【最強の写真学習】これで基礎を固める 第4章.写真に遠近感(深み)を出す
おはようございます。
アラスカの中島たかしです。
今日も、今回も、米国で写真学習しつづけている僕が、欧米の情報をベースに、日本語で解説をしてゆきます。
10回にわたって行っているのは、海外の写真参考書 Creative Nature & Outdoor Photography という最強の写真教科書についての解説です。
この第4章でも、著者ブレンダの本書のゴール「撮影の前に感動のワケを考え、それを伝える術を学び、いま読んでいるあなたがそれを習慣にすること」を見据えて、、
☆いま学んでいる基礎的要素は、表現にどうつながるのか
ということを、【表現ポイント】という形式で、記事の中でハッキリわかるようにしていきます。
【まえおき】
この4章で著者のブレンダがはじめに述べていることは、
「2章3章と光やデザインの要素について学んだこと、それらを写真に取り入れることができても、パースペクティブ(遠近)や構図、レンズのことがきちんとわかっていなければ、良いイメージはつくれない」
と言っています。
力のある良い写真を作るためのゴールは、「構図とパースペクティブ(遠近などの深み)」です。
ここでも、「はじめは考えながらだけど、習慣にすることができれば、このテクニックは、直感でできるようになるよ」と心強いことを言ってくれています。
では、さっそく、、、
【今日の結論】
「広角レンズで、対象に近づく! するとダイナミックな写真ができる」
ということになります。今日はまわりを削ぎ落とし、かなりシンプルにしました。
お話する内容は、写真の中で扱う遠近感(深み)の要素を分解したものになります。
【記事ジャンプ用】
今日は項目が5つありますね。
では1つ目から行きましょう。
今日の内容1
【遠近感を加える】
まず、遠近感とはということですが、写真の中の一つのモノともう一つのモノとの関係でうまれる距離感です。
写真を見たほうが早いので紹介します。
写真とは2Dの世界、つまり現実のように本当の奥行きがあるわけではなく、紙で見ようがモニターで見ようが、面で見ますよね。なので、じっさいのところ、遠近感とは「幻想、あるいは錯覚である」ということを覚えておいてください。
そしてこのイリュージョンで、見る目を楽しませる(=ドラマティックな写真をつくる)わけです。土門拳のようなリアリズムを根底に据えて写真を撮っている方には、イリュージョンだなんて言うと叱られるかも知れませんが、事実、写真そのものは幻想です。撮影者だけが、その場でリアルを見ているのです。
話が逸れましたが、もう一つの特徴として、
レンズの長さを(たとえば16mmから35mmに)変えても、フレームのなかの写っている絵は変わるけれど、遠近は変わらないということです。
唯一この、対象の遠近の関係を変えられるのは、自分が位置を変えたときだけ、ということを覚えておきましょう。これは自分が動き回っていろんな角度から撮ることの大切さを教えてくれるものです。
外に出て実験をやってみましょう。
35mmくらいの広角レンズがあるとわかりやすいので、持っていきましょう。そして、公園でもどこでも、たとえば友人や知人に、ベンチに座ってもらい、その人と背景の写真を一枚撮ります。
つぎに、もうこれ以上近づけない、というくらいにその人とベンチに真っ直ぐに近づき、同じレンズで同様に人と背景を撮ります。
※このとき絞りをなるべく絞り、ボケは出ないように全てにフォーカスの合うパンフォーカスを使いましょう。そして、背景にわかりやすい木だとか街灯の柱などがあると良いです。
2枚を撮り比べると明らかです。
この実験、意識してやったことのない人は、一度はやるべきです。頭の中で、それは当たり前でしょう、とわかっても、撮った2枚の写真を比べないかぎり、その人と背景の関係が、どの様に推移したのかがわかりません。
また、繰り返すことでその使ったレンズの特性が体得でき、直感で、どこに立てばどう写るのかがわかるようになってきます。
【表現ポイント】
遠近について、
☆対象に近づくことで、その対象が「被写体」であることを主張できる。
☆背景との距離を強調できる。
著者ブレンダの撮影哲学からいくと、撮影の順序としては、
1.面白い対象を見つけたぞ!
