劣等感を駆け上がれ
昔はいつも一緒だったのに今はずいぶん遠くに感じる友達、あなたにもいるだろう。
私は今日まさに、そんな旧友の舞台を観てきた。
新宿紀伊国屋ホール。400人が入る客席。
選ばれた者のみぞ立てるその舞台の上で、彼女は輝いていた。昔馴染みのひいき目ではない。笑わせ、ハラハラさせ、感動させる。
どのシーンも見飽きる事なく、一々おもしろい。エンターテイナーとして、女優として、まごう事なきプロフェッショナル。
楽しみながらも、どこか心は晴れなかった。
ああ、遠くにいってしまったんだな。
劣等感が押し寄せてくる。
終演後、私は彼女に挨拶することができなかった。
本当は分かっている。
劣等感を抱くのは筋違いなことを。彼女は遠くに行ってしまったのではない、元々近くにいなかったのだ。
ダンスで内閣総理大臣賞をとったり、短大の教授に推薦をもらったり、彼女は学生のころから異質な光を放っていた。
それを見て見ぬフリして、ただ笑いあっていたのが、この私。
その結果私は演技を離れ、彼女は今やプロフェッショナルだ。同じ時間が経ったはずなのに、こんなにも今の環境は違う。
私なんてどうせ、と言ってはいけない。
それを言った途端に、私はただの負け犬になってしまうから。
褒められた経歴はないが、私なりに悪戦苦闘した日々だった。
なのに、負け犬だなんて思いたくない。他でもない自分のことを。
だから、私は『どうせ』と言わない。劣等感はプライドの証。悔しい分だけ動けばいい。
大丈夫、これからよ。
私が私を一番信じてあげるからね。
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