Re: Hasami (2)overviewcoffee とは?・増田啓輔さん


Re:Hasami第2回目は今、zen toに必要な取り組みとしてこの人と協業したいとお声かけをしたoverviewcoffee japanの代表である増田啓輔さんへのインタビューです。

Q1. overview coffee は土壌再生と気候変動の問題解決に寄与することを明確なミッションに掲げているコーヒーロースターとして2020年にアメリカで誕生しました。overview coffee japanの出来た経緯を増田さんのこれまでと合わせてお聞かせください。

 Overview Coffeeは広島県尾道市瀬戸田町にて2021年春に焙煎所を立ち上げ、日本での活動を開始しました。Overview Coffeeの示す方向性はコーヒーシーンがこれから健全な形で成長して行くときに重要で、この流れをより推し進めたいと考えました。 

僕は2010年よりコーヒーに携わり、有名コーヒーチェーンにてキャリアを開始し、当時最年少店舗責任者を担いました。その後、渡豪し、オーガニックコーヒー農園にてコーヒー豆の栽培方法を学ぶとともに、焙煎補助から抽出に至るまでの過程を経験しました。日本帰国後は、都内を中心に複数のコーヒー店舗の監修や立上げに携わりました。監修を担当する際には、いつも※コーヒーの2050年問題がある中で、持続可能性といキーワードを基にコーヒーの消費国である日本で出来ることは何だろうと色々と考えてきたのですが、そもそものコーヒーの栽培方法を変えよう、土壌の再生みたくリジェネラティブ | 再生みたいな考え方は当時の自分にはありませんでした。しかし、これまでのコーヒーの文脈を知っている自分だからこそOverview Coffeeで出来ることが多いと考えたのがきっかけです。

※コーヒーの2050年問題
地球温暖化による気候変動がこのまま進めば2050年には世界で消費される
コーヒーの約7割を占めるアラビカ種の栽培に適した土地が半減するという予測

Q2.「これまでのコーヒーの文脈」とは具体的にどんなことですか?いわゆる「コーヒーの2050年問題」と呼ばれる気候変動からくる環境問題のことでしょうか?

スペシャルティコーヒーと言う言葉が主流になるまでは、コーヒーは生産国名で売られ、美味しいコーヒーを生産してもボリュームで価格が決めれれるので、生産地では適正な対価が貰えず、消費国側では高品質なコーヒーを見つけるのが難しかったことに対して、コーヒーを育てている環境や品種、精製方法、コーヒー農園主が誰であるかの透明性を確保すること、そこからの出荷から焙煎、抽出といった一連の流通経路の明確さを基準としたスペシャルティコーヒーは、美味しさ、それから生産者への適正な対価、またはプレミアムを支払うことで、より両者にとっても持続可能な方向性へとシフトしてきました。しかしスペシャルティコーヒーが主流になってきた近年では、どちらかといえば高品質で高価格なコーヒー、いわゆるユニークな風味のコーヒーをどうやって作るのかと、少し消費国側の力の方が結局強まってきているように感じます。 

Q3.現在の窯業は焼成時のCO2排出、検品基準に満たないB品の廃棄など課題も山積です。一方、増田さんが感じるコーヒー業界の課題や、現在の製造プロセスが環境にどのような影響を与えているか、具体的に把握されていることはありますか?

コーヒーも窯業と同じく、製品になるまで多くの人が携わるので、今回は焙煎ーコーヒーの提供に焦点を充ててお話しします。

焙煎は一般的にガスや電力のエネルギーを多く使用します。また焙煎後にはチャフ(コーヒーの薄皮)の廃棄物が出てきます。 

 またコーヒーの提供でも焙煎同様にガスや電力のエネルギーでお湯を温め、水を多く使用します。ハンドドリップのコーヒーはペーパーフィルターを使用するので、こちらも廃棄物になります。抽出後のコーヒーカスも大量に出るので環境負荷は大きいと思います。

また消費者側で考えますと外でコーヒーを飲む時にでるシングルユーズのカップやリッド、そしてコーヒー豆を購入した時に使用されるパッケージは環境負荷に繋がります。

電力は再生可能エネルギーを使用することや、チャフやコーヒーカスは堆肥化を行うこと、そしてタンブラーの推奨やキャニスターを利用したコーヒー豆の量り売りなどと環境負荷低減への取り組み方は色々とあると思います。続けることが重要なので、出来る範囲から始めるのが良いと考えています。
 
Q4.zen toの監修のオファーがあった際、どのようなお気持ちでしたか?またzen toでどのようなものを実現させたいとお考えでしょうか?

小さい頃からモノづくりが好きで、こういったようなプロダクトデザインに携われるのは光栄です。自分xOVCに依頼をしているので、ただ自分が思った良いプロダクトを作るのではなく、製造工程の中でネックなポイントや素材の見直してみたいところから考えたいと思いました。これは透明性にも繋がり、プロダクトを手にした人が気になった時に開示できるようになります。

Q5.増田さんから見て、魅力的なプロダクトやブランドとはどのようなものでしょうか?

キーワードで挙げるとするならば、適正、公平性、透明性、(Authenticity fair、transparenct、)
もちろん一番にくるのは先入観を無くして、直感的に感じる美しさや美味しさ、素晴らしさみたいな部分なのですが、生産背景などのストーリーもとても重要です。自然環境にある資源は一生ではないかもとなってしまった今、適正な価格での取引や作り手と買い手の公平性、そのプロダクトの素材や工程での透明性があることで、より魅力や愛着を感じると思います。