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真・女神転生を過小評価してたことを恥じる【真1クリアレビュー】

僕はこれまで真1を控えめに評価してきた。それには理由がある。

1つはシステムへの不慣れだ。
いわゆる3DダンジョンのメガテンはSJに続き2作目で、その不便さに辟易していた部分がある。

もう1つは、求めているものがなかったことだ。
閣下LOVEで頭混沌な僕は、閣下の出番が控えめな真1に辛辣な評価を下さざるを得なかったのだ。

ただ、ひとしきりメガテンをクリアして、ふと原点に戻りたくなった。

結論:
サブカル全部をぶち込んだ怪作

とんでもなく面白かった。
いや、これはおもろいよ。うん。なんで気づけなかったんだ。

クリア時レベル
Nルートだから高め

SFC三部作のまとめはこちらから!

※全編通してネタバレありです。

プレイフィール

プレイに至ったきっかけ

なぜこのタイミングで真1を遊んでみたいと思ったのか、また評価がガラリと変わった理由についてです。興味がない方は次の項目まで飛ばしてください。

そもそも「真1の魅力を正しく理解できたのか」について疑問が残ったのです。

最近旧約2作品をクリアして思ったのが「3Dダンジョンに慣れたなぁ」ということ。旧約1のレビューを見直してみたら「かなり遊びやすい」とまで書いてある。

多分だけど、絶対に遊びやすくないし、とっつきにくいと思う。

ナムコットコレクションでFC1をやらなかったのは、「クソゲー臭がぷんぷんしてて投げそうだったから」というのもある。それくらい、3Dダンジョンのゲームに「めんどくさい」っていう印象があった。

ただ、最近の自分を見てみると、真2、旧約1・2と初期作品を遊び倒している。まるで真3を始めるかのような手軽さで、初期作に手を伸ばしていることに気づいた。要するに、システムに慣れたのだ。

ここでふと思ってしまう。

「今なら、真1面白いんじゃない?」

近くのBOOKOFFに売ってあったのを思い出して購入。プレイに至ります。

結果、とんでもなく面白かった。
この胸の高鳴りを伝えさせてくれ。

カセットいっぱいのファンタジー

この言葉に尽きる。本当にいろんな要素が詰め込まれすぎた作品だ。

コーヒーを買いに行く場面から始まる
ヒロインが処刑されるRPG
市ヶ谷駐屯地に三島のオマージュキャラ
アメリカ大使にLAWを充てがうセンス

コーヒーのおつかいから始まる物語。これはまだわかる。
そこから政治、宗教、オカルト、陰謀論、終末思想その他諸々が入ってくるだなんて、誰が考えるのだろうか。

その裏で鳴り響くガンガンのロック。戦闘曲なんかもう最高。ギターの色気が半端ない。それに悪魔を仲魔に勧誘し、合体までできてしまう始末。背徳感マシマシ。

普通(というと語弊があるけど。)さ、どれか1つだと思う。

日本とアメリカの対立とか、終末世界をどう生き抜くかとか、悪魔が蔓延った世界で〜とか。何か1つの要素を際立てて、訴求力を高めていくと思うんだ。

でもそうじゃない。
各方面の要素を散りばめつつも、一つにまとめきった大作だと思う。

初見プレイではこの面白さに気づけなかった。
改めて思う。やっぱりすごいゲームだ。

以下、詳細に入ります。

評価点

打ち出された方向性

真シリーズの初代として、明確な方向性を打ち出したのは偉大な功績だと思う。

DDS1は飛鳥を舞台にルシファーと戦う話だった。東京は関係ないし、破滅もしていない。
DDS2は荒れ果てた東京が舞台だった。でも、ゲーム開始時点で滅んでしまっている。
真1は東京で日常を送るところから始まった。そして、当たり前の日常が壊れていくのだ。

崩壊前の東京
今見ると感慨深い

後述するけど、世界が壊れていく空気感が本当にたまらない。
「少しずつ狂い出していく日常」という点では、シリーズ随一だと思うし、真1でしか味わえない魅力だ。

水没までさせるとは

評価したい方向性はこれだけじゃない。
やはりLawとChaosの二軸は大きな功績だと思う。

よく「メガテンの天使は胡散臭い」と言われる。僕はこれが真1の功績でもあると思う。(あとは真2かSJ)

こう語られるということは、多くの人にとって「天使=いい存在」という共通認識があったはずだ。
そして、それを素直に落とし込めば、天使VS悪魔=正義VS悪という図式になる。

