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香取慎吾「WHO AM I」展

福岡市美術館であった香取慎吾氏の個展である「WHO AM I」展に行ってきた。

コンセプトは「光と闇」
天下のジャニーズアイドル、SMAPの一員としてトップアイドルに輝いた彼が表現する光と闇とはいったいどのようなものなのか。

そして、SMAP結成から解散し、新しい地図としての活躍をする彼がみてきた世界はどんな世界なのか。

今展覧会は香取慎吾の作り出す独特な世界観に浸りながら、彼の記憶に触れることができた展覧会だった。

全体的にちょっと怖い


そもそもスマスマめっちゃみてたし、SMAPが全盛期の時の記憶がまだある私としては、香取慎吾という人物の印象について「明るくて、笑顔で、みんなのムードメーカー」というポップな印象を持っていた。

でも、展覧会のチラシに掲載されてる作品をチラッとみた時から、おや?と感じる部分があったことは正直に告白しておきたい。

私が思ってる彼の印象からは想像もつかない、なんとも闇深い作品がそこにはあったからだ。

それは作品を生で見てもそうで、実際に作品を前にするや否や、「怖い」という印象が常にあった。

勿論、今展覧会のコンセプトが闇と光であり、最初は暗い感じの絵が続くのは分かるんだけど、流れてる音楽もオドロオドロしくて、あれ?私お化け屋敷に入った?と錯覚するぐらいほとんどの作品の色合いなり、描かれてる題材は不気味な雰囲気を纏っている。

特に、“くろうさぎ“関連の作品はそれが如実で、絵と一緒に書いてある文字もネガティブなものばかり。
(ここ写真撮れなかったのが残念)

また、髪の毛を使用した作品もあって、過去10年分の自分の髪の毛を使用して作られたその作品は、狂気的な執念が宿っていて、もはや特級呪物のよう。
(あれでを使いこなせる術師がいたとすれば、多分その辺の妖怪はワンパンで倒せる。
それぐらい強い狂気)

どの作品にも恐怖なり、作家の怒りみたいな負の感情が渦巻いていて、それは光のゾーンに入ってからも一緒。
光と闇というか、暗い闇と明るい闇みたいな感じ。

香取慎吾の持ってる天真爛漫なイメージからは想像もつかない作品群に、ただただ恐れ慄いていた。

香取慎吾が見てきた世界

小学生の頃から芸能界、そしてジャニーズアイドルとして活躍してきた、国民的アイドル香取慎吾。

普通とは違う世界を小さい頃からずっと見つづけてきた、そんな彼の記憶を絵を通してちょっとだけ覗かせてもらってる。
展覧会中そんな感覚を抱いていた。

何も知らず、遠くから見ているだけの私にとって芸能界は明るくて、華やかで、楽しそうな雰囲気に包まれていたけど、裏では決してそれだけではない、寧ろ、それを演出するために、たくさんの苦悩と傷に塗れ、流すことも許されない涙が流れていたんだと、彼の絵が訴えかけているようだった。

純粋に表現したいものを

では、なぜこんな闇深い作品を生み出したんだろう?と考えた時、それが一番香取慎吾が今表現したいものだったからだろう、という答えに行き着いた。

ある程度の地位と財を築き、お金とか周りからの目とか、そういうものを一切気にせず、ただ純粋に表現したいものを表現する。
それがアートの本質だとすれば、怒りや、恐怖、闇といった普通なら書くことを戸惑ってしまうような受け入れ難いもの、でも確かに自分の中にある強い衝動をキャンバスにぶち撒けるのではないか。

誰かにおべっか使うわけでも、いい子ちゃんである必要もないと吹っ切れた清々しさ、これが俺なんだという自信、こうやって突き進むんだという強さ、それが闇に対しての彼なりの光なのかもしれないと感じた。

最後に

光と闇──

アンビバレンスな今展覧会は、人の目や私利私欲に左右されない、人の奥底にある素直な感情が表現されたある意味ですごく純粋な展覧会のような気がする。

中央にいるのはくろうさぎ。
写真で見てもちょっと怖い。

芸能界の頂上から見た景色は、想像を絶するほど高く、地獄までをも見通せるくらい孤独だったのかもしれない。

そんな人の感情に触れることができる本展覧会は8月27日まで、福岡市美術館で開催中。
芸能界に興味がある貴方に、是非。

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