見出し画像

【最強の写真学習】これで基礎を固める  第3章.デザイン思考で写真を見る

おはようございます。
アラスカの中島たかしです。

今日も、今回も、米国で写真学習しつづけている僕が、欧米の情報をベースに、日本語で解説をしてゆきます。

10回にわたって行っているのは、海外の写真参考書 Creative Nature & Outdoor Photography という最強の写真教科書についての解説です。

この第3章でも、著者ブレンダの本書のゴール「撮影の前に感動のワケを考え、それを伝える術を学び、いま読んでいるあなたがそれを習慣にすること」を見据えて、

☆いま学んでいる基礎的要素は、表現にどうつながるのか

ということを、【表現ポイント】という形式で、記事の中でハッキリわかるようにしていきます。


【まえおき】
今日は前置きは短くいきます。

良い写真にはデザインとしてのまとまりがあります。その要素としては、線、形、フォーム、パターン、テクスチャー、そして「遠近の深み」だと彼女は言っています。これらは

「対象を対象として捉えるのではなく、デザインとしてみる」という今日のタイトルに繋がります。

つまり、今日の一文は、

【今日の結論】

普段見ている撮影対象を5つの要素に分解し、デザイン思考で考えてみて、それをどう表現につなげるのかを知る。そして実践で常に気にしておく」ということになります。

お話する内容は、写真の中で扱うデザインとしての要素を分解したものになります。
かなり淡々とした目次ですが、まずはこの冷徹なる、ものの見方(way of see)を身につけ、表現力を獲得しましょう。シンプルにまとめて、線、形、パターン、テクスチャーの4つになります。

blog 目次用の枠第三章

【記事ジャンプ用】

これらを今日から意識!ですね。
さっそく「線」からいきます。

今日の内容1
【デザインとしてのLine(線)】

著者のブレンダは、線というのは極論、2つだけだといっています。それは、直線と曲線(カーブ)です。では、次の写真を見てみましょう。

画像2

セスナから空撮したアラスカの秋の原野

この写真の中のラインの要素はどこにあると思いますか?
そうですね。川です。写真を細かく見ようと思うと、どうしても写真の下(あるいは上)から、川に沿って目線が動いてしまいませんか?


対して、直線の効果は、鑑賞者の目を特定のエリアへ、より直接的に強く誘導するという効果があります。どういうことでしょうか。次の写真を見てみましょう。

画像3

先程の川よりも、より早く奥の山の方へ目が向きませんか?それは、手前の流木が、目線を奥へ押しやるように誘導しているからです。


速さでいうと、直線に対して曲線は、より穏やかに、時間的にもゆっくり目線を誘導するため、落ち着いたムードを作りやすいということになります。


また、デザインの中で「線」は写真のその線が太いほど、ほかのデザイン要素に比べて主張が強くなるよ、ということになります。

こぼれ話ですが、僕自身けっこう頻繁に失敗する例をひとつ挙げれば、無造作に入り込んでくる草のラインがあります。風景写真のなかの一本の草、スゲのような細く長い植物になると、主張が強いんです。また、その場で気づきにくく、後で邪魔になっていることに気が付きます。この「植物の茎の線」は撮影時、僕はとくに気にしています。

補足ですが、きちんと見ると、実は自然のなかに直線的要素はそれほど多くないんですよね。直線は、人工的なものを感じさせる要素と言えるかと思います。

ひとつ、下の写真は、世界遺産グレイシャーベイ国立公園での壮大な風景ですが、失敗点はどこにあると思いますか?

画像4

大自然の中にある人工的な要素として、氷河の前の船は良いと思いますが、空の飛行機雲のラインが出てしまっているのですね・・・。残念。


さて、直線を、水平線、垂直線、斜線の3つにわけて見ていきましょう。

<水平線>
直線は力強いと言いながら、矛盾するようですが、この水平線は平静を主張します。この線が邪魔されることなく、写真の中にスッとまっすぐに入っていると、写真全体に「その場所の幅、広がり」を強く表現することになります。

