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シン・エヴァンゲリオン劇場版 後半の解釈の解説のようなメモのような何か


シン・エヴァンゲリオン劇場版でエヴァが完結を迎え、物語をどう決着させるかというのに興味があったので2回ほど見てきました。

趣味でたまにものを書いたりもする人間として、物語の構造というか「どういう意図でこのシーンを置いたか」「どう物語を着地させたか」みたいな事を把握したい気持ちがあり、主にマイナス宇宙突入後、物語後半の各シーンを自分がどう理解/解釈したか、みたいなことをまとめた、これは解説のようなメモのような何かです。

あくまで自分がどう解釈したか、なので「これが正しい」というものではないですし、記憶が曖昧なところも多数あって間違いもあると思いますので、あくまで参考程度に。もし明らかな間違いなどお気づきの点あれば教えてください。

また、当然ながらディープなネタバレが含まれているので、未見の方は読まない事をお勧めします。


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シンエヴァ後半の話の流れ

シンエヴァ後半は、エヴァらしく、怒濤のように謎用語が飛び交うので、細かい設定については理解するのを諦めました。

エヴァが何でどうするとインパクトが起こるのか、とか、槍の役割とか、アダムスとアダムスの器がどういう意味かとか、そういった事は正直未だにさっぱり理解できていません。考察班の皆様の研究成果を待ちます。

とりあえず物語として必要そうな要素で大雑把に理解したのは

・どうもマイナス宇宙に突入して、ゴルゴダオブジェクトとやらに触れて何かの儀式?をすると世界が望む形に書き換えられるらしい

・そのとき、どうやら他のループ(=TV版とか旧劇、もしかしたら漫画版とか含め)で起きた事も把握できてるっぽい。

・ミサトさんが新しい槍を作ってシンジ君に届けた事で、ゲンドウは自分の目論む結末を諦めたようだ

・結果、世界の行く末はシンジ君に委ねられた

ということです。

当初シンジ君は「望む世界への書き換え」を自分を犠牲にして実行するつもりだったみたいですが、最終的にユイがそれを代行することでシンジ君は生き残り、戻れる事になったようです(そのためにユイがエヴァの中にいたっぽいですが細かいことはよくわからん & その時にシンジ君が「父さんは母さんを見送りたかったんだね」と言っていたのもいまいち綺麗に解釈しきれてないです)

細かいことはさておき、シンジ君は世界をどうする事にしたのかというと、結論としては「時間も世界も戻さない。エヴァがなくてもいい世界に書き換える」事にしました。

「時間も世界も戻さない」なので、第三村などは恐らく全てそのままです。
死んでなかった生き物(インフィニティ化?してたもの)は元に戻ってる描写ありましたが、亡くなった人(=加持さんやミサトさん、冬月先生)が生き返ったりはしなそうです。
エヴァや使徒の戦闘時とか、ハイカイの移動などで壊れたものは壊れたままでしょう。(箱根周辺とかパリとか大変なことになってそう)
大地や海の真っ赤になった状態は戻りそうですが、環境とか生き物がどこまで戻るのかは謎です。
まあ、加持さんのおかげで宇宙に色々な種を保存してあるので、長期的に見れば最終的に復興は叶うと思いますが。

そして「エヴァがなくてもいい世界」なので、当然ですがこれ以降、エヴァがなくなります。

しかし、ただエヴァを消しただけだと、不幸になったり未練が残る人が出てきてしまいます。その辺きちんとケアをした上でエヴァをなくさないと「エヴァがなくてもいい世界」にはなりません。
というわけで、エヴァに関わる重要人物、ゲンドウ、アスカ、レイ、カヲルのケアが行われる、というのが後半の展開かと思います。

ゲンドウとのバトル、そしてケア

当初は儀式の主導権争いでシンジとゲンドウが争っていました。
暴力で殴り合いますがそれでは解決しません。(この戦うシーンが妙にチープで、初見の時は???だったんですが、よく見ると特撮をアニメ上で再現するみたいなめんどくさいことやってて、これは虚構のイマジナリーなシーン、という意図的な表現みたいでした)

その後ゲンドウが想定していなかった槍がミサトさんから届くことで、儀式の主導権がシンジに移り、ゲンドウのプランが破綻。シンジ君が主導権を得ます。

ここでシンジ君は父親を全力で否定して殴り飛ばしたりしてもいいわけですが(正直ちょっと期待した)、第三村でのケンスケとの会話などの影響もあったのでしょう。「父さんの事を知りたい」と対話を求めます。

