2020年 92冊目『千夜千冊エディション 文明の奥と底』
松岡正剛さんのAIDAに参加します。
その課題図書の1冊でした。
文明について何も知らないという事を突き付けられた本でした。
山のようにドッグイヤーをつけたところを残しておきます。
モーセと一神教:ジークムント・フロイト
・モーセはユダヤ人の起源者ではなくエジプト人であり、古代エジプト第18王朝のアメンホテプ4世が名を変えてイクナートンとなったときに、ごくごく限られた宮廷集団で信仰していた「アートン教」の直系となったとみなした。
・アートン教は人類史上で初の純粋な一神教となった。
・モーセは出エジプトを敢行し、アートン教を持ち出し、ユダヤ人のためのヤハウェ一神教に変じさせた。
・モーセはユダヤ教を作っただけではなく、ユダヤ人を作った。
ユダヤ人とは誰か:アーサー・ケストラ
・原題は第13支族←12支族ではなく、こんな呼称は無い
・カザール(アシュケーナジ)系のユダヤ人の話
・ユダヤ人は2-3種類がある。
1スファラディのユダヤ人:旧約聖書のアブラハム、イサク、ヤコブの子孫=モーセの民
ミズラヒ(ステファラディに含まれることもある)→イスラエルにいる人たち。ほぼ半々。
2アシュケナージのユダヤ人:世界のユダヤ人1400万人の90%→本来のユダヤ人か議論→だから13支族
・イスラエルを作ったのはアシュケナージ、でもその後スファラディが入国
・スファラディとカザール人(戦士部族)の歴史はほぼ重なっている
・ユダヤ人問題の難解な特徴3つ
1本来のユダヤ教の聖典は「旧約聖書」「ソハール」「タルムード」。しかしアシュケナージは「タルムード」しか読まない
2モーセの民(スファラディ)はヘブライ語の民。
3ハシディズム(敬虔主義)→シオニズム:シオンやシオンの丘はエルサレムの別名
千年王国の追求:ノーマン・コーン
・ヨハネの黙示録は、7つの教会にあてられた書簡
・終末に起こるであろう出来事を記載
・その後の2000年にヨーロッパで起きることを暗示していると言えなくもない。
アンチキリスト:バーナッド・マッギン
・アンチキリストの存在を公然と信じている。キッシンジャー、ゴルバチョフ、サダム・フセインなど
・6つの特性
1ユダヤ人の血統
2使徒を派遣
3世界中から信奉者を集める
4追随者に徴をつけたがる
5人の姿をとってあらわれる
6神殿を作る
エルサレム:アモス・エロン
・エルサレムにはどの国の大使館もない
・エルサレムはユダヤ教、キリスト教、イスラム教など世界3大宗教の聖地
→ユダヤの嘆きの壁、イエスの苦難の道、イアスラムの岩のドームなどがある
→モーセが求めた約束の地、ダビデの町、ソロモンの宮殿
エルサレムの歴史
・ユダヤ民の憧憬:アブラハムに神がカナーンに行き唯一神として崇めなさい
・ヨセフはエジプトに移住:エジプトにアートン教(一神教)ができていた
・モーセが出エジプト(ヨセフの末裔がエジプトで奴隷のように扱われていた)
・ダビデがエルサレムを入手
・ソロモンがエルサレムに常設の神殿を設定←永遠の杭(モーセ契約の根拠がエルサレム)
・イエスの誕生
・イエスの死の2日後に遺体がなくなっていた。
→キリスト復活とユダヤ教とキリスト教の分離
→ディアスポラ状態のユダヤ教に代わってキリスト教がヨーロッパにしみ出す。
・135年ハドリアヌスがエルサレムの上にアエリア・カピトリーナをかぶせるように建造
・326年ヘレナがイエスの遺物を探しだし、教会を建てる
・イスラム社会が、メッカ、メディナに次いでエルサレムを聖なる都とみなす
・1095年~十字軍がエルサレムをめちゃくちゃにした
・第3回十字軍では、アイユーブ朝のサラディンが撃退。イスラム化したエルサレムの誕生
・16世紀オスマン朝のエルサレム経営
・(なんでも欲しがる)ナポレオンでさえ手に入れたがらない
・シオニズム:ユダヤ人の国家をユダヤ人のためにユダヤ人が作る
・1947年国連パレスチナ分割決議:ユダヤ人30%国家とアラブ人70%国家に分割でも土地は55%がユダヤ人
→イスラエルが独立国家
・1973年第4次中東戦争≒米ソ代理戦争
・湾岸戦争:アラブ・イスラム世界と欧米世界の文明を掛けた戦い
ユダヤ国家のパレスチナ人:ディヴィッド・グロスマン
・第一次中東戦争:アラブ対ユダヤ
・パレスチナ問題は3重構造
1イスラエルの一部にパレスチナが含まれていて
2パレスチナに聖都エルサレムが含まれる
3エルサレムは4つの地区に分かれ、異なる宗旨が分割して日々をおくっている
旧約聖書 ヨブ記
・旧約聖書は律法、預言書、諸書の3部構成
・ヨブが悪行をしていないのに不幸が起きた、その際に「神に申し立て」が可能なのかどうか
世の初めからかくされていること:ルネ・ジラール
・暴力を必然化する起源が、文明の初動や神との関係から生じていたのではないか
・思索のハードル
1重大な迫害と犠牲と隠ぺいがあったはず
2手に入れた権利な何だったのか
3隠ぺいや権利がどのように正当化されたのか
→先行文明の最も狡猾で利得に富んでいたことを継承者が横取りして、隠ぺいして、それを正当化していた。これの繰り返しだった。
アーリア神話:レオン・ポリアコフ
