ペルソナ2罪は業の深い作品だ【クリアレビュー】
令和に今更ペルソナ2罪をクリアいたしました。
うーん、この問題作。なんともコメントが難しい怪作でございました。
このモヤっとした気持ちをなんとか言語化してみます。
とりあえず罪だけに絞ってのレビューです。罰はまた後日。
【評価点】の項目からネタバレありです。ご注意。
プレイフィール
古き良きPSのRPG
ドットで描かれた箱庭世界、無機質なUIと気合の入ったキャラグラフィック。PS時代のRPGを遊んだユーザーにとってのノスタルジーがたくさん詰まってました。初見で懐かしいとは、こはいかに。
良くも悪くもベタ移植。サガフロ1・2やFF、聖剣LoMを遊んでいたあの頃の思い出が蘇りました。やっぱ楽しい時代だったね。
懐かしさに舌鼓を打ちつつも、その流れるような導入に肝を抜かれました。
なんとこのゲーム、何の説明もなく校内生徒の大半が顔面包帯状態で開始するのです。
必要なところだけ肉厚にして、そのほかはとっとと切り捨てる豪快さ。
ストーリーテリングの強弱が考えられた導入だと思いました。うーん、鮮やかな手つき。
情報の取捨選択にメリハリが付いていて、大事なところだけに焦点が当たる作りになっている。
おかげで、周辺メンバーや最初の敵(ジョーカー)に注目が集まりやすくなっています。
噂とオカルトと大衆ウケ
2から大衆ウケはかなり意識していたのかな、と思います。
罪の発売は1999年6月24日。時代は世紀末。いい時代に発売したゲームだ。
世紀末のごった返している世相とばっちりリンクしたストーリー。
発売当時に遊んでいたプレイヤーは、一体どんな優越感があったのだろうか。
真芯に据えられたテーマとは裏腹に、『2』から大衆ウケ要素は多分に見受けられます。
等身大のキャラクターがコンプレックスに悩む。
その展開は、のちのペルソナシリーズでも共通しているように思う。
くだらないことから始まって、いつの間にかスケールが世界規模になっている。これ、ペルソナの鉄則。女神異聞録からずっとペルソナしてるのよね、実は。
ここの味付けはシリーズによって大きく異なると思いました。
P2は濃い目のキャラにアッサリとした味付け。そんな印象。
『いつやるか』で評価が分かれる
確かに、ペルソナ2罪を絶賛する信者の気持ちはわかる。
10代20代の比較的感性が未熟な時期にこんなもの叩きつけられたら脳みそ震える。
RPG=FF、ドラクエ、テイルズみたいな層が遊んだ時に、びっくりすると思う。そりゃあシナリオNo.1にあげたくもなる。
ただ、僕が遊んだのはアラサー手前。罪を知るにはいろんな作品に触れすぎた。
ネタバレに配慮して言うと、P2は、「『20世紀少年』とカフカの『変身』と『バタフライエフェクト』を足して3で割った」ような作品だった。
こういった系統の作品に、人生のどこで出会うかでその作品の大切さが異なってくるはず。だからこそ、真っ白な状態でP2を叩きつけられたことを考えると、そのインパクトは絶大だったと思う。
上記の作品が好きなら迷わずオススメ。
以下、ネタバレ全開でお届け致します。
評価点
愛着が湧くキャラクター
ペルソナ1と2はキャラ紹介がとにかくあざやか。
出会ってから好きになるまでの時間が短くて楽。
罪のキャラクターは、個性的だけど嫌味がない。唯一言うなら、舞耶のセンスが昭和のおばさん。中学校の先生にこんな語彙の人いたなぁ。
もちろん、尺の都合もあったんだろうけど、巻きでポンポン進んでいくキャラ説明は、個人的には高得点。そう考えると、P3以降は「好きでも嫌いでもない時期」が長かった印象。キャラ展開に時間かけすぎなんじゃ。
