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【写真におけるカラーマネジメント】    第4章:ProPhotoRGBで編集するワケ

このマガジン記事は【中上級者向けの内容】になります。
※実践内容は次章の第5章以降です。本章のトピックを既にご存知の方はそちらへ。

今日の記事は、日本のサイトで述べられていることが稀な、重要事項です。

おはようございます。
アラスカの中島たかしでございます。

いまはカリフォルニアのModesto というところにいます。奥さんの友人の引っ越しの手伝いです… アメリカ人ってよく引っ越しますね、ホント、、、。

では今日の内容行きましょう。

写真におけるカラーマネジメント。
その第4章では、なぜ、より広い色空間であるProPhotoRGBを使う必要があるのかを、「じっくりと深堀りして」解説してゆきます!

いかにディテール(細部)にこだわるか。真の個性はここからしか生まれない!これは現代を打ち破るヒントとも言える。‥と僕は感じています。それはさておき。

今回も、米国プロフェッショナルの常識をつうじて写真学習をしつづけている僕が、欧米の情報をベースに、日本語で解説してゆきますね。

本日のメイン情報ソース:
Why ProPhoto RGB as Working Color Space? by Robert Pollai
*今日示す図は、僕自身でつくるわけにいかず、↑ロバートさんに直接メールで許可を得て使用しています。

では、いってみましょう。

今日の内容1:
結論から、ProPhotoRGBを使うメリット3点

2022年現在、一般的に写真の画像編集で用いられる色空間にはsRGB、AdobeRGB、ProPhotoRGBの3つがあります。ならべた順に広い色域となっている色空間です。

まずは、sRGBやAdobeRGBではなく、ProPhotoRGB(16-bit)で作業することでしか得られないメリットを3つ、以下にあげてから解説を始めてゆきましょう。

1.ハイレベルのモニターで、AdobeRGBよりも一部広い色を表現できる。
2.ハイレベルのプリンターで、AdobeRGBよりも豊かな色を表現できる。
3.階調がより豊かになるので、見た感じが現実世界に近いアウトプットができる。

ちなみに、僕が掲げる「プリントによる自然の翻訳」というコンセプトは、もはやこのProPhotoRGBの色深度(color depth)と色域(gamut)なしでは実現できないものとなっています。

さて、上のメリットは結論からだったので、しっくりこないかもしれませんね。次に図を見ながら理解を進めていきましょう。

今日の内容2:
編集中は隠れているProPhotoRGBのポテンシャル

【モニター】色空間の広さを比較 by Robert Pollai 

”Only ProPhoto RGB fully covers all colors the monitor can display.”

by Robert Pollai

上の英文を訳すと、
「ProPhotoRGBだけが、モニターが表示できる色をすべてカバーできる。」となり、これを言い換えれば、
「Adobe RGBでは表せない色をProPhotoRGBは表現できる」
つまり、「ProPhotoRGBのほうがより豊かな表現ができる」
となるわけですね。

ちなみに、グラフィックを扱う専用のモニター(EIZO ColorEdge, など)でAdobeRGBカバー率99%などというのをよく目にします。

図を見てお気づきの方もおられるでしょう。ひとつ、ここで問題となるのは、ProPhotoRGBは、モニターの色域よりも広いということです。つまり、モニターで編集中は見えていない豊かな色を、データとしては保持している。

たとえば、米国プロが標準で使用しているAdobe Lightroom CCのソフトウェアをつかって写真をデジタル現像しているとしましょう。

そのとき、Lightroomの内部では、カメラが写したRAW画像を、Mellisa RGB(≒ProPhotoRGB)に翻訳して読み込んでいるのです。それがモニターに画像として映されて、使用者はあるいみ仮のカタログとして画像を編集するわけですが、この編集中、皆さんはモニターでは見えない色をも扱っていることになります。

それは、いま最高級のモニターであってもAdobeRGBの表示率ほぼ100%を誇るにとどまり、まだコダックの作ったProPhotoRGBは表示できません。

*8ビットと10ビットモニターによる見え方の違いは、別のコラムなどで解説してみたいと思います。ここでは色空間についてのみ言及してゆきます。

今日の内容3:
プリンターで再現されるProPhotoRGBのチカラ

【プリンター】色空間の広さを比較 by Robert Pollai 

そして、EpsonはインクのテクノロジーをUltraCrome K3インクから向上し、最新のSC-PX1VではUltraCrome K3Xインク(米国ではUltraChrome Pro10 インク)の技術でさらなる豊かさを実現しました。*

*EPSONのインクシリーズはプリンターの型番により、UltraChrome K3, Pro, HD, HDR, HDX, Pro12のようにさまざまな種類が用いられており、一概に説明ができなくなっていますが、UltraCrome K3 からUltraCrome K3X(日本のみ) では特に新たなインクであるVioletも加わったことで、黒(漆黒)と青の表現が豊かになったのは事実です。

