かしまし娘「お笑いわらべ唄」
歌江:最近の小学生いうのは、昔の子供と随分変わりましたね
花江:どこが変わった言うんですか?
歌江:この前、電車の中で、小学生が本を読んでましたの
花江:ほんほん
歌江:シャレで返事する人がありますか!
照枝:小学生が本を読んでてどうなったの?
歌江:童話でも読んでるのかなと本を見たら、なんと週刊誌なのよ
花江:小学生が電車の中で週刊誌をですか?
歌江:そうなのよ。どんな記事を読んでるのかなと見ると、衝撃の告白いう記事を面白そうに、一生懸命読んでるのよ
花江:衝撃の告白て、芸能人が自分の過去をさらけ出してる、あれですか?
歌江:そう、その週刊誌には「私は結婚前、20人の男性に惚れられていました」てな記事が載ってたわね
花江:結婚前に20人の男性に惚れられてたてかいな
歌江:はい
花江:誰がそんなこと告白してるねん?
歌江:私、私
花江:嘘つきなさい!歌江姉ちゃんが、男性に惚れられたりするわけが無いでしょう。今の婿さんかて、人命救助や思てあんたと結婚した言うてたし
歌江:人命救助てなんやのん!
照枝:衝撃の告白・・・その1。実は、私は今までに5回も整形手術を受けたことあるんです・・・・かしまし娘、正司花江
花江:・・・そんなこと言うたら、私のこの美貌は、整形手術のおかげやとわかってしまうやないの
照枝:本人がどう言おうと、手術が成功したか失敗したかは(花江の顔を指さして)これを見てもらえばわかることです
歌江:完全に失敗したね
花江:あんたまでなんやのん!
照枝:衝撃の告白・・・その2。私は本当は男なんです・・・かしまし娘、正司歌江
歌江:誰が男やねんな!
照枝:あんたの普段の行動を見ていたら、そう思われても仕方がない
歌江:普段の行動を見てたら、あんたの方が男みたいやないの
照枝:でも私は子供を産みました。男なら子供は産みません。ところがまだあんたらは、子供どころか、卵も産んでません
歌江:卵も産んでませんて!・・・人を孔雀みたいに言いな!
照枝:例えが良すぎるのやないか!?
歌江:しかし私は、小学生が電車の中で週刊誌を読んでたのには驚きましたね
照枝:私らの小学生の頃には考えられんことやね
花江:私らが読んでた本なんか、殆ど童話でしたね
歌江:そう、イソップ物語とか
照枝:ピノキオとか
花江:それから赤ずきんちゃんね
照枝:柴頭巾ちゃんね
花江:そんなんあるかいな!
歌江:この頃の子供は、童話なんか読みたがりもせんし、聞きたがりもしませんわ
照枝:そうなんですよ、うちの子かて、童話をお話ししたげましょ言うても、全然喜ばないんですわ、どうなってんのやろ
歌江:あんたとこの子て、幾つや?
照枝:去年の暮れ産まれたの
歌江:去年の暮れ産まれた子が童話なんか聞きたがるわけが無いでしょう!・・・地方の子供なんかは、昔は囲炉裏を囲んで、お婆さんの語る民話を聞くことを、一番の楽しみにしていたんですよ
照枝:お婆さんの語る民話かいな
歌江:これ、照男に花子や。これから、ばっちゃんが面白い話をしてやっから、よく聞いてるんだど
照枝:うん、婆ちゃん
花江:ありがとう、婆ちゃん
歌江:したら、話をやるべえか
照枝:うん、婆ちゃん
花江:やって、婆ちゃん
照枝:頼むね、婆ちゃん
花江:婆ちゃん
歌江:・・・あんたら、ちょっと婆ちゃんが多すぎひんか
花江:何の抵抗も無く、スムーズに言えるもんですから
照枝:早くお話ししてよ、婆ちゃん
歌江:今から何百年も昔の話んだけど、この村の庄屋さんに、それはめんこい娘っ子がおったそうな
照枝:ホンヤーホンヤー!
