真・女神転生VVに感じるメガテンの可能性【クリアレビュー】
メガテンの新作が発表されたとき、僕は掛け値なしで喜んだ。
本当に嬉しかったからだ。シリーズが存続することも、僕が好きな真Vエンジンで新しい何かを作ってくれることも。
1ルートだけクリアした感想ですが、
最高だ、アトラス。今後ともよろしく。
発売前の感想はこちら
真Vのレビューはこちら
Switch版でプレイ。全ルートクリアデータを引き継ぎ。
復讐の女神編を1ルートのみクリア。
クリア時間は40時間程度。難易度はハード。DLCは適宜使用。
※評価点からネタバレ全開です。ご注意。
プレイフィール
複雑化する人間関係
真Vで強く指摘されたのは、薄っぺらい人間関係だ。
特に敦田兄妹のイベントは特段掘り下げられることもなく、「結局なんなん?」と言われることも少なくなかった。この点は僕も同意する。
その声を強く反映したかのように、復讐の女神編では人間模様が濃ゆく描かれる。
そしてそこに加わってくるのが、新キャラである尋峯ヨーコだ。
ヨーコの存在感は、既視感溢れる真V本編(共通ルート部分)において、とても良いスパイスになっていたと思う。
良くも悪くもアトラスらしいキャラクターを入れ込んできたなと思う。やるな、アトラス。
真1から連綿と続く、仲間同士の対立がありありと描かれていて、個人的にものすごく満足できたポイントだった。お腹いっぱい。
物足りない人は4Fを遊ぼう。楽しいルートがあるよ^^
歯応えがあるバトル体験
簡潔に一言。かなり面白かった。
今回はレベル補正を気にしたくなかったので、適宜レベルを調整して遊びました。
ボス戦が痺れる。毎回頭を悩ませながら戦っていました。
後述するけど、結構簡単に調整してくれたと思う。だからこそ試行錯誤のしがいがあって面白かった。
特に面白いと思ったギミックが、これだ。
これが、わかりやすくバトルのメリハリをつけてくれている。
攻め一辺倒だけでは、敵のHPを削りきれないように調整されてある。
これは雑魚敵も同様だ。油断していると雑魚敵にもやられてしまう。
だからこそ、この瞬間に悩む。
どうしようか。攻めるか引くか。迷っている瞬間が最高に楽しい。
このバトル体験は真VVで強く評価したいところだ。
ステ振りをし直せるアイテムが、普通にプレイしていても2つくらい手に入った。
道中は魔法ビルドにしてもいいのかなと思う。
ただ、物理に比べると、魔法の倍率が低めに設定されている(ような気がする)。その辺りは火力とご相談。少なくとも、僕は大事なボス戦で仲魔の魔法に助けられたことはなかった。
全体のゲームプレイを通して、最大行動が必ずしも最大火力にならない瞬間があった。
これには素直に驚いた。
大事なのは手持ちの理論値を叩き出すことで、それが必ずしも行動回数に直結しない。つまり、中途半端な弱点攻撃では、プレスターンを増やしたとしても、有利になるとは限らないということだ。
仲魔が多ければ多いほど、パーティ全体の弱点属性の穴が増える。1つのWEAKやCRTICALが致命的になるので、場合によってはフルパーティがデメリットになることもあった。
ここで効いてくるのが、同じ悪魔が編成できないということ。
同じ耐性を持つ悪魔は基本的にいない。
ジャックランタンが3体欲しくてもどうにもならないこともあるのだ。
メガテンの伝統だし、特段新しいことじゃないんだけど、これがかなり面白かった。パズルみたい。
検証したわけじゃないけど、全体的に敵の攻撃力が高いように感じる。
これまでは50×3回で合計150ダメージだったのが、80×2回になる感覚。
体感だけど、プレスの重みが過去作とは全然違う。
アタッカー・タンク・ヒーラーと役割を考えてパーティを組むことが何よりも面白かった。トータルの満足度はかなり高いです。
楽しませようとする精神
真VVは遊びに満ち溢れている。
「ここはユーザーに楽しんでもらおう」という開発者の意思を感じる瞬間が多々ある。
それは開発側の「こうすれば黙るんだろ?」という見え透いた下心ではなくて、純粋な善意だ。その善意が素直に嬉しい。
そしてそれは遊びやすさ全般にもつながってくる。
マガツロの導入はダアトを練り歩く上で楽しさに一役買った。
クエストナビの選択肢だって、これまでとは違ったゲーム体験を提供してくれた。結局ピクシーしか使わんかったけど。