しかし、真1が据えたのはLawとChaosだ。JusticeとEvilではない。
天使やLaw勢力は必ずしも正義ではなく、マス層の共感をとりにいくようなキャラクターとして描かれていない。

うるせえ

LawにもChaosにも、メシアにもガイアにも共感できないと悟ったとき、自分が何かとんでもないことに巻き込まれている事実に気づく。それくらいLとC陣営の存在感は大きい。

真1が偉いのは、その両陣営にしっかりとシンボルを用意したことだ。

この にせ きゅうせいしゅ め!
うーん、一度は言われてみたいセリフ
アスラおうを据えるセンスが渋い

究極的な話をすると、「このうちのどちら側につく?」という話でもある。もちろんその先にいる唯一神やルシファー閣下に置き換えても問題ない。

人間関係のいざこざにとどまらず、世界全体の命運を左右する勢力に切り込む感覚。

「Law(Chaos)が気に入らないからぶっ潰す」

こんなに自分勝手に振る舞えるゲームがあっただろうか。まさにRolePlayGameだ。
敵対勢力に喧嘩を売り続ける路線は、ずっとずっと続いていってほしい。

以下、余談。

C陣営のボスにアスラおうを据える理由がわからないままでいた。
ぶっちゃけた話、しょぼくね?ってところだ。C陣営なら閣下でいいし、蠅様もいる。なんならアリオクもいるわけだし、もっと選択肢はあったのではないかと。

なんとなく、2つの線が考えられると思う。

1つは唯一神への反抗。アスラおうのアスラはアフラと語源が同じらしい。つまり、ゾロアスター教でいう「主」だ。同時に「阿修羅」でもある。悪鬼神としての側面だ。
バアルゼブルがベルゼブブに貶められたように、アスラおうもLawの親玉であるY.H.V.Hによって神性剥奪の憂き目にあったと思えば、Cの親玉としても理解ができる。

もう1つは東洋の要素だ。
Law陣営のトールマンがアメリカであったように、メシア教は西洋的な思想が強いと思う。
その反面、Chaos陣営はゴトウを筆頭にアジア的な思想が強い。
C陣営のラスボスに閣下を採用するとなると、結局は西洋同士の小競り合いとなる。スケール感を出すために、東洋の戦闘神を取り入れたのではないだろうか。

以上、妄想でした。

味わい深い人間ドラマ

人間キャラの愛着はシリーズ随一だと思う。いや、本当に。

Lawのテーマで鳥肌たった。
マジで泣きそうになったぜ。
心がぐちゃぐちゃになる

このねぇ、ヨシオとワルオがたまらないんですよ・・・。

導入、変化、結末が非常にクリア。わかりやすい。
その上で変化が極端。思考に全然共感できない。でも、これがいい。この置いてけぼり感が最高にいい。

自分たちが知っている常識がぶっ壊れてしまったから、共感できないんだなと腹落ちした。そりゃあそうだ。今僕が暮らしている世界で東京は滅んでいないし、悪魔もいない。わかるわけがない。

序盤に描かれた人物像に共感できるからこそ、中盤からの置いてけぼり感がとても良い。この世界に幻滅したくなる。それぐらい異様な世界なのだ。

僕はロウヒーローが大好きだ。

最初から運命は決まっていたんだな
人の良さが出てる
いつ建てられたんですかねぇ(すっとぼけ)
説得を続けるあたり、LAW勢の中でもマシな方だと思う。
聞いてるか、ゼレーニン?

ただただ儚い。
お前はなんだったんだ。なんのために生きたんだ。お前は幸せだったのか。

僕はカオスヒーローが大好きだ。

そうなる運命を仕組まれていたのか
派手な格好はせめてもの威嚇なのだろうか
人情に厚い。
この辺りいいよね。
メガテン史に残る名テキスト。
言語化が難しい。
でも、たまらん。

弱者として生まれ、虐げられて、力を手にした。力に夢を見て、力に溺れた。お前が見た夢はなんだったんだろうな。初めてこのテキストを読んだ時から、ずっと考えてるよ。

そしてなんといっても、ゆりこが切ない。

大序盤に登場
大破壊後に再会
切ない

最初は策略だったのか。主人公に近づいて、ヒロインを攫ったり邪魔をしたりして関わるゆりこ。
でも、大事な時に主人公を殺すことができなかった。それどころか、一途に思ってくれるいじらしさすらある。