歌江:なんやのんそれは!
照枝:秋田県らへん北部では、はい、そうですかいうのを、ホンヤーホンヤーて言うんです
歌江:ほんまかいな!
花江:お話の続きをしてよ、婆ちゃん
歌江:そのめんこい娘っ子のいる庄屋さんの家に、ある月、旅人が泊まっただべ
照枝:パンヤーパンヤー!
歌江:・・・
花江:山形県らへん南部では、はい、そうですかいうのを、パンヤーパンヤーて言うんです
歌江:その旅人は、娘っ子に一目惚れしただとよ
照枝:チンガーボーキャン!新潟県らへん東部の方言です
歌江:・・・そして旅人は、娘っ子に思いを打ち明けて、結婚を申し込んだとよ
花江:バンチャン、カンバン、ビーチャンバン!岩手県シンチュウ郡の方言です
歌江:進駐軍て!
花江:お話の続き頼むよ、婆ちゃん
歌江:娘っ子は、それをあっさり断っただと
照枝:チャンハン、ビンチャン、オーマエ、ノールスネ!
歌江:ええ加減にしなさい。オーマエ、ノールスネてなんやのん!?
照枝:福島県チュウリュウ郡の方言です
歌江:進駐軍の後は、駐留軍かいな!
花江:続き頼むよ、婆ちゃん
歌江:娘っ子に断られた旅人は、竜神池へ身を投げたんだ
花江:ファーオ!バチラバラチン!
照枝:タベチ!ブチバチ!ハバラチバ!
歌江:あんたら、インディアンか!
照枝:オウ、コノ、ハクジンノオバン、コロスアルネ
歌江:誰が白人のオバンやねんな!
花江:婆ちゃん、旅人が竜神池へ身を投げた後、どうなったの?
歌江:旅人は大きな竜に身を変えて、娘っ子を池の中へさらってしもうたそうな。かわえそーなことしたもんだわ
花江:最初東北弁で話をしてた思たのに、今は名古屋弁となってしもてるやないの!
歌江:しかし、考えてみたら、童話と同じように、この頃の子供は、童謡もあまり歌いませんね
照枝:歌謡曲とか、コマーシャルソングばかりうとてますわ
歌江:道端でわらべ唄なんかうとてるのを、聞いたことありませんね
は
花江:わらべ唄と言いますと?
歌江:例えば、通りゃんせね
花江:通りゃんせね、♪通りゃんせ 通りゃんせ♪
照枝:♪ここはどこの細道じゃ♪
花江:♪天神様の細道じゃ♪
照枝:♪ちょっと通してくりゃしゃんせ♪
花江:♪御用の無いもの通しゃせぬ♪
照枝:(歌江を指さして)♪こいつの70のお祝いにお札をもらいに参ります♪
歌江:一体、何のお札もらうの
照枝:安産や
花江:わらべ唄には、他にどんなのがありますか?
歌江:例えばこれもわらべ唄ですね(顔を歌に合わせて変えながら)♪あがり目 さがり目 くるっとまわって ねこの目♪(手を猫の格好をする)
花江:うまいうまい!猫になってる猫になってる!
歌江:(手を戻す)
花江:あっタヌキ
歌江:誰がタヌキやねんな!
花江:この他に、どんなんがあります?
歌江:そうやね、これもわらべ唄ですよ ♪ひらいた ひらいた れんげの花がひらいた ひらいたと思ったら いつのまにかつぼんだ♪
照枝:♪つぼんだ つぼんだ なんの花がつぼんだ パチンコのチューリップがつぼんだ つぼんだと思ったら いつのまにか 負けた♪
花江:しょうもない歌うたいな!
歌江:数え歌なんかも、わらべ唄の一種になりますね
花江:数え歌といいますと?
歌江:一つ二つを数えていくやつよ
花江:ああ、あれもわらべ唄ですか
歌江:わらべ唄ですよ
花江:♪一つや二つや三つや四つ 十にも足りない幼子が 賽の河原で石を積む♪
照枝:チーン!
