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240(にしお)
恋愛の別れ話から、240はノイローゼになって、精神病院に通院することになった。
自転車に乗るのは、どうも気が乗らず、怖かった。精神病院まで、バスと電車を乗り継いで行こうと決め、アパートに近い停留所に歩いて向かった。240は薄いオレンジのパジャマを着てサンダル履き。バス停までの道のりは200メートル位だが、ひどく遠かった。肩を落としてベンチに座り、ほどなくバスが音を立てて現れた。
うつむき加減で乗り込んで席に座った。前から5番目の座席では運賃表示が見えづらかった為、運転手の真後ろに座り直した。バスは再び発車した。このバスに乗って、終点の某駅より三つ手前の停留所で降りれば、精神病院はすぐそばにある。しかし240は電車にも乗りたがった。バスからバスに乗り換えて、電車に乗って遠回りのルートで精神病院の入口前につき、240は病院を見上げた。七階建てのビルに陽が強く当たり、240は目をしばたたかせて、まぶしそうな表情を見せた。
突然、地震が起きた。
「240は彼女と復縁する。お金持ちになる。仕事も上手くいく。240の家族も全員幸福になる。まるで空を飛んでいるかのような人生を送る。人生が変わる。240は変わり、何をやっても、成功する」
ホームレスの老人が、地震で240の体に抱きついて、一気呵成に喋りだした。
揺れなくなり、老人は放心状態の目つきをして240から離れた。
240は、精神病院に背を向けて帰った。