個人的に嬉しかったのは、クエストナビの調査失敗だ。
これまではただただ敵が出てくるだけのギミックだったけど、今回からマガタマの出現率がぐんと上がった気がする。
つまり、どちらにせよ、調査ポイントを調べたプレイヤーに対価が与えられている。
真Vではただの罰ゲームだった要素がプラスに早替わりした。この小さいところにとても感動する。細部に神は宿るのだ。
この段階で真VVは僕の中でとても気持ちの良い作品になった。
こんな素敵な作品をありがとう、アトラス。
ここから詳しいレビューに入っていきます。未プレイの人は、クリア後にまた会おう。
評価点
盛り上がるストーリー
かなり満足感が高いです。面白かった。ちゃんと着地したのでトータルバランスが良かった。
これまでの作品に比べてどうだ〜っていう話ではなくて、満足しました。
物語の序盤・中盤で丁寧に描かれた人間模様をバキバキに壊していく様は爽快だった。
今回追加された演出によって、真VVでキャラの魅力がググッと深まった気がする。
それぞれがそれぞれの役割を認識して、遂行してくれた。見せ場がしっかりあったように思える。端的に言って良かった。
それらに一役買ってくれるのが、もちろん
マガツヒ集められると困るから塩漬けにしたれwとかいうド外道。
素直にグローリアです。
特にイチロウとマンセマットの絡みは、ずっとニヤニヤしてた。
ものすごく面白い組み合わせだったからこそ、もっとこねくり回して欲しかった部分でもある。なんなら、イチロウが塩漬けを主導しても良かった。うーん、妄想が膨らむ。
個人的に1番面白かったのは、カディシュトゥ戦。
ここが中盤のヤマになるわけなんだけど、展開とか難易度とか諸々を加味してもかなり面白かった。
今回のゲームプレイを通して、メガテンの面白さはボスの魅力なんだと気づいた。
こういうのでいい。こういうのがいい。
開発者からの愛を感じる。「どうせ、こういうのが好きなんでしょ?」って。好きですけど????!?!?!?!?!!!!!!?!??!!?!?
要所要所に挟まってくるボス戦の魅力が、作品の訴求力を押し上げる。
今回はちゃんとバトルが面白いから、燃えるボス戦は本当に楽しい。
この一点だけでも十分に評価できる。
あと全体的に感じたのは、カット割の良さ。
開発側が「魅せたい!」っていう意志をビシバシと感じる。
ダークファンタジーの王道を直走る画力は、僕の厨二欲求をかなり満たしてくれた。
横道に逸れつつも、盛り上がるポイントは忘れない。
なんだか、変わったなぁと思った。
求められていることはしっかりやるし、その上でマス層を取りにきてるなぁと感じる瞬間が多々あった。
ゲームは別に芸術作品ではない。ただの娯楽だ。
アトラスが、メガテンで、こういう王道ど真ん中を持ってきたことに、心が動かされた。
なんか、いいね。嫌いじゃないよ。
簡単で奥深いバトル
歴代作品と比べて〜と言うつもりはないけれど、今回のバトルはとても簡単に感じた。
簡単と言ってもEASYではない。SIMPLEなのだ。
僕は初戦は負け戦だと思って突っ込む。その際、万里の遠眼鏡で調べることを忘れない。
ここから、使う属性とカジャンダの有無がわかる。
アグラトで言えば、万能属性の「従魔の行軍」に気をつけるだけで、アギとブフの耐性を固めれば良いだけだ。弱点属性はおまけ程度。
スクショを元に作戦を立てて、耐性悪魔を揃える。
敵の行動ルーチンは、大体固有スキル→属性1→属性2→マガツヒをためる→固有スキル→以下ループだ。わかりやすい。
HPが半分程度になると、ルーチンが変わる。耐性を貫通してきたり、万能属性を連打してきたりするようになる。この変化もあからさまでわかりやすい。
大きな声で言う。だから面白かったのだ。
眼光でプレスターンを増やすこともなければ、ニヤリもない。
あるのは純粋なプレスターンと、マガツヒスキルの存在。あとはエッセンス程度に付け加えられた悪魔ごとの固有スキル。
このシンプルさが心地よい。いい。わかりやすいゲームでとても良い。
ぶっちゃけた話、真VVは集中ゲーだと思う。タンクの役割が非常に強い。
無効・吸収・反射を盛った仲魔に集中スキルを使うだけで勝ててしまう。
遊び程度で使っていたハヤタロウがやたらめったら強くて、このゲームの底に気づいてしまった。
