もう一つの視点001‐赤髪のボウズ‐
「翔平のカノジョって赤髪のボーズでダンサーなんだって」
渋谷のマックで昼飯を食べている、隣の大学生らしき二人組の話が聞こえてきた。その後も彼らの話に耳を傾けていると、どうやら翔平のカノジョはかなりぶっ飛んでいるみたいだ。今5股していて、元カレの名前が足の裏に彫ってあるだの根も葉もあるかどうかわからないが、そんな噂が尽きることはなかった。翔平のことを思うと可哀想になって、俺は苦笑いを浮かべるしかなかった。
「翔平のカノジョって赤髪のボーズでダンサーなんだって」
付き合って3日目のカレシが、「今日渋谷のマックで超面白い話聞いたんだけどー」とわざわざハードルを上げて話し始めた。
今5股してて、足の裏に元カレの名前が彫ってるとか嬉々として話したあとに、「ほんと翔平が可哀想だよな」と自分は会ったこともない翔平を同情していた。ウィッグの下のボーズ頭にかいた汗を悟られないよう、私は苦笑いを浮かべるしかなかった。