台湾有事は本当に日本有事なのか?
最近「台湾有事は日本有事」という事をよく聞く。
今にも、中国が台湾に軍事進攻し、中国は日本の米軍基地にミサイル攻撃をし、日本も相当な被害を受ける。それのみならず、台湾近海を海上封鎖し、日本の原油輸入も影響を受けるというのである。
本当だろうか?
この議論は、確かに日本が対応を間違えれば、最悪の場合の可能性としては、そうかも知れない。ただ、その可能性は非常に低いと思う。
そこで、本当に、台湾有事が日本有事なのか議論したい。その議論をする前に事実関係を整理しておきたい。
事実関係
中国は北京の政府を唯一の政府とし、台湾の政府は認めていない。台湾は中国の一部としている。
日本も、アメリカも、中国の立場を理解していて、台湾を国として認めていない。
つまり、中国から見れば、台湾は反乱軍なのである。
台湾自体、独立を望んでいない。台湾の世論は、現状維持が大方である。
中国は、台湾問題は国内問題と言っている。
であるから、外国の干渉を一切受け入れない。
逆に、台湾問題に関しては、干渉されないなら、外国に迷惑をかけるつもりはない。
中国という国はメンツを重要視する。
メンツのためなら、自国民が1億人死のうが構わない。
戦争になったら、絶対に負けない、核兵器も使う恐れがある。
以上が、事実関係でる。これについては多くの人が異論はないと思う。
台湾有事の現実性。
多くの軍事専門家が、中国が、台湾に軍事侵攻し、長期間にわたって、占領し続けるのは難しいと判断している。
台湾は、海に囲まれていて、砂浜が少なく、海岸線は急峻な崖が多く、上陸に適した海岸は少ないという。
また、多くの将兵を運ぶ船もない。
ただ、中国はメンツを重要視する国だから、以下の場合は、軍事的合理性を無視してでも侵攻すると思われる。
①台湾が独立しようとしたとき。
②台湾が核兵器を持とうとしたとき。
しかし、現在台湾はそのような状況にない。
であるから、台湾有事が差し迫った危機という認識は適切でない。
それでも、独裁者、習近平が自らの手柄を得るために、あるいは、中国内での影響力が落ちた場合に、挽回策として、台湾進攻する可能性もないわけではない。
台湾進攻の形態。
以上のように、台湾進攻自体、非常に確率が低いのであるが、まったくないわけではない。
しかし、その場合でも、軍事力でいきなり台湾を制圧するというのは、リスクが大きいため考えられない。
一番可能性が高いのが、海上封鎖であろう。台湾の周りを軍艦で囲み、一切の物の出入りを封鎖し、台湾を干上がらさせる。
実際、中国はそのような演習をしており。この可能性が高い。
日本が先制攻撃される可能性。
まず、日本が先制攻撃される可能性は通常考えれば低い。
なぜなら、中国は台湾問題は国内問題と言ってるのであるから、他国に軍事攻撃したり、原油タンカーの運航を妨害したら、台湾問題は国内問題でなくなってしまう。
そんな愚かなことをするだろうか?
尖閣諸島すら手を付けない可能が高い。
もし、中国が、日本に先制攻撃するとすれば、
中国が、アメリカが100%軍事介入すると確信した場合に限られる。
(後述するがその可能性は極めて低い)
この場合は、アメリカと全面戦争することを覚悟の上なので、先制攻撃したほうが有利なので、先制攻撃するだろう。
しかし、そうでなければ、先制攻撃はしない。
中国が一番嫌がるのは、アメリカの軍事介入である。一番嫌がることをなぜ自ら起こすのだろうか。
また、もし、中国が、ほんとうにアメリカと戦争することを覚悟したとしても、自分から手を出すとは考えられない。アメリカに先に攻撃させるだろう。
中国は、日本の「真珠湾攻撃」の後、日本がどうなったかを研究しているはずだ。
ということで、中国が台湾に軍事侵攻したり、海上封鎖すること自体、確率が低いのであるが、万が一、そのようなことになっても、いきなり、日本に先制攻撃することは非常に確率が低い。
アメリカの対応。
問題はアメリカの対応だろう。
アメリカは軍事介入するかどうか?
軍事介入するかどうかは、時の政権によるだろう。
大統領が民主党か共和党か?