でも、それでいいじゃないか。
気づいた人がとことん得をするゲームでいい。属性遊びに興じて楽する僕みたいなプレイヤーが、シヴァ様を前にボコボコにされるぐらいのバランスでちょうど良いのだ。ターンダヴァキツすぎ。
正直に告白すると、道中は引き継いだ最強ヨシツネで蹂躙した。レベル上げを助けてもらったこともある。でも、ボス戦だけは封印して、毎回ガチで挑んだ。
それでも楽しかった。これだけで真VVの価値を認められる。ありがとうアトラス。
カディシュトゥのデザイン
賛否分かれるところだろうけど、賛に1票投じたい。
まず、物語の展開や起伏を作る上で、非常に良かったと思う。
倒すべき中盤の敵として役割が明確で、彼女らを中心に構築される物語が楽しかった。これまでの作品でいうと4Fのクリシュナみたいな感じ。とても良いです。
デザインについては、なんとも難しい。
僕は男だし、学生時代はオタクぶりぶりだったので、いわゆる萌えキャラ的なデザインに抵抗感はない。むしろ好きな方だ。
ただ、ナアマやアグラトみたいな「いかにも」なデザインをどう評価するのか非常に悩ましい。
僕は諸々を考えても賛で良いと思う。賛と言うのはつまり、今後もシリーズに続投していってほしいと言うことだ。
マニアクスで登場(再登場)した魔人たちやSJのマンセマットが擦られ続けているように、彼女らの続投を早くも願っている。
僕はガブリエル・ティターニアとナアマ・アグラトなら、前者の方がデザインは好きだ。
でも、この選択は、少数派だと思う。これから増えていくメガテンの人口を考えても。
こういったデザインの転換期にも意を唱える必要がないと思う。
だから僕は口を噤む。多少異物感があったとしても、世界観にマッチしていたのだ。文句はない。
こうして振り返ってみても、押さえるところはバッチリ押さえていて、良いゲームだなぁと思います。実際に面白かったしね。
ここで切り上げてもいいんだけど、それはフェアじゃないと思うので続けます。
以下、愛ゆえの不満点です。
不満点
共通ルートの既視感
これに関していうと、僕が悪いところもある。
去年の1月に全ルート踏破とか言って遊び倒したので、創世編への興味は微塵もありません。記憶力良くてすみません。
いやらしいのが、復讐編でも、創世編と共通する展開があるところ。
全部が全部じゃない。細部が少し変わっている。だから、見飽きたムービーも変化を探すために見なくてはならない。今更新鮮な気持ちで見るのは無理だ。
この傾向は序盤に顕著で、中盤以降展開がガラリと変わると気にならなくなっていった。
真VVから始めた人にとっては気にならないと思うので、この辺で。
ゲストキャラの弱さ
ゲストキャラを導入したのは非常に良い試みだったと思う。
自由に付け替えることができて、なおかつ指示も出せる仲間キャラは、実にif以来だと思う。(そう考えるとすごいな)
このおかげでキャラに愛着が湧いた。プレイし終わった僕がヨーコを好きなのは、仲間としての使い勝手も大きく関係していると思う。
ただこのゲストキャラ、そんなに強くない。
使い勝手の良い属性キャラとしての側面は大いにあるが、それも攻撃面だけだ。
プレスアイコンを稼ぐ要因にはなりうるが、いかんせん耐久力が低すぎる。
単純にHPの問題もあるが、無効耐性が少なすぎる。颯爽と走り出すヨーコを何度も見たことか。
敵の火力がバカにならない中盤からは、自前で揃えた仲魔の方が安定感があった。
おまけにスタメンにしていないとレベルも上がりにくい始末。福音書も魔導書も使えないので、1度メンバーから離すと復帰が困難である。
面白い試みで、強く支持したい部分ではある。
だからこそ、もう少し調整して欲しかった。ペルソナみたいに自前で良いお手本があるのだから。
細かいユーザーフレンドリーさ
発売前、大々的に宣伝していた部分だけど、それでもまだ不満は残る。
エストマの改悪は素直に不快です。周回を回す上で面倒なことこの上ない。
あとは、仲魔の引き継ぎについて。
読み込んだ真Vデータのパーティメンバーが引き継がれるのね。
ここはゲーム内に説明がなかった(気がする)ので、少し不満な部分。
周回でアンロックされる悪魔については、良い塩梅だと思います。
数周しないと全開放されない感じははっきり言って悪習だけど、個人的には嫌いじゃない。
