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『Z世代化する社会』を、経営学とコミュニケーションの側面から味わう

東洋経済オンラインにて、舟津先生の『Z世代化する社会』の評を書く機会をいただきました。本書は、コミュニケーションの本であり同時に「常識」がどのようにズレていく/変化していくのかについて考察した本なのだと思っています。
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学術書の学術的書評ではなく、オーディエンスを広く取った評です。とくに、インターネットの住民として、どうして社会はZ世代化するのかについて考えてみたという記事です。オーディエンスを広く取るという思想の背景はこのあたりに書きました。一連の記事に舟津先生のお考えもあります!

以下、東洋経済オンライン記事を書く前に考えたことをつらつらと。

みなさんの学生期の記憶と照らし合わせて読んでいただきたい本書は、「いま」何が起こっているのかを考察したものです。われわれもなんらかのカタチで似たような経験をしています。それに対して「いま」の子たちには何が起こっているのでしょうか。じぶんの経験・体験があるからこそ、何か言いたくなる。そのような書籍です。

本書については、Z世代本ではなく、やはり「Z社会本」と呼ぶべきだと考えています。舟津先生が「Z世代と呼ばれる若者たちを観察することで、われわれが生きる社会の在り方と変化を展望しよう」(p.5)と述べているように、社会について考察している本なのです。

ナカゾノは舟津先生と共同で研究を行う友人であり、昭和64年生まれのゆとり世代です。舟津先生との共同研究のテーマには、それこそZ社会本で取り上げられている不安ビジネスにかかわるようなものがあります。いつか紹介できるようにがんばりますが、取り急ぎは清水先生による不安ビジネスに着目した評をご覧ください。

Z社会本は、これまで舟津先生と対話・雑談をしているなかで伺っていた内容がまとまった書籍だと思っています。本書の特長のひとつである語り口は、まさに舟津先生と対話をしているような感覚を思い出します。読書体験として、Z社会本は「経営学者・舟津昌平」の頭の中を覗いたような感覚を与えてくれます。

ふと気が付くのですが、経済学者や社会学者、心理学者などと比べてみると、経営学者が普段何を考えているのか見聞きする機会は意外とないのではないでしょうか?熱心なみなさまのなかには、経営学の教科書などで経営学者の考えに触れたことがあるかもしれません。実はそのような教科書でもやはり筆者の色というものは出てきます。たとえば、本書で引用されていないものでいうと、舟津先生も執筆に加わっている経営学の教科書をご覧いただくと、Z社会本と地続きになっていることもわかると思います。

Z社会本は、企業経営を研究対象とする経営学者が突然に変わったことを言い出したというようなものでは全くありません。企業経営における企業組織そのものや、顧客、従業員、そして企業や個人が存在する経営環境を考察することによって描かれています。ある現象に対して多様な視点から光を当てることにより、見えてくるものが変わってくるという体験は、経営学(を含む社会科学)のおもしろさを表しています。

その意味においてZ社会本は、やはり経営学の成果物であるといえると思います。そこには求められるような「正解」はないかもしれませんが、思考のきっかけとして、もしくはあなたの思考を整理するための補助線にはなります。「正解」が提示されていないということは意味がないということではありません。むしろ、誰かに提示される「正解」というものは存在しないのが普通です。あなたの直面する課題とそれにかかわる状況から、なんとか「正解」をあなた自身が見出さなければなりません。そのためにはじっくり考える必要があります、しかも多様な側面から。

「知の蓄積はとてもコスパが悪いけど、丹念に粘り強く向かい合ってこそ得られるものだし、今後の社会でより得難いものになっていくだろう。だって、みんなコスパ重視でラクしたがるから」(p.292)ということで、Z社会本をきっかけにいろいろと考えてみませんか?

Z社会本をきっかけに経営学、あるいは経営学者というものに関心を持っていただけると、(ナカゾノを含む)経営学界隈も嬉しいですし、みなさまにとっても知的におもしろい発見と出会える機会になると思います。

さらにZ社会本をもとに、同僚や家族、先輩、後輩など、それぞれの世代において何が起こっていたのかを聞いてみていただけると良いかと思います。そのためにもどうぞ手に取りもう一度整理しながら読んでみてください!Z社会本はZ世代当事者とのコミュニケーションから生まれた書籍であり、Z社会本もまたみなさまにコミュニケーションをとるきっかけを与えてくれるものだと思います。ここまでくれば、2度3度美味しい「コスパ」の高い読書体験になっているでしょう。さあ、ひとり5000冊ずつ購入しましょう。


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Hiroyuki Nakazono
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