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リモートでやる音声収録(録音)の、まじめな話

 今回は少し専門的な話です。 

「"レコーディング"、"音声収録"の為のスタジオは密閉空間で、大抵狭く換気もあまり良い状態では無いことから、可能な限りスタジオに滞在する人数を減らしたい。」

 「スタジオに入るのは、"演者"と"エンジニア"だけにして、残りのスタッフは全てリモートで!」

 こんな話は、今回の新型コロナの自粛期間から、様々な方法でトライされていると思いますが、私の会社"株式会社ブレインストーム"でも、4月頭、まさに自粛期間中に、歌のレコーディングを、リモートによるディレクションで行いました。

 リモートレコーディング(リモート収録)をどうやって?

 非常に簡単な話で、リモートでディレクションして頂く方には、Youtubeの配信の仕組みをそのまま使って、スタジオの様子を聞いて頂きます。
  Youtubeで配信できる音声フォーマットは、44.1khz(48khz)のmp3かAACで、最高320Kbps(ステレオ)の音質になります。
 これがどの位の音質なのかと言うと、みなさんがよく使っている、iTunesの音楽フォーマットが、高音質でも(44.1khz)256Kbps(ステレオ)なので、それよりも良い音質ということになります。

 弱点はYoutubeは遅延が大きくて、低遅延モードでも2-3秒は遅れます。

 ただメリットは大きくて、聞くだけではなくて、スタジオの様子もカメラで写すことができます。
 そして、聞いて頂いたフィードバックは、SkypeやZoomなどを使って別に行う事で解決しています。以下に仕組みを図式した物を用意しました。

リモートレコーディング.001

 Youtubeを使いますので、用意するのはブラウザで大丈夫です。また、配信は、限定公開で行いますので、URLを知らなければ、まず関係無い人に見られることもありません。
 また、収録後は動画を消してしまいます。(あるいは非公開に)

 仕組みは非常に簡単なのですが、実際やってみると意外なところに盲点があったりします。

 実は大きな問題点は、リモートで聞く側の環境

 リモートでディレクションする側の人の、音を聞く環境が良くないという問題があります。
 スタジオであれば、高価なスピーカーでモニターするので、細かなニュアンスもちゃんと聞き取れますが、パソコンのスピーカーだったり、また安価なヘッドフォンなどでは、聞こえているようで、実はあまりよく聞こえていなかったりするのです。

 ですから、リモートで音を聞く人には、ある一定以上のクオリティのヘッドフォンを、用意して頂く必要があります。
 一般的なスタジオのモニター用のヘッドフォン(SONY CD900T)は15,000円前後はしますので、同等のクオリティのヘッドフォンは用意したいです。

 ちなみに私が最近愛用しているのは、こちら。実はこれコストパフォーマンスの良いヘッドフォンなのですが、一般的な感覚からすると高いですよね。

 演者も自宅からのリモートレコーディングは非現実的?

  ゲームの音声の収録や、ナレーションの様なものであれば、同じ仕組みを使って、演者の自宅からリモートで録音することも可能です。

リモートレコーディング.001

 実際これも実験してみました。確かに音声のクオリティはまず問題はないのですが、演者側にマイクのセッティングなどを、その都度細かく指示する必要があります。

 また、収録する環境にも大きく左右されます。収録場所の環境音(ノイズ)はもちろん大きな問題になりますが、部屋の小さな反響や空気感みたいな物の違いも録音できてしまうので、複数の演者がそれぞれ違った場所で録音してしまうと、バラツキが出てしまいます。

 それよりなにより大きな問題は、コミュニケーションによるロスが、非常に大きくなります。演者もエンジニアもディレクターも違う場所にいることになるので、小さなコミュニケーションのロスでも、沢山の時間を使ってしまうことになりかねません。

 定期的に録音する様な、ナレーションやラジオ番組であれば、リモートレコーディングも、慣れでカバーできると思いますが、一度きりの録音であればやはりスタジオで収録、リモートでディレクションぐらいにする方が無難かもしれません。

 ちなみに、私がやっているラジオ番組は3月から、3人のパーソナリティーがそれぞれ自宅からリモートで収録しています。SKYPEの会話を録音しています。

ラジバタ2VR 毎週木曜日23時より、エフエム西東京で放送中。

 当然SKYPEでの録音は音質を犠牲にしますが、なによりコミュニケーションのし易さの方が、この場合優先されます。

 やはりリモートレコーディングは臨機応変に考えた方がよいかもしれません。

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