米国のある記事で分析されているものでは、UltraCrome Pro10(日本:UltraCrome K3X)になって8〜10%もの色域が向上されたとあります。これでもまだProPhotoRGBの色域内におさまっているのですが、「AdobeRGBの色域よりも広い」色が印刷できるようになっている。ここが肝になります。


今日の内容4:
広ければ良いというわけではない。
ファイン・アート紙の場合

ここまでProPhotoRGBをつかったほうが再現豊かになるというお話をしていきましたが、ファインアート紙を使用する場合、じつはAdobeRGBで編集・出力をしても良いことがあります。もっというと、より狭い色域であるsRGBでの編集・出力で全く問題ない、あるいは、違いが一切わからない、という場合もあります。

注*
ここの解説は厳密に言えば、お使いのプリンターのインクテクノロジー(EpsonならUltraCromeK3Xインクなど)での出力で表現できる色域を比較する必要があります。ここでは、僕が使用しているEPSON UlturaChrome Pro10インク(日本ではK3Xインク)の各印刷用紙のプロファイルを読み込んで、図に色域として表示しています。つまり、用紙は同じでも使われるインクによって以下の図の色域は代わるということにご注意。しかしコンセプトは変わらないので、それだけ掴んでいただければとおもいます。

以下の図を見てみましょう。

AdobeRGB(白骨格の部分)とアワガミファクトリー用紙の色域

上図は、印刷用紙の色域をAdobeRGBの色域がほぼ全て覆っているという場合の図です。(もし微妙な左上の黄色にこだわるなら別ですが)この場合、ProPhotoRGBで編集する理由はありません。和紙は基本的にもっとも色域が狭いファインアート用紙と言えると思います。

もうひとつ見ておきましょう。

AdobeRGB(白骨格の部分)とEPSON Hot Press Naturalの色域

上図の着色部は、エプソンの最高級ファインアート紙の色域です。このHot Press Naturalはとても優雅な風合いのある紙で僕のお気に入りのひとつですが、この紙の色域の98%はAdobeRGBでカバーできており、ProPhotoRGBで編集、EPSON SC-PX1Vで印刷したとしても、違いがわかりません。(正直、機械だけがわかる、ごく僅かなレベルです。)

つまりプリントする用紙の色域をAdobeRGBが、すっぽり覆っている場合、より広いProPhotoRGBを使う理由はなくなります

ProPhotoRGBでの編集と広い色域をもつプロセレクションや業界基準のプリンターを必要とするのは、基本的に彩度の高い表現ができるEPSONのクリスピアや、最大のD-Maxを誇るUltra Premium Photopaper Luster で印刷する場合など、光沢&半光沢の用紙でそのチカラを発揮すると言えるのですね。

最後にその半光沢紙の色域とを比べてみましょう

AdobeRGB(白骨格の部分)とEPSON Ultra Premium Photo Paper Lusterの色域

上図は下(黒側)から見上げた図ですが、米国写真プロフェッショナルの間で定評のある、EPSON Ultra Premium Photo Paper Lusterでは、特に暗い部分での彩度表現において、AdobeRGBの色域をおおきく突き抜けているわけです。

ここはAdobeRGBで編集している場合に表現できない場合となり、そのまま編集・出力すると、用紙のポテンシャルを活かしきれない制限された印刷になるわけですね。

以上です。


以下に今日の、長い長い(笑)記事をまとめておきましょう。

今日の内容5:
【まとめ】なぜProPhotoRGBを使うのか

なぜProPhotoRGBの色空間を使うのか、それは以下の一文に集約されます。

最終の出力において、AdobeRGBではカバーしきれない写真の色というものがあり、それをProPhotoRGBで編集して出力することによって表現できる部分がある。

だからProPhotoRGBをつかう。ということになります。

その細部にこだわるかどうか、それは読者の皆さんの判断ですが、こういうことがいま2022年現在、最先端のこととして扱われているということをを知っておくだけでも、十分な利があると僕は考えています。

次章以降、いままでの長い理屈を実践していくパートになります。

芸術は、感性、感性を表現するテクニック、それを支えるテクノロジーの総和で表現されるものであるとすれば、写真も同様で、このテクノロジーの部分を使いこなす(テクニック)ことが必要になるのですね。

以上になります。
次回はいよいよ実践編に突入します!

この【カラーマネジメント】シリーズでは、色をどのように扱えば最高品質のプリント作品がつくれるか、ということに焦点を当てて解説を進めてゆきます 。

この記事をここまで読み進めてくれた方は、いいもの作ろうと目論んでおられる方にちがいない!でなきゃ、こんな奥まで追求しないですよね。でも大切です。書いている僕としては、かなり少ない方々を対象としているのですが、そういう方々と、日本の写真文化をリードしていきたい!という想いもあります。

これからも英語圏の教材をベースに、ハイクオリティな写真を制作するための内容を少しづつ記事にしていく予定です。

ぜひコメント・ご指摘くだされば幸いです!

                            中島たかし
              Nakashima Photography 公式ホームページ

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