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愛の天使 石紙ひろ江

 白装束に身をつつみ、後生大事にメロンとスイカを抱えたパンチパーマのおばさんが、浄水器の訪問販売を終えて、ようやく玄関前で一息ついて果物を置き、『眼』を見開いた。パンチパーマのえり足が伸びておおかみカットになり、やがてえり足は大きな羽となり、空を舞い、おばさんの心の平穏をあらわす眺めをおばさん自身が見た。この体験を経て、おばさんは足が悪くなり、同じように足が不自由な人の気持ちをおもんばかる……人間にはなれず、孤独な生涯を昨日終えた。
 おばさんの住む家の玄関前に男性器の写真が貼られたが、いつしかそれは消えた。

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