ゲンドウは自身の気持ちなどあれこれを告白、自身を理解し、シンジも父親を理解し、最終的にゲンドウはユイをシンジの中?に見いだす(※この辺がいまいちきちんと理解できてない)事でゲンドウのユイを求める気持ちに決着が着きました。

まあ、要するにゲンドウは自身の問題を認識し、シンジも父を理解し和解できたという事なのでしょう。
そしてゲンドウはシンジ君の身代わりになったユイに寄り添って去り(?)ます。

アスカのケア

アスカは、レイと同じくゲンドウの計画のために作られた存在だとシンエヴァ劇中で語られました。
新劇のアスカはクローンであり、どうやら大量に作られたクローンの中から選別された優秀な一体、という設定のようです。(そういった大きな設定変更が惣流→式波への名前変更の理由だと思われる)

そんな出自もあって、アスカにとって、エヴァに乗る事は生きる意味/存在意義の全てです(恐らく旧劇のアスカ以上に)。
一方でシンジ君は、これからエヴァのない世界にしようとしているわけなので、そのままいくとエヴァのない世界=アスカが生きる意味を失った世界になってしまいます。

生きる意味を失ったアスカをケアするのは、シンジ君には恐らく難しい。
何せアスカの存在意義を奪うのがシンジ君なので。
そうでなくとも、キャラ・性格的にも、立場的にも、色々と衝突したりしてうまくいかないのは容易に想像できます。

そこでケンスケの登場です。
なぜケンスケなのか、というのはおそらく漫画版エヴァでの描かれ方にヒントがあって、漫画版エヴァだと、アスカは「綺麗だけど性格が最悪な女の子」として描かれているのですが、そんなアスカにドン引く事無く「こんな子たまらん、怒られたい」と全力で肯定しているのがケンスケでした。
さらに漫画版ラストシーンでもケンスケは登場し、アスカにアタックしそうな空気を出していて、ケンスケとアスカが組み合わさる可能性が示唆されています。
それをシンエヴァでもアレンジしつつ採用したんじゃないかなと思います。

実際、想像してみると、アスカがエヴァを失っても、ケンスケならエヴァの元パイロット、というだけで無条件に尊敬してくれそうです。
エヴァパイロットとしてこれまでしてきた事も目を輝かせて聞いてくれそうだし、ミリオタなので軍事組織に生まれてからずっといたアスカの行動原理も理解できるでしょう。
また、鬱状態になったシンジに対してのちょうどいい距離の取り方を見ても、心に何か抱えた人との接し方は上手そうでしたし、第三村での立場的に、アスカの新しい居場所や役割もうまく作ってくれそうです。

というわけで、登場キャラの中だと確かに大人ケンスケが、「エヴァのない世界」に放り出されたアスカと共に過ごすのに適任に思えます。(ここでエヴァ破でアスカに「他人と過ごすのも悪くない」と言わせたりしてたのも、アスカを孤立させないという意味で地味に効いてくると思うので、シンジ君に好意を抱いた過去もきっと意味がある)

だからシンジ君は、アスカが自分の居場所を見つけられるよう、その後をケンスケに委ねたのでしょう。

ちなみにシンエヴァ劇中、第三村でのアスカは、ケンスケ邸にはあくまでシンジ君の監視のためにあの時に限り滞在している、という状況のようだったし、本人もケンスケ邸で「一人で生きていくんだ」的な事独白してるシーンがあった気がするので、あの段階で恋愛関係に発展してるとかはなさそうです。(普段の会話で少し救われるような事はあって心が揺れるとかはあったかもしれませんし、二人の間に多少の好意が発生してるっぽい気配はありましたが(決戦前のビデオ撮影のシーン))

あと、シンジ君と話すのが浜辺のシーンだったのであれは旧作の惣流アスカなの?という話がありますが、マイナス宇宙とやらに入った以降はイメージ/記憶の世界だそうなので、あれは旧劇の記憶/イメージの中にいるだけで、そこにいたのはあくまで新劇の式波アスカなのではないかな、と思います。

それから、これ大事な事なんですが、シンジ君、アスカには別れ際「さよなら」って言ってるんですよね。
シンエヴァでは「さよなら」は「また会うためのおまじない」なので、シンジ君のその一言にはちょっとグッときました。