【表現ポイント】
☆水平線は、気持ちを落ち着かせるという表現効果が出やすい。


<垂直の線>
水平線に比べて、縦のラインというのは、力強くなります。
究極的には自然のなかに垂直の直線というのはないんですが、そのように見えるものとして、木々、滝、さきほど僕が上げた、植物の茎、などがあり、それらは絵柄にインパクトを与えます。

これは人工建造物である、灯台、ランドマーク・タワー、橋の主塔などを風景写真のなかにいれても同様ですね。
垂直線のもうひとつの効果としては、写真にStasis(均衡状態)をもたらす効果がある。といっています。つまり、これは直線の特徴ですね。秩序だった印象が出やすいという意味です。

【表現ポイント】
☆垂直線は、力強さ、秩序あるものという表現効果が出やすい。


<斜線>
ななめの線というのは、水平線や垂直線よりも力強さが加わります。さらに目線の誘導については、よりスピード感が出て、見る人の目を動かす効果が出るので、動きある写真として捉えられやすいですね。そのため、斜めの線というのは、うまく用いるととても良い写真ができる、可能性を秘めたデザイン要素、といえます。斜線は僕もかなり意識しています。

【表現ポイント】
☆斜線は、目線をスピーディに動かし、ダイナミックで力強い表現効果が出やすい。


最後に曲線です。
自然の中では、直線よりも圧倒的に曲線を見つけることのほうが多いです。

<曲線>
著者のブレンダは、カーブ(曲線)とはgentlnessとsensuality だと言います。つまり、やさしさ・おだやかさ・体に感じる官能的なここちよさです。

また、線全体の特徴である目線の誘導は、おだやかに、しかもゆっくりと確実に見る人を運ぶ、といいます。

画像5

【表現ポイント】
☆曲線は、急ぎ足でなく、ゆっくりと見る人をいざなう。優しさやなめらかさなどの表現効果が出せる。


今日の内容2
【デザインとしてのShape(形)】

つぎは、写真の中のデザインとして、もっとも基盤となる、対象の「形」をみていきましょう。

形には、シンボルとしての表現が内包されています。○△□などのかたちは、それだけで僕らの感じる感覚に、ある一定の「感情」をあたえます。

たとえば四角は、「安定感」です。自然風景の中では数少ない形ですが、岩の形で見つけることはあります。

画像6

↑前景に四角い岩があることで、写真に安定感が出る

三角は一般的に、力強さと耐えるイメージだと言われます。高い山なんかでは、頂上が尖っていればいるほど、力強い雄々しさといいますか、猛々しい表情が出ますよね。ラインが斜めに入るということにも、もちろん関係しています。

画像7

この三角は、つぶれて鈍角の低い三角形になればなるほど、安定感が強まるという特徴もあります。

円や球という形は、それだけで全体性がでます。

画像8

このブルーベリーの写真は、実も水滴も丸く、じっさいはとても小さな部分を切り取って入るものの、それぞれの丸のなかだけに、ちいさな世界があるような印象が出ます。

そもそも自然界の中で全体性のある球体といえば、太陽、地球、月ですよね。そこにはその丸の中だけで全体を覆う世界があるのですよね。

「円環」という言葉にもあるように、古く、人は「円」に全体性を見出してきたわけです。


【表現ポイント】
☆ 四角は安定感、三角は忍耐と力強さ、丸は全体性を表現する効果がある。

また、見る方向によって、この形をかえることができるので、効果の大小を視点を変えて調節できる。

ということも覚えておくと良いと思います。

ここまできて、外に出てすぐに写真を撮ってみたくなったあなたは、正解です!

いったん読むのをやめて、いろいろカメラアングルを変えて、対象の「形」を意識して数パターン撮ってきてみてください

※本書にはFormという区分けもあるのですが、日本語の概念に、ShapeとFormを明確に区分けする見方がないので、ここはスキップします。(そこまで重要ではない内容ということもあります)

一文だけ書いてみると、Formとは、もののしぐさをともなった形のことです。Shapeである◯や△に比べて、Formは、たとえば「握りつぶされた空き缶のよじれた感じ」のような個性ある表情の形ということですね。


今日の内容3
【デザインとしてのPattern(パターン)】

パターンは、リズミカルに繰り返す形の連続、と言い換えても良いかもしれません。たとえば、群生するワタスゲ、花、それから生い茂る森なども、そこだけを切り取ればパターンです。

