10年経っても忘れられなかった、ネギの恨み
先日、ある同僚が退職することを知りました。
あの人、一番大変なタイミングで担当していた仕事を投げ出して、そのまま会社に来なくなったことがあったなぁ…などと思い出していたら、もっと嫌な思い出が蘇ってきました。
それは、その人と同じプロジェクトで仕事をしていた冬のこと。
忘年会でお鍋を食べに行き、わたしがお玉で具材をすくっていた時だったと思います。
隣にいたその人から突然、
「○○さんの手、なんかネギ臭いですね!
僕、鼻がいいんですよ〜」
とかなり大きめの声で言われたのです。
ひ、ひどい…。
同じテーブルの人たちはフォローできず困惑しているし、わたしも何も言えず半笑いで固まって終わった記憶があります。
今だったら、
「え、ごめんなさいネギ臭しちゃいました?
そうなんです〜今朝、夕飯の仕込みでネギを切ってきたので…。洗ってもなかなかとれないんですよね。
自分でもほぼわからないのに、○○さんって鼻が本当にいいんですね!
でも、恥ずかしいからそんな大きな声で言わないでください〜。気づいても黙っていてほしかったな〜!」
と、明るくクレームを伝えることもできたと思います。
でも、当時のわたしはまだ娘も小さく、育休から復帰してまだ日が浅かった。日々を無事にまわしていくだけでとにかく精一杯でした。それこそ、その飲み会にも、必死にやりくりをし、元夫に娘を頼んで参加していたはずです。
そんな余裕のないわたしにとって、無邪気に言われた、
「ネギ臭いですね」
というワードは、かなり破壊力がありました。
ああ…できる限り家のことで必死なことを職場では出さないように努力してきたのに、ネギ臭かったら台無しだよ!
ネギ臭と共に出社してすみませんでした…消えたい。
と、かなり落ち込みながら帰ったことを今でも覚えています。
それ以来、わたしはあまりネギを買わなくなりました。
ネギを見るとあの時のことを思い出してしまい、あまり手が伸びなくなってしまったのです。そして、すでに刻まれているネギを買うことが増えました。
でも、冬になるとお鍋にネギは絶対入れたいので、出社する日はネギを切らない、朝にネギを切ったら、その日はできるだけ至近距離で人に会わないようにする、などを心がけています。
その人にとっては本当に悪気はなく(たぶん)無邪気に言ったであろう何気ない一言が、まさか10年以上経ってもここまで記憶に残り、ネギとの関係にまで影響するとは、思ってもみませんでした。
言葉の力って、すごい。
自分が誰かに何気なく、悪気なく伝えた言葉も、誰かの心を少し傷つけてしまうことがあるのだろうな…と怖くもなった経験です。
でも、そろそろまたネギと仲良くしたい…と思っています。