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あめちゃん
以前朝日新聞の投書で見た。「大阪の婦人は、子供を見るとすぐアメを上げようとする。他人の子供の健康をいったいどう思っているのか」。
転勤族の方だろうか。文章から戸惑いが隠せない様子がにじみ出ていた。
しかし私は同じ光景を横浜のママさんコーラスで見た。
練習前に、全員が全員にアメの袋を手に手に配りまくる。ご主人が官僚という婦人は「これね、ハンガリーで買ってきちゃったー。コーラス用ののど飴なのよ」とちょっぴり鼻をうごめかす。
うっわ、これ漢方薬やんけ。
一瞬たじろぐが、ママさんたちは「うわーすっご〜い」とお世辞半分の声をはりあげる。
実は合唱と違ってヴァイオリンやフルートなど楽器ではアメ配りはあまりない。友人のトランペットなんかは一言「こんなんで吹けるかい!」。
管楽器は一人ずつポジションが確保されているので、媚びる必要はないのだ。
ここまで書いて気がついた。
アメちゃんはワイロだ。
そう、人に言う事を聞かせたい時に、アメリカ人のおっさんは弾丸をぶっ放すが、大阪のおばちゃんは上目遣いでアメちゃんを手渡しするのだ。
冒頭でアメをあげた大阪のおばちゃんが言いたかったのは「なあボク、頼むから電車の中で静かに、な」だ。
他人の子供の健康なんか気にするかいな。
「これってワイロか」。
そう気付くと私は合唱団で大量にもらったアメを会社のコーヒードリッパーの横にぶちまけた。ラッシュに揉まれ、かみもほつれてブヨブヨになったのは誰からも相手にされず、翌朝には片付けられていた。