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水は海に向かって流れる

前田哲監督作品、広瀬すず氏主演の「水は海に向かって流れる」をみてきた。

私あるあるの予告の段階からめちゃくちゃ気になっていて、すずちゃんがとにかく可愛くて、絶対見に行く!って決めてた作品。

ムビチケが販売されて即買って、ようやく観に行けた(なんでそんなに楽しみにしてたのにこんな遅いんだよって感じだけど、最近車校に行き始めたから全然映画行けてなくて、やっと観に行けると思ったら映画早朝にしかやってないから、夜勤前に見に行くしかなかった!!!!!)

めちゃくちゃ良かった……。

あらすじ

高校通学のため叔父の家に居候することになった直達青年。
雨が降り頻る中、傘を刺してやってきたのは見知らぬ1人の女性だった。
榊千紗と名乗る彼女に連れられ案内されたのは
トーテムポールが大きな目印の一軒家。
そこには、脱サラしてニゲミチ先生のペンネームで漫画家をしている叔父の茂道のほかに、女装占い師の泉谷、海外放浪をしている大学教授の成瀬、そして無愛想ながらも美味しい料理を振る舞ってくれるOLの榊さんと曲者達が揃い、仲良くシェアハウスをしていた。
そんな不思議なシェアハウスで暮らしていくうちに、直達は榊さんとの間に思いもよらぬ因縁があることに気づいてしまう。
「私は恋愛をしない」と宣言して、毎日を淡々と生きる榊さんにだんだん惹かれていく直達。
そしてそんな直達に淡い想いを抱いている者もいて──。
過去の怒りを抱えたまま時間が止まってしまった榊さんと、純粋で真っ直ぐな気持ちをぶつけていく直達との爽やかなときめきを感じる物語が始まる。

以下ネタバレあり感想


気になったところ

良かったとはいえ、ほんのちょっぴり気になったところがあるのでそれを最初に言っていく。

①なんか違和感のある台詞回し
この映画時々「なぜその言い回しになった?」というセリフが出てくる。
特に困惑したのは、直達に思いを寄せる楓が自分の思いを伝えた時、「ご理解いただけたか、このハート泥棒!」と言って立ち去るシーン。
私は原作未読なので、もしかしたらこのセリフは原作にもあったのかもしれないけど、うーん映画で見てるとかなり違和感があり「今時の女子高生がそんなセリフ言わんやろ」と思わず突っ込みたくなる。
また、榊さんとその母親対峙したシーンで、榊さんが母親に感情をぶつけた際、母親は「あなたまともじゃないわよ」というシーンがある。
え?なんで?不倫して出て行って、そのことに対して怒りぶつけられて「あなたまともじゃない」ってどういう気持ちでそのセリフ言ってるの?
人の気持ちがわからないの?サイコパス?
と思い、ポカーンとしてしまった。
こういう引っ掛かりのあるセリフや、その言い方がちょくちょくあるので、その度に「これは作り物です」って言われてるような気がして、現実に引き戻される」

②シェアハウスの住人の関係性分かりづらい。
これも私が原作未読だから、原作を読めば分かるのかもしれないけど、シェアハウスのメンバーがなぜあの家に集まって、どういう関係性なのかわかりづらい。
そもそもあの家は教授の家?なんだよね?
それでその教授の親友の子供が榊さんだけど、
なんで榊さんは一人暮らしじゃなくてわざわざ野郎ばっかりいるシェアハウスに住んでるのか、その他のメンバーは教授とどんな知り合いで、どんなきっかけでシェアハウスをしているのかほとんど説明がない。
だから、あそこに住んでるメンバーが、主人公たちにとって都合のいいただの舞台装置にしか思えなくて、みんなのキャラが良かっただけに惜しいなぁと感じるポイントだった。

③主人公自体が何者なのかよく分からない
パンフレットを読んでようやく分かったけど、榊さんOLなんだね。
榊さんが働いてる描写もなければ、どんな人なのかも描かれてなく、ただ過去にトラウマがある人という情報しかなくて、謎に満ちていた。
飲みに行った時や、ご飯に行った時に大量に頼んで、パッと10000円を出したり、急に宿に泊まれるくらいだから金銭的余裕はある。
けど働きに行く様子もなければ、家で働いてる様子もない。
え?ニート?
ここが謎すぎて主人公なのに、なんだかよく分からない人物となっていた。


出てくるキャラが完璧

この映画に出てくるキャラクターそして配役、もう全て完璧。
主人公を演じるすずちゃんの無愛想で、闇を抱えてる綺麗なお姉さんの感じも最高だし、そんな彼女にどうしようもなく惹かれてしまう直達を演じた大西利空君も等身大の演技が眩しく、この2人の絡みも初々しくてみててニヤニヤが止まらなかった。

それに妻であり母であっても女を忘れられず、そして男性を妙に惹きつけてしまう榊さんの母親に坂井真紀氏。
優しいだけで、何も自分でケジメをつけられず、でもいい人でありたいと自己中心的なポンコツな直達の父に北村有起哉氏。
この配役は本当に最高すぎる。
もう拍手。
これだけでこの映画見る価値がある。
そう思えるくらいキャラクターの描き方が最高。
なのに、他の配役もピタッとシンデレラフィット。
1人として合ってないな〜と感じる人はいなかった。
凄い。

