Re: Hasami (1) 窯元としての現在地・中尾善之
第1回目は「現在地」をテーマに、zen to を運営する株式会社中善代表、中尾善之のインタビューをお届けします。
Q1. 改めて中善はどの様な会社か教えてください。
株式会社中善は、日本有数の陶磁器の産地として知られる長崎県波佐見町にて1917年に創業しました。窯業を生業とし、江戸時代から続く波佐見焼の技術と精神を継承しています。私は2004年に入社し、2017年に四代目社長として現職に就任しました。今日までの20年は波佐見焼において、また中善にとっても変革期だったと思います。というのも、これまでのやり方に危機感を抱き、新しい技術やデザインを導入することで新たな市場や顧客層を開拓する必要があると感じたからです。まずこれまでの販売方法や流通形態を見直しました。そしてそれらに対応出来る商品開発を模索をしながら進めています。現在も変革期の途中ではありますが、微力ながら人々の暮らしや食文化を支えてきたことを誇りとしています。
Q2. zen toを始めた経緯をお聞かせください。
社長就任後、前述の改革の中で、伝統的な地場産業においても時代の変化に伴う新たな価値観の創出が求められていると感じておりました。これまでは窯元として依頼されたものを作っていればよかったのですが、それではこの地特有の分業制に甘んじていたと思い至りました。また、そのプロセスに不安と限界を感じていたこともあり、肥前地区の焼きもの技術の可能性を次世代に伝えるべく、新たな挑戦として創業100周年を期に立ち上げました。
Q3.監修者にoverview coffee japanの増田啓輔さんを起用したのはなぜでしょう?
土壌の再生と気候変動の解決へ寄与することをミッションとするコーヒーロースターとしてその存在を知り、彼らの取り組みを知れば知るほど魅力を感じておりました。業種は違えど、その高い環境意識から学ぶことが多いはずと、2022年に監修をオファーし、環境負荷を抑えたもの作りを共にできないかと模索している最中です。
Q4.現在の製造プロセスが環境にどのような影響を与えているか、具体的に把握されていることはありますか?
詳しいことは述べきれませんが、間違いなく影響があることとしたら、焼成時に出るCO2と、検品基準に満たないものを廃棄(総生産量の約10%)していることだと思います。具体的には、検品基準に満たないものをB品として了承いただいた上で特別に販売したり、リサイクル可能な材料の採用や、今後は、エネルギー効率の高い生産方法の導入、排出ガスや廃棄物の削減を目指しています。