夢路いとし・喜味こいし「グッドタイミング」
いとし:人生27年間生きて来て、つくづく思うんですがね
こいし:・・・なんやて?
いとし:人生27年間生きて来て・・・あっ!・・・人生72年間生きて来て、つくづく思うんですがね
こいし:えらい違いじゃ!
いとし:何事においても、タイミングというのは、良くないといかんね
こいし:そらタイミングが良いに越したことはないね
いとし:それにつけても、今日ここへ来る時の、私のタイミングの悪さいうのは酷かったね
こいし:と言うと?
いとし:家の用事をしていて、ふと気が付いて時計を見たら、マイクロバスの集合時間にもう間に合わないんですよ
こいし:集合の時間になっても君は来んやろ。他の芸人さんと心配しながら言ってたんや
いとし:何を?
こいし:「いとっさんボケてしもて、集合場所の公園前と間違えて、霊園前へ行ってそのまま埋葬されたんやろか」言うて
いとし:アホな!・・・ここへ来るのに遅れたらえらいこっちゃと思たから、息子に車で直接送ってもらおとしたんですけど、車、修理に出したとこや言うねん
こいし:タイミング悪いなあ
いとし:それならと息子に「ストーブを借りてくれ」言いまして
こいし:そんな時にストーブ借りて何するねん
いとし:ストーブやない。えーと、こたつでもなし・・・ほら、暖房するのであるやろ。昔よう火鉢に入れた、火のついたアレ
こいし:練炭かい?
いとし:「レンタカーを借りてくれ」言いまして
こいし:・・・レンタカーかい!
いとし:それに乗せてもろて、直接ここまで来ることにしたんですよ
こいし:それなら、なんで電話連絡してくれへんねん。こっちは心配して待ってたんやぞ
いとし:レンタカーの中から、携帯電話をかけたんですよ、そやけど、いくらボタン押してもかからへんねや
こいし:なんでや?
いとし:よう見たら、携帯電話と間違えてテレビのリモコン持ってきてるねん
こいし:そらかからんわい!・・・我々のマイクロバスは、しょうがないから、出発して、高速道路に乗って明石を目指したけどな
いとし:私も大阪と神戸の間の西宮から、高速道路に乗りまして
こいし:神戸方面に回って、明石を目指したんやな?
いとし:よう見たら、大阪方面を目指して走ってるねん
こいし:反対や!
いとし:息子にUターンしてくれ言うても、してくれまへんねん
こいし:当たり前や!高速道路でUターンしたら、即事故や!
いとし:なんとか次の出口で出て、明石を目指したんですけど、明石に着いた時にはギリギリの時間や
こいし:淡路島に早よ渡らないかんがな
いとし:そう思て、すぐに明石大橋へ向かったんですが、行ってみたら、明石大橋まだ開通してへんねや
こいし:明石大橋の開通は4月や!そんな事ぐらい、息子は知らんのかい
いとし:フェリー乗り場の方へ急いだんですけど、着いたら今、フェリーは出たとこや
こいし:タイミングが悪すぎるやないか!
いとし:こうなったら、明石海峡を泳いで渡らないかん思たけど、水が冷めとうて泳げへん
こいし:冷となかっても、明石海峡なんか泳いで渡れるわけないやろ!
いとし:次のフェリーに乗ってここまで来たんですけど、ギリギリですよ
こいし:けど、出番になんとか間に合うて良かったがな
いとし:けど、出番前に足元を見てびっくりしたね
こいし:なんで?
いとし:履いてきた靴、右足が黒で、左足が茶色いねん
こいし:別々の靴履いてきたんかい!
いとし:スタッフの履いてた靴を借りて、やっと出れました
こいし:情けないな!それにしてもタイミングの悪い男やねえ
いとし:本来の私いうのは、何事においても、若い時からタイミングは良い方なんですけどね
こいし:若い時から言うと?
いとし:今の嫁はんと結婚したんも、私のタイミングの良さからですよ
こいし:嫁はんとの結婚が?
いとし:嫁はんが言うには、「あなたがプロポーズしてくれた時は、偶然私に彼氏がいない時だったから、プロポーズを受けたのよ」や。・・・プロポーズしたタイミングが良かったわけですよ
こいし:「偶然私に彼氏がいなかった時だったから」て、あの汚い嫁はんに偶然は無いやろ。彼氏がいなかったのは、産まれてから君に会うまでずっとのはずやで
いとし:・・・とにかく、私のプロポーズを受けてもらえたのは、タイミングが良かったんや!
こいし:タイミングは良かったけど、君、運は悪かったなあ
いとし:・・・それどういうことや!?言うとくけど、私に長男が産まれた時も、つくづくタイミングの良さを感じたね
こいし:長男が産まれた時と言うと?
いとし:実はうちの嫁はんは、私と二人で乗っていた汽車の中で産気づいてるんですよ
こいし:汽車の中で産気づいたて、そらえらいこっちゃないか
いとし:ところがタイミング良く、その汽車にお医者さんが乗り合わせてくれましてね
こいし:ホー、けど、赤ちゃんが産まれるとなると、産湯に使う湯がいるで
いとし:ところがタイミング良く、その汽車は蒸気機関車やったから、窯の中に湯はたっぷりあるがな
こいし:湯はたっぷりあっても、湯を入れるタライがいるやろ、タライが
いとし:ところがタイミング良く、その列車に、タライの行商人が乗り合わせてくれまして
こいし:赤ちゃんを包むタオルはどうしたんや、タオルは!?
いとし:タイミング良く、タオル屋さんが乗り合わせてくれまして
こいし:ほんまかい!それにしてもあまりにもタイミング良すぎるやないか。まるで産院そのものやがな
いとし:それもタイミングが良かったんですよ
こいし:それもと言うと?