2.さて、このどこが面白いのだろう?(Most important! 最重要!)
3.では、それをどう強調するべきか(How can I bring that out?)
4.その一つの表現としての、遠近感である。
ということですね。
ブレンダ哲学は、あくまでも、何度でも、根本に立ち返ります。
What do you want to say with this photograph?
その写真で何が言いたいの?
練習のときは除外して、本番撮影のときは、「その写真に遠近は必要か」をまず考える、ということを意識していきましょう。
今日の内容2
【フォーカスでボケを出す】
このパートは確認程度ですので、短いです。
先程の実験でいえば、公園のベンチに座った知人に、F2.8とか、絞りを開放した状態で、その人に近づき、撮影してみましょう。
人にピントが合い、背景がぼける。このボケの強さで対象と背景の距離感を出す、という方法もあります。
基本的に絞りを絞れば、ボケ味は強く出るので、対象と背景の距離感も強まりますね。
【表現ポイント】
☆被写体とその背景とを、焦点をハッキリ決めることで背景にボケ味を出し、写真に距離感をくわえることができる。
今日の内容3
【違う視点から撮影する】
ここは、写真撮影のひとつの醍醐味でもあるパートです。
皆さんは、いままで近所にいるリスや猫の視点で、世界を眺めてみたことはありますか?はたまた、頭上をうるさく飛び回るカラスや、大空を優雅に飛ぶクマタカからの世界、、、。
僕は街なかで地面を這いつくばるのは、恥ずかしくてできないので、アラスカの野山で自由に、土まみれになって、地を這います(笑
運がよいときは小型のセスナに乗ったり、高い山の崖にのぼって高度800mから外界を見下ろします。
そこまでしなくとも、いつもと違う視点、つまりフツーに立ったときの高さや角度ではないところから、対象を見てみましょう。かならず新しい発見があります!
このパート、著者ブレンダは1ページしか割いていませんが、非常に重要であると言っています。
【表現ポイント】
☆別アングルから世界を見て撮影することで、それだけで写真にインパクトを与える。ヤン・アルテュス・ベルトランという人は、鳥の目を持つ人という異名を与えられたほど、上からの俯瞰撮影に特化した人でした。
今日の内容4
【レンズは世界をどう見るのか】
では、レンズの違いから見えてくる写真の違いを比べてみましょう。
まずは、広角レンズです。(表現域:10-35mm)
前景:草原と木々 中景:湖 背景:雪山
今日の内容の中核に当たりますので、ひとつブレンダのお話を加えておきます。
西洋の伝統である西洋絵画では、画角(カメラがとらえる四角の中)に前景、中景、背景の3つを配置します。そして、この広角レンズで世界を見たとき、この前景に、Point of Interest を置くのです。(上の写真では背景においています。)
つまり、前景に自分の被写体となるものを置き、中景でその被写体の周囲の環境を表現し、背景にその日の様子を、空や星や鬱蒼と茂る森などをつかって表現する、この3段構成をすると、広角レンズがいきてきます。
注:すべてにピントがあわせられない状況というのは存在します。その場合は、中景以外の、前景か背景のどちらに自分のフォーカスを置くのか、を選ぶ必要があります。しかし、先の著者ブレンダの撮影哲学からすると、その選択は簡単ですね?