画像9

パターンは両刃のやいばと言えそうです。パターンだけでは、じつは写真は単調になり、パッと見で気持ちよく見えても、じつは長続きする深みのある写真を、パターンだけを使って表現するのは至難の業です。つまり、薄っぺらい写真になりやすいということです。

そして、

画像10

北極圏ブルックス山脈への眺望

ここではワタスゲが比較的ランダムなパターンを作ったデザインです。
このようにパターンデザインを、風景全体の一部として持ってくると、それなりに目を楽しませてくれるものに仕上がります。


【表現ポイント】
☆パターンは、絶え間なく繰り返す印象を促して目を楽しませる効果がある。しかし、それだけでは飽きてしまう。パターンのなかに、そのパターンを崩すなにかポイントを入れると、そのパターンを効果的に、またリズムといった音楽的な印象を写真で表現することができる。


今日の内容4
【デザインとしてのTexture(テクスチャー)】

今日の最後は、テクスチャーです。
テクスチャーといわれてピンとくる方は、すでに広告業界やデザインの世界でやってきた方かもしれません。

僕がはじめて広告の制作に携わったとき、この言葉を聞いてもまったくしっくり来ませんでした。その時は、しらべてもダメでした。感覚として入って来なかったのです。

では、感覚として皆さんに入ってくるように伝えます。

ご近所、あるいは過去の記憶から、河口付近の平らな川岸を歩いていることを想像してください。そして、足元に転がっている丸い石(下流の石はころころ転がって、大抵は丸石になっていますよね)その石を拾い上げ、指でなぞってください。そのなめらかな表面にときおり抵抗するザラつき、それがテクスチャーです。

ひとことで、「ものの表面にある質感」と言われても、あまりわからないですよね。しかし皆さんの疑似感覚を先程の石の手触りで刺激することで、感じましたよね。その触覚を伴う絵柄の部分があるとテクスチャーの豊かな写真となります

長くなりましたが、このテクスチャーを、写真を見て感じさせる。これが写真をよりリアルに写しとる表現になります。


このテクスチャーを写し撮るには、ある程度のコントラストが必要になります。明暗が強くないと、もの表面の凹凸がでないのですね。
また著者のブレンダは、大雑把なテクスチャーは強い光、細かいテクスチャーには拡散した光が、この効果を最大限に引き出すとも言っています。たとえば、日照りが続いた田んぼは、ひび割れてきます。この割れた感じは、直射日光のような強い光が相性がよく、逆に鳥取砂丘にあるような細かい砂のザラつきなどは、曇りの日の拡散された光の斜光をつかうと、より印象を強めることができる、と言えると思います。

テクスチャーは、写真を楽しめる要素としては、僕は一番よいものだと思います。ペットなんかでも、その毛の手触りやサラサラ感が出せると、より対象を好きになるかもしれませんよね。
ぜひ、試してみてください。

【表現ポイント】
☆テクスチャーは、うまく写真に取り入れると、見る人がその場にいる、「臨場感」「生」を演出することができる。


今日の内容5
【本書から学んだ僕の作例5】

画像11

こちらの写真は氷河の裂け目に入っていったときに撮影したものです。今日学んだ内容でいうと、まず写真の右側の氷河の裂け目のラインを縦でも横でもなく、「あえて斜めに」して氷の単調さを出さないようにしています。

また、写真の左側ではより氷のテクスチャー(質感)が出るよう、氷河のとくに透き通って中が見えるきれいな場所を選んで、より接近して撮影(接写)しています。

今日学んだ内容4つをすべて一つの写真に統合するのは、大変難しいですが、これらの要素をより、多く効果的にいれることで、「良い写真」「見て楽しめる写真」になってゆきます。


以上になります。

この記事をここまで読み進めてくれた方は、おそらく写真の作品づくりを考えられている方だと思います。

これからも英語圏の教材をベースに、ハイクオリティな写真を制作するための内容を少しづつ記事にしていく予定です。

ぜひコメント・ご指摘くだされば幸いです!

                            中島たかし
                                                   Nakashima Photography 公式ホームページ


いいなと思ったら応援しよう!