年下の彼のまっすぐ過ぎるアプローチ

直達ぐらいの年の子が、あんな綺麗で何か影の落ちているクールなお姉さんと一緒に住んでいれば、好きにならないわけない。

だから、自分のことを好きな女子、しかもクラスのマドンナのような可愛らしい女の子からの好意の視線にも気づけず、残酷にも「僕も恋愛をしないことにした」と言えてしまう。

それで「榊さんの怒りを僕が覚えておく」とか「僕は榊さんが好きです」とか直球で思いを伝えてくるの可愛すぎませんか?って。

本人はいたって真面目なところがまたいい。
下心もなく、まじりっ気のないその真っ直ぐただ純粋な気持ちをぶつけられたら、私のような社会の波に揉まれて、ある程度の現実を突きつけられた大人は心を突き刺されるって。

こんな可愛い年下に定規で引いたくらいまっすぐなアプローチ受けてみたい人生だった……。

雨が降るたびに縮まる2人の距離

この映画の冒頭、雨が降っている駅の真上から傘を刺して行く人々を写してるところからスタートする。

この映像が綺麗なので、ここだけで「はいこの映画当たり!」って思えるくらい心掴まれたシーンなんだけど、そんな雨が降ってる駅校舎内で、直達がモジモジして待ってるところに榊さんが傘を刺して迎えにきてくれる。
(ここの榊さんの無愛想感良い。綺麗なお姉さんが無表情だけど優しくしてくれる感じってなんか性癖にささるよね)

最初は別々の傘を刺して会話もそんなにない2人。
そんな2人が家の近くの河川敷や、橋の上、そして雨の中傘を刺しながら話す度心の距離が近づいて行く。

水が近くにあるとき、2人が心を通わせる。
液体が個体であるときもなんばあのスピードで移動するように、水が2人の気持ちの媒体となって傷ついた2人の心を癒し交差させて行く描写がすごく綺麗で、いいなぁ〜と心が弾んだものだ。

そして最後の方。
海で2人がびしょ濡れになりながらはしゃぐシーン。
良い。
大変良い。
このシーンの良さは見てくださいとしか言いようがない。
でも見たら分かる。
ここのすずちゃんの美しさは、同性でも息を呑むほど。本当に綺麗。

(私、美しい人がずぶ濡れになりながらはしゃぐシーンがすごく好きみたい)

何もかもを捨ててしまっても

言い忘れてたけど、榊さんと直達の複雑な因縁って、榊さんの母親と直達の父親が不倫して駆け落ちして、その子供同士が出会ってしまったというなんともドロドロな因縁。

私はほとんどこの映画の情報を入れてなかったから、榊さんが恋愛をしないのは過去に男に浮気されたからとか、好きだった人にこっぴどく振られたとかそんな感じで予想してたけど、まさか親の不倫の駆け落ちが原因だったとは、なかなかのドロドロトラウマ。
それまでのわりとコミカルな展開で鑑賞者の気持ちが緩んできたところに、そのエッセンスは強すぎるだろ……!

とは思ったけど、確かにこれくらいのトラウマじゃないと恋愛しないなんて宣言しないよなと妙に納得する。
(この事実が出てきたときに、教授が榊さんに直達の布団に鰯の頭を入れて嫌がらせするのを提案する真面目な姿がツボって、なぜかキュンとした)

それでふと考えたけど、せっかく築き上げた家族を捨ててまで駆け落ちしたい恋ってなんなんだろう。

確かに既婚者は魅力的。
分かる。
それは認める。
結婚してるからこそ出せる大人の余裕とか、女性との接し方分かってる感じとか、あとなんと言っても色気やばい。
左手薬指にきらりと光る指輪がある人はどうも魅力的に見える。
だから好きになるのは分かる。

だけどそれでも駆け落ちした時のメリットより、デメリットの方がむちゃくちゃ大きすぎて実際に不倫して駆け落ちしようと行動に至るとなると、なんだか違う星の星人のようだ。

でもそれは私がそんな恋をしたことがないからなのかと思ってみる。

何もかも捨ててしまっても、この人と一緒にいたいと思える恋って一体どんな恋なんだろう。
それはいくつになってもできるものなんだろうか。

そんな恋をできるのは、果たして幸せなのか、それとも絶望よりも辛い不幸せなのか。

人の気持ちというものは本当に不思議なものだ。

ただ、直達の父のような、薬指にちゃんと結婚指輪していて、いかにも真面目で、人畜無害そうな男性に限って大恋愛の末駆け落ちするっていうギャップをみると、人間って面白いなって感じですごく興奮……いや、興味深い。

最後に

劇中に何度も出てくる水によって心が浄化されたようで、見終わったあと心がほっこりして、さらさらと心地よくなっている。

私も最近恋愛からはかなり遠かっているけれど、久々に恋のもどかしさや切なさ、楽しさや明るさを思い出したような気がした。

恋愛なんて、しようと思って出来るものじゃないけど、してみて悪いものじゃなかったよなと思い出せる今作。

誰かに恋する気持ちを忘れかけてる貴方に、是非。

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