美容室の開業 公庫は民業圧迫してはいけないのです。
民間銀行の立場もあるので、公庫としては融資出来ません。こんな理由で融資を断られた方がいます。
日本政策金融公庫は国の金融機関です。創業融資に関しては、民間銀行よりも積極的な融資を実施してくれますが、公庫ができない融資というのがあるのです。
〇民業圧迫はタブー
日本政策金融公庫は国の金融機関であり、民間金融機関の業務を圧迫するようなことは出来ません。いわゆる民業圧迫というやつです。
どんな場合に該当するのかと言えば、民間銀行がお金を貸そうとしている人に、公庫が、ウチの融資の方がお得ですよ！ウチで借りませんか？と積極的に有利な条件を提示して融資客を奪い取るような行為は絶対にしてはいけないことになっています。さすがに、こんな露骨な行為は無いわけですが、間接的にでも、民間銀行の融資業務を圧迫することもできないことになっています。
例えば、創業をしようとしている人が、最初は民間銀行でお金を借るようとしていました。でも、日本政策金融公庫と比較してみたら、どうやら公庫の方が金利が低いし、メリットがありそう。民間銀行で借りる手続きをしていたけど、やっぱり公庫から借りることにして公庫に相談した。実は、こんな場合でも融資に影響が出てきます。まだ、民間銀行で融資手続きはしていないのに？と思うかもしれませんが、民間銀行がどこまで手続きをしているかで決まってきます。
〇民業圧迫と判断されたパターン
美容室の独立を考えている人が、最初に相談に言った銀行がありました。どこでお金を良いのか分からず、とりあえず、預金口座を持っている銀行に相談に活きました。これぐらいの計画を考えている、とザックリとした計画を伝え、そもそも自分はお金が借りられるのか？という相談をしていました。銀行としては、はじめて融資を受ける人に、その銀行が単独でお金を貸すことはなく、保証協会という保証会社からの保証が付いた場合に、銀行として融資する、という流れになります。そのため、融資が出来るのかどうかを判断するためにも、まずは銀行は保証協会に申請をすることになります。もし、この段階で、事業計画の全体の資金、例えば1300万円の融資の審査を出していたとするとします。そして、保証協会から1300万円の仮の審査が通過したと連絡を受け、銀行としては、最大1300万円の融資が可能であることの確認を取りました。もちろん、この銀行から1300万円の融資を受けることは審査が通過していますので可能なのですが、美容組合に加入する場合に、設備資金は日本政策金融公庫で借りる方が金利が低いことを知り、後から、日本政策金融公庫で1000万円の融資申請をすることになりました。日本政策金融公庫から1000万円のお金を借りて、民間銀行から300万円のお金を借りる方向にしたのです。
〇どうしてダメになったのか？
実は保証協会の1300万円の仮審査の情報というのは、公庫側にも連絡が入ります。つまり、もともと民間銀行で1300万円の融資を借りようとして申込をしていることが分かってしまっているのです。そうなると、公庫としては、確かに美容組合に加入することで金利の低い融資をすることは出来ますが、それを実行することで、民間銀行から仕事を奪うこととなります。これが民業圧迫だと民間銀行から指摘されることを嫌うのです。結果として、公庫からは、民間銀行で借りる予定でしたよね？と民間銀行で融資を受けることを提案され、公庫での融資が難しい状況となりました。
〇民間銀行と公庫の上手な付き合い方
今回のケースでは、民間銀行と公庫との協調融資が上手なお金の借り方となります。民間銀行に最初に行くのも良いですが、あくまでも仮審査で申請するのは1300万円ではなく、この中の民間銀行で借りようとしている金額だけにすべきです。その残額を公庫から借りることを最初の段階から民間銀行に伝えておくことが重要です。
もしくは、最初に公庫に相談に行く、必要な資金の総額から、公庫から借りる部分を引いた残りを民間金融機関で協調融資でお金を借りる、というのが上手な借り方となります。協調融資であれば、美容室の開業に必要な資金を、民間銀行と公庫の２つでリスクを分散できるし、それぞれの金融機関で融資決定がでれば、他も融資決定が出しやすくなるという実情があり、それぞれ単独でお金を借りるよりも、融資自体のハードルは下がります。
〇おわりに
もし、民間銀行にいって、仮の審査を大きな金額で申請した後で、やっぱり公庫の方が得だから公庫で借りることにしよう。民間銀行で話を進めていたことは、きっと分からないから黙っておこう、というのが一番やってはいけないお金の借り方です。思わぬ事態になりかねないので、民間銀行、公庫との融資の申請状況は丁寧に伝えながら話を進めることがとても大切です。
美容室専門税理士 中嶋 政雄
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