国語の先生が選ぶ素敵絵本 no.1 「でんしゃ くるかな?」 福音館書店
こんにちは。現在育休中の中学校国語科教員です。この「国語の先生が選ぶ素敵絵本」では、息子に読んだ絵本の中から「これは…!」と思った1冊を自分の備忘録も兼ねて記録していきたいと思います。
今日の1冊は、福音館書店の「でんしゃ くるかな?」(2021年)です。
わくわくする気持ちにあふれた絵本
この「でんしゃ くるかな?」は福音館書店の「こどものとも012」という月刊絵本の中でも、ハードカバー化されて出版された人気作です。月刊絵本としての発行は2018年ですが、ハードカバーになったのは2021年なので、比較的新しい作品。
この絵本の魅力は、動物たちのわくわくする気持ちが伝わってくる絵です。「でんしゃくるかな?」という期待と、「きたー!」という喜びが、動物たちの全身を使って表現されています。
見てください、この「くるかな?」という少し不安そうな表情と、「きたー!」と両手をあげ、体をのけぞらせて喜ぶ姿。
大人にとってみれば「たかが電車」。東京に住んでいれば、電車なんてちょっと待てばすぐに来るし、交通手段のひとつでしかありません。でも、子どもにとっては「くるかな?こないかな?」とわくわくしながら待ち望む、自分の世界に大きな変化をもたらしてくれるものなのだということがとてもよく伝わってきます。
そしてこの作家さんの絵の素晴らしいところは、体の向きで電車の動きが感じられるところ。
2枚めの絵では、動物たちが右を向いて「きたー!」と言っていますが、この次に左を向いて「ばいばーい」と言う絵が続きます。連続するこの2枚の絵によって、電車に右から来て左へ去るという動きを与え、絵本全体の躍動感につながっています。
親子の対話も楽しめる1冊
この絵本の構成は、「くるかな?」「きたー!」「ばいばーい」が2回繰り返され、最後に来た黄色い電車にみんなで乗りこむ、というものになっています。(ですから、最後の黄色い電車が来たときの喜びようは尋常ではありません。それがまたかわいい☆)
それまでは去っていく電車に向かって「ばいばーい」と言っていたのが、最後は読んでいる読者に向かって電車の中から「ばいばーい」と言って去っていきます。そして、裏表紙には黄色い電車にのってどこかへ向かう動物たちが小さく描かれています。
「電車くるかな?どうかな?くるかな?」
「わー!来たねぇ!良かったねえ~」
「電車に一緒に乗りたいね」
「みんなでどこへおでかけしたのかな?」
などなど、一緒に読んでいる赤ちゃんとお話することを自然と楽しめます。(…と言いつつ息子はまだ4ヶ月なので、母が勝手に話しかけて楽しんでいるだけですが、もう少し成長したら対話になると信じています。)
動物たちとわくわく感を共有することができ、さらに絵本を読み終わったあとに続くお話を想像したくなる。この本の世界にいつの間にか入り込んでしまう非常に強い吸引力をもった1冊です。
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