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西伊豆、雪見の鮑 食旅カメラ
何年ぶりかに伊豆をたずねた。
最近は仕事でも家族旅行でも山側が多かったもので、海っぺりへ出かけるのはひさしぶりであった。
早朝に東京を出て、伊豆高原から南の河津をまわり、西伊豆へ抜けて東京へ帰る。
細かい移動もあり、総走行距離は700kmほど。
それを2日でこなす。
車の運転だけではない。天気をうかがいながら崖を見下ろしたり、撮影ポイントを探して棚田を登ったり下ったり。旅のカメラマンは立派な日雇い肉体労働者である。
総括、まだまだ若いもんには負けないということ。
西伊豆に烏帽子山という、海から立ち上がる小さな山がある。
山腹には雪見浅間神社があり、鳥居をくぐって階段を上ると、拝殿、その上には本殿がひっそりと鎮座する(拝殿はほったて小屋でありがたみがない)。
本殿付近から見下ろす穏やかな湾の眺めがこの旅随一の景色であった。
あいにくの天気で本殿から上への悪路は断念したが、山頂からは本殿の瓦屋根を手前に海が広がり、運がよければその先には富士山がそびえるという。
くやしい。
近くには雪見温泉。
温泉街からすこし離れたところに宿をとった。
ご時世を考慮し、雇い主である出版社は外食を避けて宿めしの手配をしてくれた。
民宿の夕食とは、それこそ何年ぶりであろうか。
せっかくの伊豆である。基本プランの刺身、天ぷらだけではいささか寂しい。
昼前に宿に電話し、追加で金目鯛の煮付けとアワビの踊り焼きを整えてほしいとお願いをしたところ、明るい声の女将さんが快く承知してくれた。
1泊2食付の基本プランが9000円くらい。キンメとアワビが5200円。
さて、アワビの踊なぞ、いつぶりだろうか。
地酒をあおり、こぶし大のアワビが焼ける様を眺めながら、思うた。
「家でもできるんちゃうか」
帰京の週末。
近所のスーパーに出向くと、韓国産の鮑が並んでいた。
韓国産とはいえくるくると元気に動いている。どうやって生きてここまでたどり着いたのか。となりにいる国産より色艶が良く見える。
2ケで780円。
買いである。
宿では陶板だったが、フライパンにバターを溶いた。
身を下にして焼きつけ、ひっくり返して蓋をし、蒸し焼きに。
最後に醤油をかるくまわす。
存外にうまい。驚いた。