忘れ物の枕に歌を添えてー藤原実方、藤原道信、藤原公任ー
やっと、ここに到着。
藤原実方の友人は多くいますが、私家集によく取り上げられていて、特に仲がよかったと私が思っているのが、藤原道綱、藤原道信、藤原公任、源宣方です。
藤原道綱は前に、恋敵としてあげましたが、私家集での歌のやりとりは一番多いのでは?ライバルでもあるし、おもしろい関係です。
源宣方は枕草子にも出てきますね。今昔物語でも、二人は親友であったと書かれています。
そして、藤原道信と藤原公任。この二人も、心ゆるせる友人ではないでしょうか。上の二人は実方と同年代ですが、道信と公任はだいぶ年下です。それでも、歌詠みとしてとても懇意であったようです。
好きな歌のやりとりを一つ。
忘れ物の枕箱に添えまして
おそらく、三人ともに中将であった宮中での宿直明けの朝のこと、道信が枕を忘れることから始まります。
さらに、歌の内容に妄想を加えると、実方は枕箱を玉櫛笥(玉手箱)に例えてるんですよね。
そういう歌は他にもあるのですが、ひょっとしたら、本当に乙姫様にもらった笄か枕だったんじゃ…。
乙姫様、つまり、道信の恋人です。
そんな大事なものを浦島道信がいないところで見たりなんてできませんよ。なんてね。
あと、玉手箱を開けると、老人になってしまい、もう会えなくなるから、と解説に。縁起担ぎだそうです。
道信と会えなくなったら困るから。という実方の茶目っ気でしょうか。
この歌は道信集にも掲載されています。
一方、公任は、こういう話は言わずにはいれないんですよ。
『和泉式部日記』でも有名な和泉式部と敦道親王のスキャンダルも歌のネタにして、この二人相手に詠んでみたり。
『紫式部日記』では、酔いに任せてか、藤式部(紫式部)に「若紫はどこですか」と訊ねたり。
道信に対しても、最近、あの女性と仲いいよね。真面目な道信でも、おしゃれに気を遣っちゃうよね。と。
だから、別に僕は変わってませんよ。と道信は返しているのだったら、この歌もとても広がる気がします。
三人一緒だったとは、何にも書いてはないのですが、実方のところと、公任のところ、二度も枕を忘れることもないでしょう。
ところで、このやりとりした歌を分解すると、序詞や掛詞など、技巧をこらした教養高い歌の戯れ。すごいです。しかし、奈倉は文法は苦手なので、説明は詳しい方におまかせして。
ちなみに、現代で一般的になっている浦島太郎の話ができあがったのは、近代のこと。
平安時代には『続浦島子伝記』というものが有名だったようで。
『続浦島子伝記』では、浦島子が釣り上げたのは、五色の甲羅を持つ亀でした。その正体は仙女だったのです。
彼女に仙界に連れて行かれた浦島子は、そこでもてなしをうけます。
そして、乙姫と浦島子は体の関係をもちます。
漢籍が読める殿方向けの艶本の要素もあるのでしょうか。
だから、男同士の艶っぽい戯れの歌なのでしょう。
《参考》
『新日本古典文学大系 平安私家集』岩波書店
↓こちらからの転載です。
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