保育の拠点を守る「親睦会とは湿地復元の作業なり」(『土の匂いの子』抜粋)
鎌倉中央公園を育てる市民の会には7つの班がある。田んぼ、畑、雑木林管理、農芸、自然遊び、生態系保全、植物育成だ。各班の活動に会員たちがボランティアとして参加し、作業を進めている。「谷戸の景観と農的生態系を保全するための活動」が全体の目的である。
なかよし会の家族は会員としてそれぞれ個別に所属しているが、毎週末の作業に参加し続けるのはなかなかむずかしい。そこで、春、夏、秋、冬と年3回の親睦会の日に、こぞってボランティアで湿地復元をしている。湿地として残っているところに毎年繁殖するアシや水草を根こそぎ抜いて乾燥化を防ぎ、溜池部分の水面の面積を確保するのだ。
おとなが膝上までぬかる沼にはだしで入り、スコップや万能という湿田用の道具を使って、泥まみれになって掘り起こす。一人でやるより、大勢でいっときに力を発揮してこそ効果がある。そこで、父たちが総出で度胸を決めてかかる。新人は何年もやっている先輩のあとについてやる。やり終わると、頭から足の先まで泥まみれ。
湿地がすっきりして、トンボがさっそく気持ちよさそうに飛んできたり、交尾や産卵を行うので、やりがいを味わうことができる。ただし、午前中の2時間で慣れない手にはマメができ、沼の中を右往左往した足腰は居たくなる。30~40代が平均であるなかよし会のいまどきの父母にとっては、重労働にちがいない。
ふだんやらない肉体労働後の昼食は、谷戸やなかよし会の畑で採れた野菜や、海と山の幸だけを材料にした料理。山崎産の大豆「たのくろ豆」でつくった味噌汁の中身は、各種の芋と海で拾った海草。谷戸米のおにぎりを握るのは、梅干、シソの実、ムカゴ、芋、大根の乾燥葉、ごまなど、すべて自家製。谷戸の小麦を使ったおやき、クッキー、団子。じゃがいも、さつまいも、里芋は揚げて、蒸して、焼いて、つぶしてと、料理法で限りなくバラエティに富んだごちそうになる。デザートは、赤ジソ、梅、桑の実、柿、夏みかんなど季節の寒天。
動物性食品はなくても満足できる味だが、都会生活を送っている人たちにとっては物足りないかもしれない。これほど安全な健康食はなく、粗食こそがいまやぜいたくなのだが・・・・・・。