テンポよく進むシナリオ
プレイフィールでも書いたけれど、とにかくメリハリが聞いている。
余計なことはメインイベントでは触れず、各自会話でご完結ください形式。そっちの方が好み。
大切な話は本筋に取り込まれているので、会話を無視しても補完はできる。
加えて予測不可能な展開。いい意味で意味不明すぎて訴求力が増していた。
「ナチスが蘇るかも!」みたいな陰謀論が現実になっちゃう、みたいな馬鹿げた話。なんでこんなにワクワクするんだろ。いまならQアノンにアメリカが支配される話とか書きそう。何その面白そうなペルソナ。陰謀論が捗る。反ワク反マスクとヴィーガンもやろう。
でもこれは、P4以降のファンが全員楽しめるかというと、そうではないと思う。
P2のシナリオは面白い。でも、それは毛色が違う。
P4のシナリオはあざとい。本筋が大衆に寄っていて、普段あまりゲームをしない層にも刺さるような作りになっている。その部分は、2の刺激を求めたユーザーからは低評価の一因なんだろうなと思う。
断言するけど、選民意識はない。
「P2を楽しめない奴は〜」みたいな話はしたくない。僕はそういうのは割と嫌い派。万人が楽しめないストーリーを持ち上げたくはない。
でも、P2のシナリオを楽しむには、ある程度の教養が必要になってくると思う。
プレイヤーの中で「あ、そういうこと? なら……」が考えられないと、面白みに欠けると思う。「噂が現実になる」の妄想をどこまで広げられるか、広げて楽しいか、がP2を楽しむ適正になりそう。
文句なしに面白いと思う。ただ置いてけぼりな人もいたんだろうなぁ、という印象。
それでもきっと、怒涛のラストには度肝を抜かれたはず。
怒涛のラスト
まずは、「キリスト教を噂と言い切る」胆力。
まぁ確かに噂だよね。ちょっとひねた解釈なんだろうけれど。
個人的に、ラストの展開はかなり好みでした。
好きレベルで言うと、P3を超えたかも。
結局何も解決してないのよね。
JOKER編は舞耶の死を勘違いしたから生まれたものであって、ラストの『やり直し』も舞耶の死が原因になったわけで。もちろんそれだけじゃないけど。
どこまでいっても、ペルソナ2のヒロインは舞耶なんだと思った。
僕は達哉の彼女にギンコを選んだんだけど、シリーズのヒロインは舞耶でいい。少なくとも本編でのみんなの『罪』は舞耶に対しての話だし、JOKER編の懺悔は最後の舞耶の告白が全てだと思う。
「忘れられる女よりも縛る女が哀れ」
絶命の間際、多分、舞耶は「これでまた4人を縛ってしまうこと」がよぎったんだろうなぁ。
でも、舞耶だって気づいてたはず。こんな状況になったら取り返しがつかないことに。そう考えると、どう足掻いても絶望なあのシーンに意味が付け足されてくる。おもろいなぁ。
舞耶を死なせてしまったことが、『罰』における彼らの罪だ。
世界線を跨ってまで引き継がれる原罪。うわあああああああ。書いてて鬱になる。なんて事してくれたんだよニャルカス。
僕がバタフライエフェクトや変身を感じるのがここら辺のオチ。
「何もなかった世界線の方が幸せ」っていう展開が一番クる。
達哉はともかく、ギンコはアイドルになろうと青春してるし、淳は家族仲良くやってるし、ミッシェルは雅といい感じだし。なーんかまるっと幸せでキツい。
しかも、この幸せ自体がニャルの掌の上だと思うとメチャクソ胸糞悪い。誰も気づいてないのがさらに不気味。あああああああああああああああ、この感情に名前がつけられない!
