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いつでも薄着(『土の匂いの子』抜粋)

 「いつでも半袖だから季節感がない」と笑いながら、母たちが写真を眺めている。それでも、周囲が自然だから、夏か冬かはすぐにわかる。「裸にさせるんですか?」と聞かれるが、「いいえ、ひとりでに裸になるんです」と答えるしかない。
 春先はまだ肌寒いだろうと母が着せる長袖では、すぐに水に手を突っ込み、泥んこ遊びを始める子どもの袖口が濡れて、冷えてしまう。水たまりに入って足踏みをビチャビチャすると、長ズボンの裾も濡れて寒くなる。薄着は鍛錬ではなく、機能的なんだと、母たちは納得する。
 薄暗い山道から日差しの明るい場所に出ると、「あつい」と子どもは脱ぎ始める。3枚重ねの半袖Tシャツやチョッキを1枚ずつ脱いでいく。薄着のほうが身軽で動きやすいから、虫を捕まえるときも花を摘むときも脱ぎたがる。水たまりでしばらくはしゃいでいると、上着も袖も瞬く間に濡れてしまうので、すべて脱いで裸になる。ほっとした顔。
 一度味わうと、水を見たとたんに条件反射で脱ぐようになる。何が気持ちいいかを、子どもはすぐに覚える。
 水イコール裸とわきまえてしまった子は、晩秋になっても裸を好む。しかし、寒さを感じればすぐまた着る。これも早業だ。1枚脱いでは、「さむい」とまた着る。誰かが脱ぐと真似して脱ぎ、誰かが着ると真似して着る。大きい組になれば、「あたしはぬーがないっ」「あつくないからぬがない」と、それぞれ自分で考えて行動する。
 氷の張る季節、日陰は凍えるようだが、日向はポカポカと暖かい。場所によって、脱いだり着たり。手慣れた子どもたちはマメに着脱を繰り返す。おとなが関与する余地はない。


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