次に標準レンズです。(表現域:35-100mm)
英語では、ノーマルレンズといいます。つまらないですね。つまりノーマルな見え方をする、という人間の視点からの言い方です。逆に捉えれば、このノーマルレンズでこそ、表現者のスキル、力量がためされるとお考えください。
よほど良いものを見れなければ、”ノーマルな”写真になります。ちなみにカルティエ・ブレッソンは、すべての写真が標準である50mmですね。でもノーマルな写真は何一つ発表していないでしょう。
遠近を出すという意味では、たたかう土俵が違うレンズだといえます。
最後に望遠レンズ(表現域:100-600mm以上)
違いは見てわかりますよね。望遠でも風景写真は撮れますが、ボケを使わないと、遠近感を出すのはむずかしいです。
今日のテーマである遠近感を表現するために、明らかに広角レンズが最適なわけです。逆に望遠は、このパースペクティブを殺します。「圧縮効果」とも言いますね。
しかし、補足になりますが、望遠レンズで遠近感を出せないかというと、そういうわけではないです。先程のボケを使った方法や、空気遠近法という技法を使うと、長玉でも遠近感をだせます。
【表現ポイント】
☆広角レンズは、人の目とは違う。前景・中景・背景の3段構成をすることで、遠近感がより豊かに表現できる。
加えると、タテ位置構図はそれがより力強く出やすいですよ!やってみてください。
今日の内容5
【DOF(被写界深度)とは】
ポイントは3つです。
まず、「ピントの合う幅」の話なんだということを念頭に置いてください。
2つめ、前後均等の幅でピントが合うわけではないということです。ここは以下に挙げる図を見たほうがわかりやすでしょう。
3つめ、カメラ・前景・被写体・背景の順で、距離をよく考える必要があるということです。
φのようなマークがカメラの位置です。赤いピンが被写体。そして、ピントが合う幅というのは、被写体の前後が均等幅ではなく、この場合だと前が3分の1、後ろが約3分の2、という位置関係になるということですね。
このイメージが頭に入っていると、撮影現場で役に立ちます(上級者の方は、これを体得されています)ので、まったく意識していなかった方も、ぜひ覚えてゆっくり撮影に取り入れていってください。
風景写真(Landscape)のジャンルで言えば、すべてにピントが合った状態で写しとられるのが典型的、といえますので、この被写界深度のなかに対象すべてを収めるわけですね。
ワードメモ
※すべてにピントが合った状態のことをパンフォーカス(hyper-focal distance)といいます。
ここは重要なので、ひとつ例をあげて解説しましょう。文字だけではイメージできにくい方は、是非とも外で撮影しながら試してみてください。
①35mmのレンズを使い、絞りはF8にしたとします。場所はどこでも構いません。
②このカメラ設定でいくと、立っている位置から約5m離れた距離にピントを合わせたとき、そこよりも後ろ全てにピントが合う、パンフォーカスになります。
③では、前景はどうでしょう。5mの位置にピントを合わせましたが、その半分の2.5m手前、つまりあなたのカメラからも同じく2.5m離れた位置、それよりもうしろにピントが合うのです。
つまり、この35mm、F8で撮影すると、あなたから5m離れた位置にピントを合わせれば、カメラから2.5mの距離以降、すべてにピントが合うパンフォーカスを得られるわけです。
よろしいでしょうか。
※よくある質問ですが、この例で、4mの位置にピントを合わせると、どうなるかというと、自分の立ち位置から2m以降奥にピントが合いますが、いちばん奥の背景には、ピントが合わなくなります。
この被写界深度の計算を簡単にできるサイトをご紹介しておきます。
https://keisan.casio.jp/exec/system/1378344145
この中の許容錯乱円経というところは、0.03で固定してください。
【表現ポイント】
☆被写界深度をコントロールすることで、写真の中の主張を自分で操作できる。つまり、あなたが撮った写真のなかの「あなたが伝えたいポイント」と、それを「見た人が感じるポイント」が結ばれやすくなる。
以上になります。
いつも読んでくれている方、ありがとうございます。この記事をここまで読み進めてくれた方は、おそらく写真の作品づくりを真剣に考えられている方だと思います。
ブレンダさんの本書Creative Nature & Outdoor Photographyも半ばに入りました。全10章のなかの次回は第5章です。
これからも英語圏の教材をベースに、ハイクオリティな写真を制作するための内容を少しづつ記事にしていく予定です。
ぜひコメント・ご指摘くだされば幸いです!