炎上
燃えていた。
どこが爆発しただろうか
爆破予告が出てたとかそんな噂もあった。
瞬く間に燃え広がる火にたじろいだのは
私。と少しの人たちだけ。
歌は続く。
踊りも続く。
逃げ出す人も確かにいた。
でも圧倒的に多かったのは火の中でも
踊り狂うファンたち。
アーティストが放った光が炎よりも強い。
飛び散る汗に映る炎さえグラデーションの飾りにする。
きっとこのまま踊り続ければ俺たちは死ぬ。
それでも、それでも湧き上がる感情が
ここで止まってしまうことの恐怖の方が、
今は強いんだ。
命が燃えている。
命が燃えているから身体が燃えていくのが
怖くない。麻痺している。
もし今日を生き残ったとき
明日の私が感じるのは震えるほどの恐怖だって
脳がわかってるのに
喉が搾り出すのは断末魔に替わる音量の歌。
ハートがぶちがあっている。
危険信号を打ち鳴らす心臓と
リズムがシンクロする。
こんなに気持ちがいいことってあるんだ。
ステージのレーザーが炎に揺れる。
最後まで
最後まで……
そう願ったけれど
私は倒れた。
息がもう、できなくて。