ただ、私は、アメリカが軍事介入する可能性は低いと思う。
それは、ウクライナ戦争を見ていればわかる。
武器は供与するが、自国は一切、出兵しない。
武器の供与も制限付きで、ひたすらエスカレーションを怖がっている。
ウクライナ戦争でわかったことは、アメリカは核を持つ国とは戦争はしたくないということだ。(北朝鮮すら攻撃できないのに、その何千倍も困難な中国に攻撃できるだろうか)
ただ、アメリカは中国に好きなようにさせるわけにもいかない。
アメリカにとって一番いいシナリオは、日本に中国と戦争させることだ。
つまり日本をウクライナにするのだ。
そのためには、アメリカにとって一番いいシナリオは、中国が、日本に先制攻撃することだ。
この場合、アメリカは日本に、「攻撃されたのは日本なのだから、日本が主体的に戦え」と言える。
実は、中国にとってもこの状態が一番いい。
中国も同じようにアメリカとは本気で戦争はしたくない。
日本の対応。
もし、台湾有事が起こったら、日本が生き残るため、するべきことは、いち早く中立宣言することだ。
少なくとも、軍事介入はしないと宣言することだ。
また、アメリカに中国の攻撃にために基地を使用させないと宣言することだ。
アメリカにそんな事、言えるのかという疑問が出ると思う。
しかし、アメリカの世論も2分されるはずだ。
かならず、強硬派と穏健派に分かれるはずだ。
であるから、日本の中立宣言はアメリカの穏健派にとっては助け舟になるはずだ。
台湾を見捨てるのかという世論は
軍事以外のことで台湾を支援するしかない。
軍事侵攻は世界中、どこでも起こっており、日本はそのほとんで介入していない。台湾だけ介入する所以はない。
世界の反応は?
台湾有事が起こった場合、世界はそれほど団結して中国に圧力をかけるとも思えない。
はっきり言って、強い調子で非難するのは、日本とアメリカだけだろう。
なぜなら、ほとんどの国が、台湾は中国の一部あることを認めており、いわば中国の北京政府が内乱を沈めただけととられかねない。
少なくとも、ウクライナに対するロシアよりは、中国にはそれなりに正当性はある。
ヨーロッパなども、いちおう口では非難するが、それほど強い経済制裁に出るとも思えない。それほど、中国の世界での影響力は強い。ロシアの比ではない。
中国は絶対に負けない。
もし、万が一中国が台湾進攻した場合、それは国の威信をかけて行う事だから、絶対に負けない。
もちろん、軍事力ではアメリカに劣る。しかし、中国はメンツのためなら、自国民が1億人死んでも構わない国だ。絶対に負けない。
もし、負けそうになったら、核兵器を使うだろう。
それも、アメリカには使わない。日本に使うだろう。
その場合、アメリカは報復のため、中国に核兵器を使うだろうか?
いや、絶対に使わない。そんなことしたら、核戦争のすえ、中国もアメリカも亡びる。
結局、中国とアメリカはどこかで手を打つだろう。
損をするのは途中で梯子を外された日本だけということになる。
抑止力について。
最近、日本は軍事費を大幅に増額している。その根拠が中国に対する抑止力である。
ただ、抑止力の有用性は認めるが、台湾有事に関しては、抑止力の効果はほとんどない。
なぜなら、抑止力を言うなら、中国はアメリカを見ている。日本の軍事力などほとんど眼中にない。
また、台湾問題は、中国にとっては核心問題であり、メンツがかかっている。必要とあらば、軍事バランスなど関係なしに行うだろう。それほどメンツを大切にする国だ。抑止力はほとんど意味がない。
結論
中国が台湾に軍事侵攻する可能性は低い。もしあるとすれば海上封鎖であろう。その場合でも中国が日本に先制攻撃する可能性は低い。
アメリカも軍事介入する可能性は低い。
もし、それでも中国とアメリカが戦争しそうになったら、
日本は最悪の事態をさけるには、台湾有事に関して、中立宣言や、武力不介入宣言、あるいはアメリカに基地使用不許可宣言をすることである。
国の存続がかかっているのだから、台湾がかわいそうとか、そんな事は言ってられない。しかし、そのような最悪の可能性になることは確率としては非常に低い。