ワルオを利用してまで近寄ってきたいのか

ゆりこはどこまでも選ばれない。これが切なすぎる。

ICBM投下後、命を投げ打ってまで助けてくれたヒロイン
金剛神界で数十年の時を過ごし、
ヒロインの生まれ変わりと"は"また出逢う

転生して"も"結ばれたヒロインとの対比がキツすぎて、ゆりこを愛おしく思ってしまう。こんなにエグいラブロマンスがあるとは思ってもなかった。

ふと思う。彼らにまた会いに来るだろう。
彼らと一緒に冒険するために、また真1に戻ってくるだろう。そんな気持ちにさせてくれるようなキャラクターだった。

息が詰まる空気感

ここまでに何度か触れてきたが、真1が持つ空気感は独特だ。
儚い。切ない。本当に息が詰まりそうになる。

主人公がどう頑張ろうと、ゲーム開始時のような日常はもうないのだ。

殺人事件なんて可愛いもんだ
全部お前のせいだ
全部壊れた世界
聳え立つTDL

何をしてももう遅い。時は戻らない。

レベルをマックスにしても、悪魔合体で最強の仲魔を手に入れても、世界を隅々まで回っても何もかも遅い。
荒廃した世界を練り歩いても、世界が水没したとて、これから何が起こるわけじゃない。この世界の行く末を誰に預けるのかしか選ぶことができない。

両陣営を叩き潰してみても、幸せなEDが待っているわけじゃない。ただ空虚だ。壊れたものが戻ることなどないのだから。

この切なさがたまらない。この儚さが真1の醍醐味だ。かろうじて似た雰囲気が出ているのが、真3の新宿衛生病院ぐらいだろうか。

ぜひ 「23 廃墟」を聴きながら浸ってほしい。
壊れてしまった世界を歩く主人公の姿を想像して。

ゲームをクリアしても、日常は戻らない。
それでも最後の最後にかりそめのご褒美が待っている。
ニュートラルEDにじーんとする。母の言葉が胸に沁みる。

不満点

初代なのでご愛嬌。でも、不便な点は記しておきます。

・オートマップ
LRが方向転換に振られているから、非常に使いにくかった。
マッパーが必須。そう考えると、真2は進化したんだなぁ。
あとN固定ができないのが結構しんどい。毎回N向く身にもなってほしい。

・微妙なフラグ管理
フラグ管理がわからなくて、無駄に往復することがあった。
流石に昔のゲームなので不親切。今から遊ぶ人にはストレスになりそう。

・中盤がだれる
具体的に言うと、TDLと品川大聖堂あたり。
行ける範囲が一気に広がるから、面倒くさくなりがち。
イメージはドラクエ6のムドー撃破後。僕も次のプレイではここで投げないか不安。

総評

サブカルの闇鍋である

政治、宗教、オカルト、陰謀論、科学、世紀末、おまけにロック。
改めて、真1が持つ不変の魅力に気がつくことができた。今回のプレイで得たものは非常に大きかったと思う。

猟奇殺人事件から始まる日常の崩壊。その裏では東京に悪魔を召喚して国家転覆を目論む男がいたり、アメリカ大使館が神の手先になってICBMを準備していたり。くだらないと一蹴したくなるんだけど、それが「本当に起こっているかもしれない」っていう説得力がある。

こういうのは「誰かが一度は考えた話」だと思う。
でも、考えたところで、消化しようがなかったんだ。作品としての出口がなかった。それらを内包して・包括した上で作品として完成させることが難しいから。そういった状況の中で、叩き出された作品だと思う。評価されるのも頷ける。

改めて真1と向き合ったことで、「真1独特の魅力」に気づくことができた。
その点で言うと、続くシリーズ作品はどれも真1をなぞらえていない。
もちろん、要素要素で拾ってはいるけど、どの作品も独自の路線をいっている。だからこそ、真シリーズをもっと自由に解釈してもいいのかなと思った。

面白かった。本当に面白かった。
なんで過小評価していたのか理解に苦しむ。でも、魅力に気づけてよかった。

近くない未来、僕はまた真1をプレイするだろう。
今度はもっと楽にできる。どういうゲームなのか理解したから。遊び方がわかったから。
次に遊ぶときはもっと作品に浸れるだろう。その時に僕が何を思うのか非常に楽しみだ。

本当に面白かった。
偉大なる初代に感謝を。

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