カヲルのケア

カヲル君はやっぱりループしてたっぽいですね。
劇中で「また会えるよ」をはじめ繰り返しを示唆する発言が何度もあったので、おそらくそうなんだろうとは思ってましたが、ようやく確定できた感があります。

シンジ君を幸せにしたい、が願いだったけど、そうではなく「自分が幸せになりたい」だったと気づき?(この辺微妙に記憶に自信がない)役目を終えました。

途中からシンジ君に代わって死んだはずの加持さんが急に出てきて仲良く話し始めるので面食らいましたが、同じくあのタイミングでは亡くなっているはずの葛城と一緒に畑でも、という台詞からして、カヲル君はそのまま死に、死後の世界で加持さんたちと楽しく過ごす、ととるのが自然かなと思います……が、どうなんだろう。

加持さんがカヲル君を「渚指令」と呼ぶのは破とQの間の14年間にカヲル君がネルフ指令で(破の次回予告より)、そのときに仲良くしてたからって事なんでしょうが、その時のシーンが前にあったら多分もっといいシーンに見えるんだろうな……と思うにつけ14年の間の出来事をどうにか映像化なり何なりしてほしい気持ちが高まります。

とりあえず思い残す事なくループからは抜けられた、という事でおめでとうカヲル君。

レイのケア

レイはなんだかサラッとしてたような……「綾波はどうする?」「いい」みたいな感じでしたっけ……?(どうもこの辺記憶が曖昧)

新劇での綾波は、破ではシンジ君に全力で救い出され、シンエヴァの黒綾波は色々な体験をして、わりと幸せを感じられて満ち足りていそうだし、「エヴァのなくていい世界」になれば「碇君がエヴァに乗らなくていいようにする」も叶うし、これ以上望む事なかったという事ですかね。

ラスト前の海

というわけで、ケアを終えて、エヴァを消滅させて、一通りやるべき事は終えるわけですが、シンジ君は元の世界に戻る方法がありません(次第に線画になっていったりしていくシーンはおそらくシンジ君が戻れず消えかけてる表現っぽい)。
そこに「どこにいても迎えに行く」という宣言通り、ギリギリででマリが到着して約束通り救助を達成。

救助にきたはいいけどエヴァなくなるし、帰りはどうするんだろ……と思いましたが、アスカのものとおぼしきエントリープラグが第三村に無事たどり着いたりしてるわけなので、同じようにエントリープラグで脱出するとか何かしらの方法があるのでしょうきっと。

ラストシーンの解釈

で、ラストシーン。
唐突に駅なのがよくわからないな……と思ってたんですが、よく考えるとエヴァで心理描写は電車の中で展開される事が多いです。
そういう心の葛藤とか対話とかあれこれを終えてあの電車から降りたところ、と考えてみると腑に落ちました。

とすると、あそこはまだ現実に帰ってきたところではなく、イマジナリーな世界の中、「マリがシンジ君を迎えに来て、マイナス宇宙を脱するところ」を描いているもの、と考えるのがよさそうです。
そう考えれば、次の行き先の決まっているカヲル君やレイ、アスカが向かいのホームにいたり、父母はいなかったりするのも説明がつきます。

それから、アスカのケアのシーンですでにマリがいて「お達者で」と言っていたり、レイのシーンにもマリがいたという話もあった事から考えると、アスカ/カヲル/レイのケアのシーン+マリの到着シーン、そしてこのラストシーンは時間の流れとしてはパラレル(同時並行)だったり、実は一瞬の出来事だったり、前後が少し組み替えられている可能性があったりしそうです。

とすると、このラストシーンはアスカやレイ、カヲル君のケアと並列・同列の「シンジ君自身のケア/結末」のシーンと考えてもいい気もします。

その辺踏まえて解釈すると、

駅のホームにいる=電車を車を降りた後=自身の心の問題やゲンドウとの対話などに一通りケリがついた

ベンチに座って待ってる=マリが迎えに来るのを待ってる

少し大人になっている=色々と落とし前をつけたことで一つ大人になった事の表現

DSSチョーカーを外される=エヴァとの繋がりだったりエヴァに乗ることで抱えた罪(?)からの解放、そういえばこのときのチョーカーはミサトさんにつけられたものだから「戦いの終わり」みたいな事でもいい?

