美容室の開業 友人から「出資しようか?」と言われたら?
美容室の独立をしようとした時に、金融機関以外でお金を借りる人も稀にいます。一番多いのは、身内からの借入です。身内以外では、勤務していたお店のオーナーからの「お金を貸そうか?」と言われることもあります。中には、お前がお店を出すなら「出資しようか?」と言われる人も聞いたことがあります。こういった申し出を受けて開業しても大丈夫なのか?これまでの体験談からお話させていただきます。
〇お金を借りるくらいなら、お金を出してあげる。
ご両親からお金を借りて美容室の開業をする方もいます。1000万円近くのお金をご両親から借りたという人もいます。創業に必要なお金の全額ではないにしても、ご両親から数百万を借りて、金融機関からもお金を借りて開業する人も少なくありません。
身内からの資金調達で注意が必要なのは「贈与」と判断されないようにすることです。両親から1000万円のお金を受け取った場合、これが贈与であったすれば275万円の贈与税の支払いが必要となります。
贈与とは、「あげる」という意思表示と、「もらう」という意思表示があって成立します。もらう側が「借りる」という認識であれば贈与は成立しません。ただ、「借りた」つもりでも、「借りた」お金であることが証明できなければ、「贈与」と認定される可能性もあるため注意が必要です。両親から借りたお金であれば、必ず「金銭消費貸借契約書」を作成し、決められた返済を実行してください。
〇オーナーや友人から「お金貸そうか?」と言われた場合
お金を借りる事自体が悪い訳ではありませんが、その人の目的は何か?が重要です。もし、融資申請をした後で融資が難しかった、どうしたら良いか?という相談を受けた後から言われた場合は、高い確率でやめた方が良いです。
お金が借りられない状況が分かったうえでお金を貸してくれる訳ですから本当の親切心か、何か目的があっての話です。本当の親切心だとしても、金融機関から融資が難しいと判断された人に大金を貸そうとする人は余程の事情のある方でしょう。
美容室の開業をしようとしている人は、まだまだ経営を知りません。数パーセントの金利の違いが、どれだけ大きな影響を与えるのか。数年の返済年数の違いが、どれだけ毎月の支払に影響を与えるのか。良く分からない状況の中で重大な契約を結んでしまえば後で後悔をすることになるかもしれません。
融資が難しい状況でなくとも、以前に勤務先のオーナーから融資の提案を受ける事もあります。この場合は金利設定や返済期間も比較的に適切なことが多いです。ただし、やはり何かの目的があります。ほとんどの場合はこれまでの雇用者、従業員という立場では無くなるものの、従来通りの力関係を維持しようとする意図が働いていることが多いです。このあたりは、経営者同士の付き合いとして、今後の関係性を踏まえて判断すればそれほど問題となることもないかもしれません。
〇「出資しようか?」と言われた場合
もし、個人事業主として美容室を開業しようとしていた場合、そのことを分かって「出資しようか?」と声をかけてきた場合は、それは「お金を貸そうか?」と言っているのと同じです。ひょっとして分からずに提案しているかもしれません。
法人で美容室を開業する場合には、出資を受けたお金は「資本金」となります。「資本金」というのは、借入金と違って返済義務はありません。利益が出た時に「配当金」という形で出資者に還元されることになります。法人であれば「出資」を受けて美容室の開業資金とすることは出来ますが、個人事業主の場合は、そのお金はあくまでも「借入」となりますので、先程お伝えした「お金を貸そうか?」と言われた場合と同じ扱いとなります。
〇どんな目的なのかが重要です。
どんな目的でお金を貸そうか?出資しようか?と言っているのか。その意図がとても重要です。融資が受けられなくて困っている時に出てくる話は、だいたい怪しいと思ってください。もちろん、本当に親切でお金を貸してくれる人もいるでしょう。でも、金融機関でお金が借りられないから仕方がないと言って、返済期間が短い、金利が高い、といった不利な条件でお金を借りて開業することは絶対にやめてください。その時点で間違った開業をしようとしていると気づいてください。
お店を作ることがゴールではなく、お店を開業した後に生存し、成長し続けることが目的です。金融機関から融資が難しいと判断され場合、それは開業は今ではない、と言われていると受け止め、もう一度、融資が受けられるようになるまで準備をすることが大切です。
美容室専門税理士 中嶋 政雄
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