今回はあのお楽しみ悪魔もいるので、お祭り感があって最高。アバドン王を思い出すなぁ。
でも、周回で引き継げる内容についてはやや不満。
選択肢の都合上仕方ないんだろうけど、テキスト部分のスキップ機能は欲しかった。というか、スキップ機能をもう少し強化してくれても良かった。単純にかったるい。苦痛な学校を何周もしないといけないのも辛い。
あとはクエストナビかなぁ。
連れまわせる仲魔を自由に選べると良かった。イメージはGB版のDQM。HGSSでもいいけど。
悪魔のアニメーションは少なくていい。アラハバキとかなら浮遊させるだけでもいいので、後ろをついて回るようにしてくれると良かった。わがままです。
小さくまとまってしまった世界観
ここは期待も込めて辛めに書きます。厄介ユーザーの戯言です。
全体としてシナリオは面白かったけど、やりようがあったようにも思う。
ナホビノの新しい姿だって、結局はアオガミに戻ってしまうわけだし。
また、真Vで掘り下げて欲しかった部分を回収しきらなかったところが目立つ。
例えば、八雲の扱いやベテルの各支部の扱いにだって思うところがある。
広げた風呂敷を畳切ることを期待していたユーザーにとって、少し肩透かし感はあった。
真Vシリーズへの大きな不満としては、世界の崩壊感がないことだ。
日常が崩れ去る体験がない。ユーザーはゲームプレイを通して、崩壊してしまった東京(ダアト)を練り歩くことしかないのだ。
ティアマトを召喚したところで、世界が壊れることがない。
トールマンがICBMを撃ったあと世界が様変わりしたような、あんな体験がしてみたい。
これらの不満を解消する方法は、ダンジョンの数を増やすことだと思う。
この不満点は真VVの追加要素への批判にも関わってくる。
かねてより僕は、真Vのエンジンを流用して新しいものを作って欲しいと思っていた。
それは真Vが期待水準以上の出来であり、欠けていた最後の要素がボリュームだと思っていたからだ。
しかし、真VVでのダンジョンの追加は2つだけだった。これだけではボリューム不足は埋まらない。この不満は各ダアトの作り込みで相殺されない。
僕は真VVに全く新しい世界を期待していたのだ。そして、これはそんなに無茶な要求ではないと思っている。
例えば真IIIからアバチュを作ったように、システムや悪魔のモデリングはそのままで、キャラとマップの作成に力を割けば、もっと満足できるものが仕上がるはずなのだ。
長寿シリーズの強みとして、登場させる悪魔の候補には事欠かない。
D2でモデリングしているものだってあるのだ。選択肢はいくらでもある。
今回実装されなかった悪魔を呼び起こし、ダンジョンの最奥部に配置するだけで、もっともっと刺激的な体験になったと思う。
逆に言うと、この体験を求めて、僕は次のメガテンもプレイするだろう。
だからこぢんまりとした規模で話を転がすのはやめてほしい。
声を大にして言うけど、別にフルボイスは求めていない。
テキストだけでもいいし、なんなら紙芝居でもいいのだ。
というか、立派な3Dデザインがあるのだから、それをこねくり回してイベントを作って欲しい。
イベントやストーリーの工数を削除してもいいので、お話の規模を大きくしてほしい。
真2のようにLAWの世界でもよし、真3のようにCHAOSの世界でもよし。
魅力的な対立軸に振り切って、人猿が翻弄されるような、そんな体験をしたい。僕からの切なるお願いです。
いつか、そんなメガテンが遊んでみたいなぁ。
総評
メガテンの魅力はボスの魅力である。
僕たちはいつだって、手に汗握るボス戦がしたい。
僕はこれに打ちのめされてきた。ああ、最高だ。本当に最高だった。
この中毒が僕にメガテンを求めさせる。もっともっと濃密な体験がしたい。
超常の存在に挑む体験。それがたまらないのだ。
真VVが3日で50万本突破したと聞いた。
紛れもなく快挙。メガテニストの端くれとして誇りに思う。
僕が大好きなメガテンがこんなに評価されるだなんて。夢みたいだ。
だからこそ、セガとアトラスに感じて欲しい。
メガテンというIPが持つ可能性を感じて欲しい。
作ってくれてありがとう。素敵な作品にしてくれてありがとう。
自信を持ってオススメできる作品です。
僕が大好きなメガテンを守ってくれてありがとう。
コンゴトモヨロシク