火性人
怒りを押さえた表情の岡田が、カラオケボックスから飛び出して来た時に、私は自分でも信じられないような言葉を、岡田に対して吐いてしまった。
岡田は、何も言わず、黙っていた。私と岡田は親友なので、仮に、私が誰かを殺してそいつの肉をミンチにして、ごまかしても、私の味方をする男だ。
私は朝起きた後、下着泥棒に出掛けるのを日課としている。
その日も、パンティー5枚、ブラジャー8枚を2時間かけて集めた。
臭そうな下着をズボンのポケットに無理やり入れて、岡田の待つカラオケボックスまで自転車で向かった。カゴが非常に大きく、新聞配達のアルバイトで使っている自転車である。
岡田は、ある女性と2人でカラオケに興じていた。
その女性は私も知る人で、先日、天から『あなたはあの女性と3年後に結婚する』と言われて、笑ってしまった。私としては、降ってきた言葉に従って行動するしかない。たまたま岡田に電話すると、その女性と遊んでいるらしい。
「岡田、ブス女を電話に出せ。俺はブス女と3年後、結婚する。間違いなくそうなる。未来を教えるから、ブス女をよろしく」
私がそう言うと、
「分かった。お前の言う事は全て正しい、俺にとっては。彼女に伝えるよ。3年後に結婚だな」
と返し、結局、女性とは話さずじまいだった。
私は女性と直接話をしようとカラオケボックスまで自転車を漕いでいる。ポケットの中の盗んだ下着が邪魔になり、カゴに乗せて火を点けてやった。派手に燃えて面白かった。そして、岡田と会った時、
「岡田!!俺は今、炎を見ながらここに来た。ふざけろアホ野郎!!もし、コーヒー飲んでる最中だったら、ぶっかけてるところだぞ!」
自分でも何を言ってるのか分からなかったが、女性に火を点けて殺すよりは、良い。