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バッカルがなんだって、歯歯歯(カワイイの正解とはと歯)

Doveの広告が炎上している。これ。

Doveが渋谷駅にデカデカと貼り出したという広告

バッカルコリドー、ご存知でしたか。私は彼らが炎上デビューする前から知ってましたけどね(と古参ぶる)。

いや矯正するにあたって検索しまくったときに知ったわけだけど。やはり知ったら気になるものだね。知らなかったら気にならなかったのに、知ったら私にははっきりバッカルコリドーがあることを知った。ごりごりのバッカルコリダー。ちなみにバッカルファット(ご存知?)もめちゃめちゃある。バッカルコリドー&バッカルファット。大木こだまひびき、オール阪神・巨人、中田カウスボタン的な、バッカル一派。

Doveの広告については賛否両論あるようだ。「こんなことでいちいちケチつけるな」という声もあるけど、Doveが今回の広告のターゲットとしている層ドンピシャの高校生の娘は「Doveは絶対買わない」と憤慨していた。私も表現方法に疑問を感じるし、「#カワイイに正解なんてない」というキモのメッセージにも首をひねるところがある。「正解」はないかもしれないけど、「流行」はあるよね。平安から令和まで。でもって「流行り顔」イコール「正解」になっちゃってるからな。若者にメッセージを伝えるなら、大人としてそこらへんを曖昧にごまかしたくない。もう少し再考の余地はあったのではないかと思う。

正解があったとしても「正解じゃなくてもいい」が正解では?


ちょうど書こうと思っていたのは、歯と美について。歯はなかなかやっかいだ。昨今ルッキズムは唾棄すべきものとなっているが、歯並びは審美の前に「いい」「悪い」がはっきりしている。Doveの広告は「#カワイイに正解なんてない」と言っているが、「#歯並びには正解はある」のである。

私はそもそも歯並びはおろか、歯全体に対して無頓着であり、「いい」「悪い」の意識が低かった。前回書いたように、「出っ歯だな」という自覚はあったものの、だからといってそれが「悪い」とは思っていなかった。そればかりか、奥歯は虫歯だらけ。「酔っぱらっちゃったから」という理由で歯磨きをパスすることも多々あり。だから歯茎は年中痛い。自分の歯が何本あるかすら知らなかった。歯は私にとって面倒くさいものでしかなかった。

矯正相談に行ったのは「歯を治したい」というよりも、人生折り返し地点で「できることはチャレンジしてみたい。自分を変えてみたい」という気持ちになったから。私はとにかくリーズナブルにちょこっと変身できればよかったので、「部分矯正したいんです」と願い出た。歯科医は私の歯を見てこう言った。

「出っ歯で正中線もずれている。部分矯正できないことはないけど、それでは噛み合わせは治せないし、前歯のガタつきは治っても、出っ歯自体は治りません。出っ歯を治すなら全体を矯正して奥歯から引っ張っていかないと無理。部分矯正だと引っ込まない」

その口調から「見た目ばかり気にして、だから素人はわかってない」といったニュアンスを感じ取った。歯科医的には見た目より歯の健康のために矯正すべきという考えなのだろう。ここが美容整形との違い。歯は「整形」ではなく「矯正」、すなわち「正すべき」なのだと知った(だったら保険きくようにしてくれよー!)。

そういう意味では、部分矯正に甘んじた私の歯は、歯科医から見ると中途半端で邪道なものなのかもしれない。

だが一方で、健康と美を完全に切り離すことはできない面もあると思う。たとえば、介護施設でメイクをしてあげるメイクセラピーというものがある。メイクをしてもらった高齢者は生き生きと笑顔になりQOLが向上するのだという。

この場合、メイクによって得られる美は、他人との比較やどこかの誰かが決めた美の基準に寄せるためではなく、自分をきちんとケアすること、それによってこれまでの自分よりも心地よい状態になることではないだろうか。それは部屋を掃除するとか(私はしないが)、靴を磨くとか(磨いたことないが)、庭の手入れをするとか(庭自体ないが!)、そういったことと似ている。

私は貧乏性なので「大金を払ったからには大事にしなければ」と、矯正を始めてから歯を念入りに磨くようになった。誰かと比べて歯を白くしたい、キレイになりたいということではなく、自分の歯を大切に長く使っていきたいという思いからだ。今では2種類の歯ブラシ、歯間ブラシ、フロスを駆使して手入れをしているので、めちゃくちゃ時間がかかる。正直面倒くさい。が、不思議なもので、ケアすればケアするほど愛着がわいてくる。

これまで顔・体に対してケアすることが苦痛、むしろ「自分の顔・体なんか見たくない」という思いのほうが強かったが、初めて自分に愛着が持てた。歯だけに対してだけど。

歯科医的には「出っ歯は全然治ってないのに」というレベルのプチ矯正かもしれないが、それでも私の歯に対するセルフネグレクトははっきりと矯正されたと実感している。もう「酔っ払ったから磨かないで寝ちゃえ!」なんて絶対にしないと誓える。本来はお金をかけなくても、自然のままでそう思えればいいのだろうけど、残念ながらそこまでは人間できてなかった。

私、鼻と顎をむすぶ「ほうれいライン」はくっきりありますけど違うのん?

Eラインね。私は全然外れてます。歯科医が言った通り出っ歯自体は引っ込んでないので、口元はモコッとしたまま。そういった意味では、「正解」は手に入れられてない。

「カワイイに正解なんてない」と言われても、「そんなきれいごと言うな」って気がするし、「歯並びに正解はある」と言われても、「そんなカネねえよ」って思う。でも「世間が決めた"正解"からはずれてる自分も案外嫌いじゃないから、少しは大切にしてあげようか」とは思えるようになった。これが一番の正解なんじゃないかなと思ってる。

はー、この境地にたどり着くまで半世紀もかかったし、まだ歯以外のところではそんなキラキラなこと思えてないです全然。それを生まれてから10数年の子たちにわかってもらおうというのは相当難しそうだよねえDoveさん。

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