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「しょーもないと思わん?」
✳︎音声はこちら
(訳あって屋外で録音してます)
今日、父と母とファミレスに行った。
父が嬉しそうに私に話しかける。
「この前〇〇駅に行ったんよ、辺りは田んぼだけ、しょうもないとおもわん?」
「こないだファミレスで高校生三人組がひたすらトランプしてたんよ、いい歳してしょうもないと思わん?」
「あの番組、しょうもないと思わん?」
笑顔で、問いかけてくる。
「しょうもないと思わん?」「馬鹿馬鹿しいと思わん?」何かを否定する言葉を楽しそうに投げかけてくる。
悲しいなあ、と私は思う。昨日のエッセイには母について書いたが(詳しくは「自分しか変えられないよ」にて)、父も父で大変だ。
私の父はプライドが高い。自分を否定されることに耐えられない人だ。だから優位に立ちたがる。「しょうもないと思わん?」「馬鹿馬鹿しいと思わん?」そう何かをこき下ろすことで、自分を“選ぶ側の人間だ”と、“評価する側の人間だ”と思い込みたいのだろう。
父には友達がいない。そりゃあそうだろうなと私は思う。もしも彼が父親でなかったら、私だって関わりたくはない。それってとても悲しいことだ。
「そうだね!しょうもないね!馬鹿みたい!」
そう言って私が笑うのを待っている。お父さん、ごめんね。私はもうただ頷くだけの、100%同意するだけの、あなたにとっての心地いい言葉をかけるだけの人はやめたんだ。
「この前〇〇駅に行ったんよ。辺りは田んぼだけ、しょうもないとおもわん?」
『へえ、田舎の方に行ってきたんだ!なんか美味しいもの食べた?』
「こないだファミレスで高校生三人組がひたすらトランプしてたんよ、いい歳してしょうもないと思わん?」
『この時代にトランプで盛り上がれるなんていい友達をもったね、その子たち』
「あの番組、しょうもないと思わん?」
『子供向け番組だからわかりやすいんだね、なかなか面白いよ』
否定発言に乗っからないよう、身をかわすように言葉を選ぶ。
あなたには何の悪気もない。でもそれが問題なのだ。あなたはきっと、息をするように他人を侮辱する。だから誰とも仲良くなれないのだ。
あなたに足りないのは、自己肯定感だ。自分を自分で認められる人には、他人を否定している時間なんて無駄でしかないのだ。
あなたが自分を認められるようになるには、どうしたらいいのだろう。昨日も書いたが、人は人を変えられない。だから、私はあなたを変えられない。変える権利なんて、ない。ましてや「変わるべきだ」と思う権利すらない。
でも、あなたの浅い笑い方を見ていると、私は心が痛むよ。私が3歳の頃、輝く笑顔で抱きかかえてくれたこと、今でも覚えてる。あの笑顔が私は今でも好きだ。
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今日行ったファミレスは、昨日オープンしたばかりだった。席を立つ前にお皿とグラス、ゴミを整える私に父が言う。
「店員さんに任せておけばいいのに」
私は答える。
「昨日オープンだから、店員さんは緊張してるでしょ?少しでもスムーズに働けるようにしておきたくて。どうせなら、楽しく働いてもらいたいじゃん」
父は私を見て、「優しいね」と言った。そして自分の前に広がるゴミを集め、私以上に綺麗にまとめて席を立った。
あなたも本当は、優しいもんね。
卑屈な笑顔を脱げる日が、いつか来るといいね。
昨日のエッセイ
「自分しか変えられないよ」