シンジ君がマリの手を引いて駅を出て行く=これまで受け身だったシンジ君が、自らの意思で生きていくという成長の表現

マリ=助けにきてくれた人であり、以降、成長したとはいえまだ子供なシンジ君を、母親から託されサポートしてくれる人(アスカに対してケンスケがいるように)

みたいに「シンジ君の今後も大丈夫だよ」という事を伝えるシーン、と考えるのが綺麗な気がします。(一部少し考えすぎな気のしないでもないですが)

というわけで、「数年後、マリとシンジが結ばれました。レイやカヲル君は再生して別の人生を歩んでいます」とかそういうシーンではないように思ったんですが。さてどうなんでしょうね。

残された謎・マリ

……と、色々書きながら思ったんですが、今回のシンエヴァは登場人物がほんとに誰も未練などを残さずやる事をやり切ってますね。

死んだ人はきちんとやりたい事をやりきって死んでますし、生き残った人には何かしら役割や居場所が与えられています。
そういえばミサトさんがリツコさんに「子供を頼む」と言うシーンがありましたが、これもエヴァもゲンドウもない世界でリツコさんの生きる場所や役割を与えるという意味で非常に大事なやりとりだったのかも。

……と、あれこれ考えるにつけ、ちょっと綺麗すぎるんじゃないかっていうくらい綺麗に終わったシンエヴァですが。
この人の事だけはモヤっとしたままです。
今回大風呂敷をたたむ上で必要なキャラクターだったのは明快ながらも謎しかない女、マリについて。

今のところマリについて分かっているのは、

・16歳で飛び級で大学に入った天才少女でユイと同時期に大学にいた
・ユイの事が(恋愛的な意味で)好きな女の子

というのが漫画版のエンディング後おまけ漫画からの情報です。

シンエヴァのゲンドウの記憶/心理描写シーンの中でも、マリがゲンドウに最初にからみに行ってユイとの出会いのきっかけを作ったっぽい描写など、いくつかのシーンで登場していたみたいだったので、新劇でも基本は同じ設定だと思います。

そうするとエヴァに関する実験などあれこれに関わっていた可能性大ですし、エヴァに関する知識が豊富なのは特に不思議ありません。

また、劇中の発言から、マリがユイにあれこれ託されているであろう事も想像に難くないですし、冬月先生もことあるごとに「ユイ君、これでいいんだな」という台詞を言うので、シンエヴァではマリと冬月先生の二人がユイからなにか重要な情報や願いを託されていて、ぜーレやネルフ、ヴィレとはまた別の一派として暗躍していたのだろう、という事はなんとなく想像できます。

というわけで出自と行動の動機などはある程度予想できるんですが……とにかく年をとらない事だけが謎です。
アスカと同じくエヴァの呪縛だと考えるのが妥当なんでしょうが、破冒頭でエヴァに乗ったのがエヴァ初搭乗と言っていたので、そうするとエヴァの呪縛にかかる理由はエヴァ搭乗ではないのだろうか……とか。
まあ、過去の実験で何かあったとか、自分で自分を改造したとか、実はカヲル君的な存在だとか、コールドスリープとか、何年かLCLに溶けてたとか、出自からするといくらでも説明できそうな設定は作れるので、「なんか知らんけど年をとらない」でいいといえばいいんですが。

とりあえず「ゴルゴダオブジェクトにいた」とかいうユイの出自とかぜーレについてなども含めて、ゲンドウ世代のあれこれと、ついでに破〜Qの間の14年間の出来事とか何かしらの形で開示してくれないかな……その辺もうちょっとだけ情報あるほうが、シンエヴァももっと深く楽しめそうな気がするんですよね。

さいごに

ネットを見てるとマリエンドだの何だの書かれてましたが、上のラストシーン解釈でいくなら別にシンジ君の未来は何も決まってないと思います。

おまじない通りにアスカにまた会いに行くこともあるだろうし、選択肢によっては碇サクラエンドもあるかもしれないし、もっとみんな色々妄想していいと思うんだ。(いやしらんけど)

あと、Twitterで出てたゲンドウ編ってたしか天気の子のエロゲが発売された頃に出てたやつだよね?
今や入手困難だし、自分は未履修なので、マリ&ユイの謎とかの解明につながるエピソードあったらぜひ教えてください。

……みたいなネタで遊べる事や、こんな長ったらしい文章を思わず書きたくなることも含めて、懐の深いとても面白い作品でした。

庵野監督をはじめたくさんのスタッフの皆様、エヴァを作ってくれてありがとう。そしてさようなら(※おまじない)

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