君のことは好きだ。
わたしは物心ついた時から、恋愛対象が男性という、いわゆるゲイだ。LGBTQやアセクシャルなど、性的指向の呼び名が複雑化しているが、わたしは本家本元の王道ゲイだ。
物心ついた時と言っても、それは幼稚園の時だ。朧げな記憶だが、カッコいい男の子が好きだった。
小学校の時、5年生の時に転校してきた藤井くんという子がいて、とにかく顔がどタイプで、性格もツンデレ系で、もう毎日身体中のホルモンがダダ漏れだった。
中学校から男子校だったので、それはもうパラダイスだった。だって、人類皆友達よろしく、全校皆恋愛対象だ。イケる、イケない、ん?イケなくもないかも?みたいな日々。
その中学で、わたしは生まれて初めて告白された。もちろん男の子だ。何を隠そう、わたしは彼がすごくタイプだった。薄い塩顔で、ひょろっと背が高く、スポーツ万能、オシャレで京都の良いとこのお坊ちゃんと来た。
ある日突然、休憩時間にワタシの前に現れた彼はこう言った。
「僕は男の子のことが好きな訳では無いんだけど、君のことは好きだ」
ん?んん?どういうことだ?
男の子のことは好きではないけど、男の子ではない君が好きです。ということ?いやいや、ワタシ一応男ですよ?
男の子のことは好きではないはずなのに、君の性別を超えた魅力に僕はやられてしまいました。ってこと?ちょっと自己肯定感が強すぎる気がするが、折角だし、こっちにしとくか。
そう言われても、当時は何て答えたらいいか分からなかった。自分ではゲイだと分かっていたけど、当時は今ほどゲイという定義がしっかりしていないし、思春期の自分もゲイである自分と、もしかしたノンケかもしれない自分のはざまで揺れ動いていた。なので、ワタシは、
「あぁ、うん。そうなんや。ありがとう。」
と言った。
バカ。バカバカバカ。恋愛偏差値低すぎだろう。タイムマシンがあったら、当時の自分に張り手を食らわせたい。
目を覚ませ、こんなどタイプのイケメンに告白されるなんて、皆無だぞ!!事実、これ以降でそんな貴重な経験をしたことはない。
それを聞いた彼はこう言った。
「これから毎日、休憩時間に話に来てもいいかな?」と。
なんて積極的。押して押して押し倒すスタイルの恋愛ですね?事実、彼は毎日のようにわたしの席に来ては、何かを話していったが、もちろんドキドキしすぎて覚えてない。
その後、もちろん進展は無かったが、彼は高校に入って、イギリスにファッション留学をすると言って中退してしまった。
今になって思う。彼もお仲間だ。海外にファッション留学なんて、ノンケのセンスでは出来ない。
彼はどうしてるだろうか。今思えば、本当に大胆な人だ。でも、ワタシよりも断然成熟してて、自分の将来したいことを見つけて、行動できる芯の強い人だったんだな。
逃した魚は大きい。
でも、どこかで活躍してますように。