美容室の開業 一番後悔している開業支援
私が一番後悔している開業支援があります。16年ほど前のことです。税理士として登録したばかりの頃、紹介目当てで入会した経営者の勉強会で知り合った方から声を掛けられました。
知り合いの人が岩盤浴のお店を作るから、お金を借りるための手続きの代行をしてもらえますか？融資が成功したら、その後の税理士契約もお願いしたいので。私としては税理士の仕事が貰えるという嬉しさと、岩盤浴という店舗ビジネスが流行り始めており、流行りのお店の開業支援に関われるだけでも人に自慢したくなる嬉しさがあったと記憶しています。
私自身は岩盤浴は知っていましたが、岩盤浴というビジネスがどうしたら成立するのは知りませんでした。もっと言えば、そんなことは知る必要はない、と思っていました。それをするのは経営者の仕事であり、私に求められている役割は必要な資金を借入できるようにすること。それが自分に依頼された役割であり、自分が税理士としてすべき仕事だと思っていました。
事業計画を作りましたが、それはお金を借りるための計画書であって、ハッキリ言って綺麗な数字を並べただけ。右肩上がりに売上、利益が上がるような素晴らしい計画でした。
この方が岩盤浴の開業に向けて、どんな準備をしてきたのか？どんな経験があるのか？などは詳しく聞く必要もないと考えていました。当然、知っているだろうし、自信があるから開業するのであって、岩盤浴のことを知らない自分がそんなことを聞くことが失礼だとも思っていました。
後で分かったことですが、今回の話を紹介してくた経営者に方も、岩盤浴を起業する予定だったお二人も、岩盤浴の経営経験がある人はだれもいませんでした。
岩盤浴というビジネスは人気があり、これなら上手く行くはず。受付に人がいれば、後は勝手にお客がやってくれるから経営もだれでもできる、と考えていたようでした。
公庫と民間銀行から2000万円のお金を借りることに成功しました。創業予定のご夫婦もとても喜んでくれました。
しかし、問題はこの後です。
繁華街から１０分ほどのビルの２階。人気の岩盤浴のお店をオープンすればお客は来ると思っていました。綺麗なチラシを作ればお客は来ると思っていた。綺麗な内装設備を作ればお客は来ると思っていた。
すぐに経営は行き詰りました。
今考えれば、立地は最悪で、岩盤浴であることすら分からないお洒落な外観。訳の分からない投資額の大きさ。融資を受けたお金はすべて内装工事、機材に使われた。潰れて当然。
今なら、絶対に開業はさせない。でも、当時は、それは私が考えることではなく、その責任は経営者にある。私は融資でお金を引っ張ることとが仕事。申し訳ないですが、そこまでは責任は取れませんと本気で考えていました。
実は、そのご夫婦とは、今でもお付き合いがあります。その後、どんな状況であったのかもよく知っています。ずいぶん前となりますが、正直に話しをしました。
「申し訳ありませんでした」
あの時、ご夫婦から、「お願いします」と言われた時、その言葉には、「何も分からないので、お願いします」という意味が込められていました。奥様とご主人は、この後、２０００万円という莫大な金額の借金を、普通に働きながら返済をし続けてきました。あんなことをしていなければ、金銭的には、もっと豊かな生活をしていたのでしょう。そのご夫婦はちょうど、下の子が生まれたばかり。どれだけ大変な思いをしたのか。
そんな過去があっても、今でもお付き合いをしていただけることに本当に感謝しています。
開業支援は、創業融資が通ればいい、お金が借りれればいい。経営が上手く行くかどうかは、その事業主の責任であって、税理士が負うべき責任ではない。そんな開業支援は二度としたくない。だから、自分自身が事業についてアドバイスできない創業支援はやめました。
触れたくない過去なのですが、自分自身の開業支援における原点でもあります。「必ず生存美容室をつくること」このことを、これから独立を考える日本中の美容師に伝えることが私の役割です。
美容室の開業相談は「無料」です。無料の目的は、だれであっても、つぶれるような開業をしてほしくないから、全員に知ってほしいからです。そのために、中嶋自身がもっと多くの人に知られる存在でなければならないし、もっと多くの人が、気軽に、自由に、美容室の開業について相談できる環境を作らなければならない。未来が描ける美容室の開業を増やすために、自分の役割を全うします。
ではまた。
美容室専門税理士 中嶋 政雄
サロン開業アカデミーでは美容室開業に関するノウハウを動画で公開しています。公式ラインにご登録頂くと、無料でチャット相談が可能です。是非、ご活用下さい。
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