金を貸していて返済を求める場合は、お金を請求する権利はあるが、請求の仕方が不相当な場合(著しい脅迫的文言を使う等)は、刑法上の恐喝罪は成立すると考えられております。
つまり、『要求する権利はあっても、要求する手段が不相当なものであってはならない』というのが法律上の考えということです。
また、行為者の属性は、たとえば、暴力団組員である等は、必須条件ではありません。
暴力団組員であっても、一般人であっても、不当な要求行為をすれば、カスタマーハラスメントに該当します。
カスタマーハラスメントの種類:
身体的な暴力(殴る、蹴る、物を投げる)
言葉による暴力(暴言、侮辱、脅迫)
理不尽な要求(診療内容への過剰な干渉、特別な待遇の要求)
セクシャルハラスメント(性的な言動をする。体に触れる。)
個人情報の要求(従業員の住所を教えろ等)
誹謗中傷(SNSやGoogleマップの口コミ等での誹謗中傷)
※近時、病院の口コミ欄に誹謗中傷したケースにおいて、200万円の賠償請求が認められた裁判例もあります。長時間拘束(長時間の電話・長時間の面談)
診療時間外での電話や訪問
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2. カスタマーハラスメントが医療現場に与える影響
カスタマーハラスメントは、医療現場に以下のような深刻な影響を与えます。
医療従事者への影響: 精神的なストレス、うつ状態、身体的な傷害、離職、モチベーション低下
医療機関への影響: 医療サービスの質の低下、評判の悪化、他の患者やその家族等への影響
社会への影響: 医療従事者不足、医療費等の増加
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3. カスタマーハラスメントと医師の応召義務
カスタマーハラスメントに対して、どんな場合であっても、診療拒否できるかというとそうではないのが、医療の場合の難しい部分です。
それは、医師の応召義務との関係が問題になるからです。
医師法第19条:
「診療に従事する医師は、診察治療の求めがあった場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない。」(いわゆる応召義務)正当な事由がある場合:
正当な事由とは、以下の場合に認められるとされています。
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