ビジネスモデル 納品物と成果物

ビジネスモデル 納品物と成果物


今回は、納品物と成果物について簡単にお話ししていきます。

渡したときには何も言われなかったのに後から「これ直さないと支払わないぞ」と文句を言われた、

受け取ったときは問題なかったのに後で問題が見つかった、

納品した映像作品を自分の実績として表示していいのかわからない、

等、これらは全て今回のお話に関りがある部分です。

■納品物とは

納品物、成果物、目的物、商品、完成品等ビジネスで相手に渡し、又は相手から受け取る「モノ」を示す用語は色々あります。実際契約書でもこれらが混在して記載されることはあります。

具体的には
売買する商品、コンサルタントが作成したレポートや仕様書、デザイナーが作成した映像、ライターが作成した記事、SEが作成したプログラムや要件定義書等でしょうか。
ちなみに弁護士が作成して依頼者に渡す契約書などの文書もこれに含まれます。

■納品物、成果物、目的物、商品、完成品等の違い

まず法律(民法)上、これらは全て「目的物」というくくりに入ります。
「成果物」のみ「(準)委任における(準)委任事務の履行の結果」できたものを「成果」とする(民法648条の2)」という規程がありますが、「成果物」は登場しません。

※「目的物」も定義はありませんが、契約の目的となる物、をいいます。そのまんまです。

ただ契約書では「目的物」という言い方はあまりしません。

売買契約なら「商品」「納品物」
業務委託や請負なら「成果物」「納品物」「完成品」
賃貸借だと「目的となる物品」「目的となる建物」

等でしょうか。

■特に大事な4つの場面
①納品、検品、保証

 まず馴染みがある納品からみましょう。
 モノであれば配送や手渡し、文書であれば郵送やFAX、メール添付、データであればUSB等の記録媒体や圧縮してメール添付、ドライブ共有等で納品することになります。

 納品に対して、「納品したものを○日以内に検品する。○日以内に通知がない場合検収完了とみなす。」といった「納品」「検品」「検収」といった条項があります。
 
 これは納品から○日を経過したら検収完了とみなし、以後原則、返品、交換、修理、訂正を受け付けません、というものです。ご自身が納品する側であれば必ず規定しましょう。でないといつまでたっても、検収が終わらず、請求できないといったトラブルになる場合があります。

 原則、といいましたが、「検品時にわからない不具合が納品から6ヶ月以内に明らかになった場合」は、検収完了後でも対応が必要です。商法526条第2項のルールですが、適用しない旨定めたり、6ヶ月を延長したりできます。

②請求タイミング

 契約書の多くは「末締め翌月末払い」のような締日と請求の記載をしています。
 この「締め」が「納品」なのか「検品」なのかで例えば以下の場合にかわります。

 9月28日に出荷し、30日に納品され、10月2日に検品が完了した場合、「納品」締めであれば9月度の請求対象ですが、「検品」締めですと10月度の請求対象となります。

③危険負担

 危険負担はあまり馴染みがないと思います。
 例えば、商品を工場から出荷してお店に運ぶ途中で商品が火事で焼失した(火事自体は誰のせいでもないとします)場合を考えてみましょう。

・出荷前の工場内で焼失した
・配送中のトラックが事故にあい焼失した
・お店に納品後検品前に焼失した
・お店の検品完了後代金支払前に焼失した

といくつかの段階がありますが、果たしてメーカーはどの段階からお店に対して焼失した商品の代金を請求できる(つまり商品の消失による損失(危険)をお店が負担する)のでしょうか?

 基本的に契約書では「納品後」とする場合が多いです。もちろん変更は可能です。

④知的財産

 契約書では、よく「成果物に含まれる著作権等」といった記載をすることが多いです。これは納品物と区別するというよりも、業務委託や請負で問題となることが多いためです。

 例えば、売買では仮に商品の納品をうけても、その商品の権利(ロゴや著作権、特許権等)が買主に移ることは一般的にありません。

 業務委託や請負の場合、コンサルタントが作成したレポートやデザイナーが作成したイラスト、SEが作成したプログラムは、クライアントが受けとった後自由に使うには著作権等の権利もあわせて取得する必要がある場合が多いです。
 著作権がない場合、会社はもらったイラストを社内で共有するためにコピーすることもできませんし、商品に印字したり、レイアウトを変更してネットに掲載することもできません。
 
 ただ逆にデザイナーやコンサルタント側は、全部渡してしまうと、同様のレイアウトや図を使った仕事が今後できなくなる危険があります。

■まとめ
納品物と成果物とこれらが契約上どういった場面で登場するかを簡単に話しました。

特に保証や知的財産はかなりビジネスモデルを考えるうえで重要な部分になります。
それはご自身だけでなく、契約のもう一方にとってもそうです。
なので先方からもらった契約書を漫然とそのまま使うことなく、弁護士等に相談するか、ご自身の契約書雛形を作りましょう。

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