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22-場を見える化する力(の大前提)

前回のnoteで「場を見える化する」目的として、以下の4つを説明した。

①問題意識や目標の共有
②議論の空中分解を防ぐ
(意見の構造化)(雰囲気の見える化)
③思考を対個人から対議論に
④議事録を補完する役割に

「どう書くか・描くか」はもちろん重要なのだが、結局は「場の何をみるか、声をどう聴くか」であり、もっと言えば「そこから何を見つけるか、気づくか、訊くか」という部分が重要だと理解をしておかないと、ただの会話の記録になりかねない。あくまでも「場を見える化する」ことは、場に集う人たち全員で一歩二歩前進することや、違うフェーズにステップアップすることが目的なのである。

今回は「場を見える化する」目的以前の大前提を述べていきたい。

・目標や課題を共有する以前の状況からスタートしている

まず理解しておきたいのが、場に集う人たちの最初の一歩は、ほとんどの場合「なんだかよくわかっていないけど、(気になったから・頼まれたから・仕方なしに)来た」からスタートしていることだ。場を設定した人にとっては、目的や意味も伝えているはずだが、あくまでもそれは設定した側の都合や想いであって、意外と設定した側と来た側では考え方や想いの温度差は激しい。

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またよくあるのが、場を設定した側も「やりたい、集まりたい」と思って声をかけたものの実は本人も「なぜそう思ったのか」への自覚が明快でないことも多い。(これは本当によくあることで、人は自分で理解できる範疇で世界を理解しようとするので、「実はそこじゃなかった」と後から気づくことは多い)

そのため、「場の見える化」を担う人は、たとえ場を設定した人が内容や目的を依頼してきたとしても「そもそも出発点が違うかもしれないぞ」と思っておくことは重要である。そしてさらに厄介なのが、場に集う全員の課題意識や目標は不明瞭かつバラバラで、自覚も全員とも共有できていないのである。

ではどういったことからスタートしていけばいいのだろう?

・見える化のプロセス

「課題や問題点をそもそも言語化(認識)できていない」とするならば、最初はとにかく「関係あるかどうかわからないけど、全部言ってみる、書き出す」ということしかない。もちろん、最初に集まった人たちがいきなり活発になんでも語り出す、ということは難しい。そのために、チェックイン、アイスブレイクといったワークショップデザインの”いろは”への理解が必要だし、何かのキッカケに参加者の言葉が溢れてくる瞬間があるので、どこがスイッチか探るためにあの手この手の問いの投げかけるファシリテーターの力量も重要だろう。さらに言えば、意見を否定しない「Yes,and」の精神を徹底することである。ブレインストーミングとも表現されるが、そもそもプロジェクトのプロセスデザインとして「”発散と収束”を使い分ける、”発散と収束”を混ぜない」といった理解も求められる。

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「関係あるかどうかわからないけど、全部言ってみる、書き出す」というフェーズが終われば、今度はこれらの意見を組み立てたり、離れてみることによって問題点を見つけたり、共通点、ないしはどういう関係性に位置付けられるかなど整理(収束)していく。その試行錯誤を経ていると、必ず「ここが実は問題点なのではないか」「ここから始めていくといいのでは?」と言った気づきやアイデアが生まれる。ここへの道のりは混迷することも多いので、しばらく苦しい時間になるが、この過程を経て生まれた気づきやアイデアは、場にいる全員の課題意識の共有を踏まえた上でのものなので、納得感の高い仮説や根拠となり、前へ踏み出しやすくなる。

これは個人的な所感であり、私見だが、最初のプロセスにおいては、フレームワークから入るのは得策ではないと思っている。まずはKJ法、グラフィック、ホワイトボード・ミーティングを用い、なんでも書き出す、という段階を経る方がいい。

それを眺めて、KJ法なら構造化していくことで焦点を定めたり、新たな視点を見つける。グラフィックやホワイト・ボードミーティングなら問いかけを用い、収束の軸をたて、整理した上で自分の得意なフレームで次の展開を作っていくことだろう。ビジネスフレームワーク系は一旦、この段階を経て、課題や目的がはっきりしたところで用いることがいいだろう。

・「見える化」する人は同時に2つ見る

ここで「見える化」する人は場に与えられた時間がたっぷりあるのであれば、出た意見を見える化した上で、じっくりと参加者へ「何か新しい気づきや共通点、関係性など見えてきたことはありますか?」と問うことがいいだろう。しかし多くの場合、時間は限られている。そのため、「見える化」する人は、出てきた意見を瞬時に構造化していく即興性と、どんな展開で議論を進めていくことがふさわしいか、「プロセスの見立て」を行うことが求められる。

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これは簡単にいうが、なかなか難しい。まず対話や議論の整理に慣れていないといけないし、プロジェクトのプロセスへのパターンをいくつも知っている経験値が重要だからだ。特に「先の展開」を見立てることは、「見える化」ではない専門領域への造詣が求められるため、ここではクライアントと分担するかプロジェクト進行に長けたファシリテーターと組んで手がける方が現実的かもしれない。

・「見える化」する人が心がけたい「筋道と分岐点」

とは言え「見える化」する人は、場に集う人たちに、どういった議論があり、どういった根拠と仮説のもと進んでいるかの「筋道」と、異なる意見は、どこまで同じでどこから違うかといった「分岐点」を見せていかねばならない。「見える化」する人は必ず議論やプロセスの「筋道と分岐点」を把握しておかなければならない。(「見える化」する人が議論をロストしてしまうことは本当に多い)

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とは言え、ロジカルだけの理解だけでは場の納得度が紡げないのが「場の見える化」の難しいところだ。「道筋や分岐点」といった意見の流れだけでなく、発言者の言葉だけでなく、その発言が出てきた背景まで訊き、書くことまで求められる。そういう意見の階層(コンテンツ・コンテクストの種・コンテクスト)にも敏感でなければならないし、黙っている人の表情や仕草から思わぬ言葉を引き出していかねばならない。

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そのように場を「見える化」していきながら、意見と意見の行間(関係性)を全員で見つめられるように促し、そこからこぼれでるちょっとした「気づき」もキャッチして、意見や問題の構造化を図ることが求められる。

・「場の見える化」する人と「場をみる」人は分けておいた方がベター

こう書いていくと、いかに「場をみる」ことと、「場をみえる化」することの両立が難しいかがわかってもらえると思う。もちろん、訓練や経験豊富なファシリテーターは二役を同時に手がけることができる。

しかし、なぜここまで「何を見ておかねばならないか」と書いてきたかというと、多くの「見える化」を担う人は、「自分たちが場に集う人たちの貴重な時間を背負っている」という責任感に向き合ってほしいのと「全員で一歩二歩前進することや、違うフェーズにステップアップすることが自分たちの存在意義である」と思っておいてほしいのだ。

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この理解が浅いファシリテーターや見える化を手がける人が多いため、同じ階層をぐるぐる巡っている議論がいかに多いか。もちろん自身もそのパターンに陥ったことがないわけではないため、自戒の意味も込めて、最後に強調しておきたい。

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そういった責任も背負うため、できうるならば、「場をみる」と「場を見える化」は、信頼できる人と組んでやっていく方が、このありがちな失敗を限りなく少なくするためにも必要だろう。

そこで次回は、セッションのように組む場合、どのような点に気をつけていけばいいかを語っていきたい。



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