いとし:乗っていた汽車は、山陰本線やったんです
こいし:出来過ぎじゃ!
いとし:もし私が、若い時からタイミングが悪かったら、私はもうこの世にはいないはずですよ
こいし:と言うと?
いとし:戦争でやられてたはずですよ
こいし:そう言えば君は、20歳の時に戦争に召集されてたね
いとし:ガクト出陣でして
こいし:嘘つけ!学徒出陣言うたら、大学生の兵隊のことやねん。君が20歳の時は、大学なんか行かんと漫才をやっとったたないか
いとし:漫才の楽屋から徒歩で出陣したから、楽徒出陣やねん!
こいし:・・・で、タイミングが悪かったら、やられてたはず言うのは?
いとし:戦場で財布を落として、その財布を拾おうとして、体を前へかがめた瞬間、背中を敵の弾丸がピューっとかすめて行きまして
こいし:すごいタイミングの良さやないか
いとし:戦争が終わって、山登りして、後ろから熊に襲われたことがあったんですけどね
こいし:後ろから熊に襲われた
いとし:その時、私は落とした財布を拾おうとして、体を前へかがめたんです
こいし:また財布落としたんかい!?
いとし:目標を失った熊は、私の上をかすめて、そのまま谷底へと落ちて行きました
こいし:なんというタイミングの良さというか、運の強さというか・・・
いとし:海で泳いでた時には、後ろからサメに襲われたことがありまして
こいし:今度はサメかい!
いとし:体をかがめて、財布を拾おうとした時に、目標を失ったサメは私の上をかすめて飛び越えて行きました
こいし:・・・あのな、普通財布なんか持って泳ぐか?
いとし:それがその時だけは、偶然タイミング良く、財布を持ってたんですよ
こいし:その上を飛び越えたサメは?
いとし:そのまま谷底へドボーン
こいし:嘘つけ!海に谷底があるか!サメはまた戻ってきて襲いよるわ
いとし:命がどうこう言う問題では無いんですか、私は、タイミング良く流れて来た歌に、ピンチを救われた経験も多いんですよ
こいし:歌にピンチを救われたてかいな、例えばどういうピンチを?
いとし:街の中でバッタリと三人連れの男性に出逢ったことがあるんですけど、その三人連れというのは、仕事でお世話になってる人やねん
こいし:仕事でお世話になってる三人連れに、町の中で逢うたわけか
いとし:挨拶をせないかんのやけど、三人の名前が出て来んのや
こいし:あるある、そういう時
いとし:どないしょと思てる時に、近くの民謡教室から、タイミング良く、「三階節」が聴こえてきまして
こいし:三階節
いとし:♪ 米山さんから雲が出た ♪
こいし:♪ 米山さんから雲が出た ♪
いとし:この歌で、その三人が、米山さんと、雲賀さんと、出田さんやいうのを思い出したがな
こいし:凄いタイミングやないか!
いとし:こういうことてあるんですよ
こいし:そう言えば、今日家を出る時嫁はんに、「あんた、今日は淡路島のどこで仕事があるの?」と聞かれてね
いとし:東浦やないか
こいし:ところが、東までは出たんやけど、浦を思い出せず。「えーっと、東なにやったかなあ」と困ってる所へ、タイミング良く、山本リンダの歌がどっかから聴こえて来まして
いとし:山本リンダのどんな歌が?
こいし:♪ ウラダ ウラダ ウラウラダ ♪・・・この歌のおかげで、東浦やいうのを思い出しました
いとし:♪ ウソダ ウソダ ウソウソダ ♪
こいし:・・・なんで君のが本当で、私のだけが嘘やねん!
いとし:民謡教室の民謡には、嫁はんに買い物を頼まれて、頼まれた品物が何やったか忘れた時にも、助けてもらったことがあるんですよ
こいし:買い物を頼まれて、品物の名前を忘れた時に?
いとし:何を頼まれたやったかなあ、と思い出そうとしてる時に、民謡教室から「串本節」が聴こえて来ましてね
こいし:串本節
いとし:♪ ここは串本 ♪
こいし:♪ ここは串本 ♪
いとし:まず最初のこの部分で、頼まれてた品物の一つ、ココアがあったなあと思い出しました
こいし:ココア
いとし:それと、おでん用の串を頼まれてたんモ思い出しました
こいし:凄いタイミングやなあ
いとし:♪ 向いは大島 仲を取り持つ ♪
こいし:♪ 向いは大島 仲を取り持つ ♪
いとし:この部分で「あっそうや、向かえの大島さんと、中尾さんの分も一緒に、鳥のモツを買うのを頼まれてたんや」と思い出しました
こいし:取り持つで鳥のモツかい!
いとし:♪ アラ ヨイショ ヨーイショ ヨイショ ヨーイショ ♪
こいし:♪ アラ ヨイショ ヨーイショ ヨイショ ヨーイショ ♪
いとし:この部分で、米を10キロ買うのを思い出しまして
こいし:米を10キロ?
いとし:米を10キロ持と思たら、ヨイショヨイショと担がないかんやろ
こいし:なるほど、嫁はんに頼まれた買い物はそれだけやったんか?
いとし:いや、まだあったんです。それは串本節の囃子ことばの部分で思い出しました
こいし:串本節の囃子ことばは、ヨイショヨイショ違うんか?
いとし:あと、あるでしょ、君は民謡に強いから知ってるやろ
こいし:ふんふん・・・♪ ハァ オッチャーヤーレー ♪
いとし:お茶の葉を頼まれてたんを思い出しました
こいし:もうええわ!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?