美容室の開業 お願いですから、シャンプー台は借金で買ってください。
美容機材はリースにすれば?リースではなく買い取りにして分割払いも出来ますよ?こんな提案を受けたことはありませんか?こんな提案が行われる理由は、創業融資でお金が借りられる額に限界があるということと、美容室の内装工事費用が高額である傾向があるためです。そのしわ寄せが、美容機材の予算に影響が出てしまい、それでも欲しいシャンプー台を購入するためにリースなのか、分割なのか、という提案が行われる訳です。
〇美容機材をリース、買い取りの分割はダメなのか?
ダメではありません。美容機材にしても、エアコンにしても、購入するための手段としては大切な選択肢です。リースにしても、分割払いにしても、その契約をするには審査を受けなければならず、審査を通過した人だけがリス契約や、分割払い(延払)契約を選ぶことが出来ます。なぜ、審査が必要なのか?その理由は、リースにしても、分割払いにしても長い期間で支払い続ける必要があるため、支払い能力があるかどうかを確認するためです。
〇借入ではなく、リース、分割払いにする理由は?
創業融資で借りられる上限金額は決まっています。公庫と民間銀行との協調融資にしても同様です。借りられる上限金額が決まっているという前提で、自己資金と融資の合計の範囲で、内装工事、美容機材、不動産契約費用、材料費用、広告、運転資金をまかなう必要があります。この中で、エアコンや美容機材だけが、創業融資以外のリースや分割払いの選択肢があるのです。自己資金と融資のお金を目いっぱい美容機材以外の投資に使ってしまっても、美容機材はリースか、分割払いで大丈夫!という考えが生まれてしまうのです。
〇どうしてやめた方がいいのか?
分かりやすく言えば、融資で借りたお金で購入するよりも、リースや分割支払いで購入するよりも、支払い総額が大きくなるからです。同じ商品を購入するのに、支払額が明らかに多額になるためです。
手元にお金がないなら仕方ないでしょ?と言えばそれまでですが、どれくらいの違いがあるのか、は知っておくべきでしょう。
リースや分割払いで支払いということは、実質的な借入と同じですので、金利手数料がかかります。金利手数料はリース会社が設定する訳ですが、例えば2%の分割金利手数料が発生するとすれば、それは創業融資で2%の金利で借りたお金で購入すれば、実質的に同じになるわけです。でも、実は、リースと創業融資の金利が同じであっても、実は、リースや分割支払いの方がトータルの支払額は多くなります。
〇実は消費税が2回計算されるのです。
リースや分割支払いの分割金利手数料が2%の場合と、創業融資の金利2%でお金を借りて購入する場合でも、リースや分割支払いの方がトータルの支払額が大きくなる理由は、消費税が2回加算されるためです。
どういうことはと言えば、例えば200万円の美容機材を購入するとします。200万円の美容機材をメーカーから購入すると、200万円に10%の消費税の20万円を加えた220万円が総支払額となります。借りたお金で支払い場合は、この220万円を支払うことになりますが、リースや分割支払いで購入する場合は、220万円に分割金利手数料を加えて、総支払額を計算します。5年間で5%の分割金利手数料の場合はザックリ30万円。総合計は250万円となります。
問題はここからです。250万円に対してリースか、分割設定を行いますから、再び消費税が加算されます。250万円に対する消費税は25万円です。最終的には275万円の支払額となります。
2回消費税が計算されていることを分かってリース、分割支払いを契約するなら良いですが、正直、このことを知らずに契約している人がたくさんいます。
〇おわりに
創業融資では足りないから仕方ない。そもそもこの考え方が間違っています。足りないなら、買わない、があるべき姿です。開業した後の毎月の固定費が少ない方が経営は有利になります。リースや分割支払いにするということは、支払いを後回しにするということです。開業することを目標にするのではなく、開業した後の経営を安定させることを目標にすることが「必ず生存する美容室をつくる」ためにはとても重要な考え方です。
美容室専門税理士 中嶋 政雄
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