*小説《魂の織りなす旅路》 苦難
【苦難】
境目に在る僕の波動は、深い愛と慈しみに満ちた始まりの者の波動にいつも共鳴している。境目に在る僕が始まりの者の波動とひとつになったとき、少年の内に在る僕は始まりの者の波動で満たされる。
あるとき僕は、唐突に貫かれるような激しい痛みに襲われた。僕はのたうち回りもだえ苦しみながら、とうとう僕にもこのときが訪れたのだと悟った。
境目には数え切れないほどの魂が在る。僕はここで、もだえ苦しみながら目の前から消えていく魂を、数え上げたらきりがないほど見てきた。きっとそれはどの魂も一度は経験することで、僕も例外ではないのだろうと覚悟していたのだ。
少年の脳が僕を遮断しようとしていた。少年の内に在る僕は少年の脳に必死でしがみつき、境目に在る僕は始まりの者の深い愛と慈しみに満ちた波動を少年の脳に送り続けた。
少年の脳が時間を止めたとき、境目に在るすべての魂が僕の前から消えた。僕にはわかっていた。僕がひとりきりになったのは、少年の脳が己を生きる時間を止めたからだ。
僕はこの痛みと孤独に耐え抜いてみせよう。この境目が、深い愛に満ちた波動で満たされていることに変わりはないのだから。
僕は少年の脳にしがみ続けよう。この境目に満ちた深い愛の波動を、少年の時間が再び動き出すまで少年の脳に届け続けるのだ。
次章【動き始めた時間・赤ん坊】につづく↓
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