歌江:それはご詠歌やないの!
花江:ようお参りを。香典を頂戴いたします
歌江:なんで香典なんか出さんならんねん!
照枝:♪夕焼け小焼け あした天気になあれ♪ 言うて履き物をほるのん、これわらべ唄違いますか?
歌江:もちろん、それもわらべ唄ですよ
照枝:私、今でもこれようやってるねん
花江:履き物を上に放ってか?
照枝:そう、表が出たら晴れ、裏が出たら雨やねん
花江:ほな、横になったら?
照枝:くもりやないの
花江:ほな、縦になったら?
照枝:晴れ時々曇りのち雨、海上では多少風波が出るでしょう
花江:えらい詳しいとこまで出るのやね
照枝:これ、ものすごく的中率いいのよ
歌江:何パーセントぐらい的中するのん?
照枝:90パーセントは堅いね
花江:90パーセントも!
照枝:はい
歌江:それやったら、明日どうしても天気なって欲しい時なんか、履き物をほって裏が出たらがっかりするでしょう
照枝:いいえ、全然がっかりしませんよ
歌江:どうしてがっかりせえへんのよ?
照枝:裏が出たら、表が出るまで、何回でも掘りなおすもん
歌江:何回でも掘りなおすて!
照枝:さあそれでは、今日これからの天気を占ってみましょう
花江:こんなとこで靴ほるんですか?
照枝:ほるねや
歌江:照枝ちゃん、やめときなさい
照枝:ほっといてください!・・・♪夕焼け小焼け あした天気に♪(足を蹴り上げる恰好をして)・・・やめとこ
歌江・花江:(同時によろける)
歌江:ええ加減にしときなさいよ
照枝:なんや、怒ってるのん?
歌江:当たり前やないの。あとで覚えときなさいよ
照枝:わかりました。今日これからの天気予報がわかりました
花江:どうや言うのん?
照枝:もうじき、メスの雷が落ちます
花江:・・・雷に性別なんかあるのんか!
歌江:なんといっても、かごめかごめなんか、わらべ唄の代表的なものやろね
照枝:かごめかごめ、これはようやりました。去年まで
歌江:あんたアホと違うか!
花江:どう?昔を思い出して三人で、ここでかごめかごめをやってみやへんか?
歌江:面白いわね
照枝:ええトシして恰好の悪い。嫌やで恰好の悪い(と言いながら、歌江と花江の手を繋ぎに来る)いややで恥ずかしい
花江:そんなこと言いながら、あんたが一番、積極的に手を繋ぎに来てやりたがってるやないか!
歌江:ほな私が真ん中に座って顔を隠す役するわ
照枝:それがええ、あんたは顔を隠した方がええ
歌江:どういう意味やねんな!
(歌江がしゃがみこんで、その周りを照枝と花江が手を繋いで回りだす)
花江:♪かごめかごめ かごの中のとりは♪
照枝:あー恥ずかし
花江:♪いついつでやる♪
照枝:私らがアホの三姉妹だ
花江:♪夜明けの晩に♪
照枝:私ら三人合わせて、147才ですわ
花江:♪鶴と亀がすべった♪
照枝:これ30過ぎた妹
花江:うるさいな!あんたも歌わんかいな
照枝:わかってるわいな
花江・照枝:♪後ろの正面 だあれ♪
(照枝が後ろに立つ)
歌江:誰やろなあ、ちょっと声を聴かせてくれへんか?
照枝:私です
歌江:わかった!上田吉二郎さん!
照枝:なんでやねんな!
(照枝と花江が入れ替わる)
花江:この声ですよ
歌江:なんや、融紅鸞さんやないの
花江:あんさんわかれなはれ・・・なんでやねんな!これが融紅鸞さんですか
歌江:わかった、花江ちゃん
(花江と照枝が入れ替わって)
照枝:いいえ
歌江:ほな、照枝ちゃん
(照枝と花江が入れ替わって)
花江:いいえ
歌江:・・・吉永小百合さん
花江・照枝:当たった!
歌江:そんなアホな!
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