話全体を俯瞰してみたときに、オチも綺麗だなぁと思った。
世界は進んでいるのに、当事者だけが知らないこの感触。
それを覗き見ている黄金の蝶。お前のことが大嫌いになったよ、フィレモン。
何が正しき意志だ。上から人猿の足掻きを楽しんでるだけじゃんか。テイストで言えば5のヤルダバオトと近いのかなぁ。こんなもん叩きつけられたら頭おかしくなる。
頭おかしくなった人が羨ましくなりました。うん、みなさまが絶賛する理由がとてもよくわかります。P2最高ですね。忘れられないゲームになりました。
と、素直に言えない不満点を論います。ご容赦。
不満点
ゲームとして面白くはない
面白くなかった。本当に面白くなかった。
ペルソナ1は難しくて理不尽だった。でも抜け道があった。
システムを理解した果てには潜在復活リリムっていうお助けキャラがいてくれた。
でも、ペルソナ2にはそれがない。
簡単だけど、ただひたすら面倒だった。二度とプレイしたくない。何度寝落ちしたことか。
あと悪魔会話は本当に面白くないからやめてもらいたい。
悪魔会話自体は嫌いじゃない。でも、P2がクソなのは向こうから話しかけてきた場合。
理由は一つ。会話から逃げる選択肢が存在しないから。
そもそも、2は悪魔会話自体のテンポが悪い。全体がトロトロしてるから会話自体を避けたいのに、そこから離脱するコマンドが存在しない。
つまり、話しかけられたら絶対に付き合わなきゃいけないのだ。
レベル上げやランク上げのために戦闘を我慢してるのに、その流れをぶち壊す強制会話。これが本当に苦痛だった。しかも、ペルソナを召喚するのもある程度会話が必要なシステムだし。
というか、イージーを実装するならもっと楽にさせてもらいたい。
「ペルソナ2はシナリオがいいぜ」って勧めたいのに、これじゃライトゲーマーは心が折れると思う。実際、僕も気軽に勧められないわ。
割と退屈なJOKER編
噂、オカルト関連は面白いんだけど、JOKER編全体が面白くはない。
というか展開が読めすぎてて、結構陳腐に見える作り。
プレイフィールでも書いたけれど、濃い目のキャラの割に後味がサッパリな掘り下げ具合。
ギンコのアイドルは結構笑ったし(悪い意味で)、ゆきのさんのエピソードは唐突すぎてワロタ。
というかゆきのさんのピックアップ理由が結構謎。あんた、僕のデータじゃリリムのメギドラオン見てただけですやん。先輩風吹かさないでよ。
「ペルソナ2はシナリオが〜」とはいうけど、ここは別にかなぁ。
『20世紀少年』とかが好きな人はブッ刺さるかも。僕にとってはあまり面白くなかったです。
システム周りはやっぱり面倒
まずはロード問題。戦闘突入と終了にロードはやりすぎ。
高エンカのゲームでは許されない罪。副題の『罪』はここからきていた?
あと、全員ワイルドはやっぱりやりすぎ。
正直めんどくさいだけ。育成が楽しいほど上等なバトルシステムじゃないでしょ。
この辺はP1よりも退化してた。なんで遊びにくくなってんだ?
基幹システムがつまらないから、パラメーターを増やしても面白くはならない。却って面倒な要素が増えただけ。
戦闘に限っていえば、俺TUEEEEEができるP1の方がまだ面白かった。
総評
P1とはまた違った理由で、根強いファンがいるのも納得の出来でした。
でも、ゲームとしては面白くない。これだけは声を大にして言いたい。
噂システムも斬新ではあったし、世界観の醸成には役立っていたと思うけど、革新的かと言えばそうでもない。
発想はおもろいけどブラッシュアップできたはず。失礼だけど、同人ゲーとかにありそうなシステムだと思いました。
罪や罰。
なんともたいそうな名前だなぁとプレイする前は思っておりました。
でも、プレイを終えてみると、なんだかその意味が生々しく感じてしまう。
唯一無二のエンディング。
久しぶりに感情がぐちゃぐちゃになりました。
このままの勢いで罰もいきます。
さぁ、ニャルラトホテプよ。全てに決着をつけさせてくれ。
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