・アーリア神話がどのように超シナリオになり、ヒトラーの言説にまでなったのか
・スペインは、早くにゲルマン化していった国士
・ルネサンス期にはフランスと土市の言い分が食い違う
・イギリスは、自分たちの起源神話をギリシア・ローマ神話にも、ケルト神話にも、ゲルマン神話にも、聖書にも求めた
・各国で準備されたアーリア神話が、人類の単一性について説明するために超シナリオが作られた
・アーリア主義と反ユダヤ主義をダーウィンのいとこのゴルトンが形作った
→優生学という似非科学を作った
・ヒトラーやムッソリーニは新たな言説を作ったのではなく、アーリア・ゲルマン神話を援用した
黄禍論とな何か:ハインツ・ゴルヴァィツアー
・19世紀末から20世紀初頭にヨーロッパ、アメリカ、ロシアで同時に沸き上がった
1安価で忍耐強い黄色の労働力が白人の労働力を量がするのではないか
2日本製品の成功が欧米経済に打撃を与えるのではないか
3黄色人種の国が独立し、近代兵器で身を固めるのではないか
・日本では鴎外、天心、漱石が反論したが、政治家はそうではなかった
・アーリア神話、ゲルマン主義、優生学、断種政策、黄禍論が20世紀初頭を荒らしまくった
第一次文明戦争:マフディ・エルマンジェラ
・湾岸戦争が第一次文明戦争
戦争とプロパガンダ:エドワード・サイード
・アメリカは南北戦争に始まって、原住民、ハワイ、ナチス、日系移民、日本、ソ連、共産主義者、黒人、キューバ、イラン、テロリスト、イラク、北朝鮮と、つねに他者を挑発、摘発することでアメリカの正当性を強力にプロパガンダしてきた
長江文明の発見:徐朝龍
・白川静さんが独自の構想で予想
・5300年前に長江下流域に登場
神話から歴史へ:宮本一夫
・中国とは、国名でもなく、国家でもなく、文明である
・始まりは中原:黄河が交通の重要箇所だったから
・黄河の氾濫や洪水を止めるための努力が中国を萌芽
・秦の始皇帝が執行者で、隋の煬帝が大成者
・非中国地域は長らく、いてきであった→そのあたりまで進出した
・土器と農耕により定住→育児保証→女性の出生率を高めた
スキタイと匈奴、遊牧の文明:林敏雄
・文明の歴史を読むとは、ヘロドトスと司馬遷をどう読むか
・文明についての定義はあいまい
都市の発生
王権の誕生
巨大構造物の建設
官僚制度の確立
裁判の実施
文字の発明
グローバリゼーション人類5万年のドラマ:ナヤン・チャンダ
・グローバリゼーションの担い手を次のようにタームごとに絞った
→ミトコンドリア/小麦/馬/木綿/仏像/宣教師/帆船/交易商人/胡椒/奴隷/アヘン/コーヒー/郵便物/ジーンズ/レコード/真空管/トランジスタラジオ/ミニスカート/シリコンチップ/グーグルアース/iPod
1章:すべてはアフリカから始まった
2章:ラクダの隊商から電子商取引へ
3章:ワールド・インサイド:世界がその中に詰まっている:例:木綿、コーヒー、マイクロチップ
4章:布教師の時代
5章:流動する正解←おもしろくないそう
6章:帝国の織り成す世界
7章:奴隷、細菌、トロイの木馬:奴隷砂糖複合体プランテーション
銃・病原菌・鉄:ジャレド・ダイアモンド
本を書くきっかけ:ニューギニア人ヤリの言葉
→なぜ自国はヨーロッパの植民地になったのか。自分たちには自分たちの持ち物が無いのはなぜか。
1532年11月16日旧世界と新世界が出会った。スペインがインカ帝国を壊滅する端緒を開いた
3つの文明:鉄製の武器、銃、病原菌!
・問題意識:現在世界はなぜこんなにも不均衡になったのか
・1500年代の不均衡さを、一気に1万1000年まで遡る
→当時は各大陸とも狩猟採集をしていた
・一部は農業→定住→家畜・文字→青銅器→鉄器+車輪と大型船舶
・近代以降主導権は、アルファベットを選択した表音文字文明諸国
→紀元前8世紀にフェニキア人を介してギリシア人が工夫したアルファベットが源流
・文字から文明を生むには
1 戦闘力を増す鉄と銃の確保
2 余剰食糧→労働分化→集権的組織→国家
3 病原菌対策
・アステカを滅ぼしたのは、奴隷の天然痘(家畜がくれた死の贈り物)
物質・経済・資本主義:フェルナン・ブローデル
・オイコスとノモスが合体して資本主義になった交差点を叙述したもの
・対象は15-18世紀のヨーロッパ
・交換の無いところに社会はない
→どんな物品も市の外にある時は使用価値→市を通過すると交換価値に転じる
・その後世界は価格変動の波にさらわれた→市場経済が2つの顔を持った
1 透明な交換
2 反市場的な経済→為替手形の取引、契約書→不公平な交換→資本主義の誕生
西洋の没落:オスヴェルト・シュペングラー
・あらゆる文化は予定されていた歴史的運命によって発展し、変貌しついに円環をなす
→ナチズムを勇気づけ、鼓舞してしまった
鏡の背面:コンラート・ローレンツ
・告発した8つの大罪
1人口過剰
2生活空間の荒廃
3人間どうしの競争
4感性の衰滅
5遺伝的な荒廃
6伝統の破壊
7教化されやすさ
8核兵器
資本主義の文化的矛盾:ダニエル:ベル
・政治、経済=技術、文化は絶対に相いれない矛盾するものなる
・政治が公正を追求
・経済=技術が効率を追求
・文化が自己実現まなは自己満足を追求する
この3つは矛盾する
・政治は社会正義と権力が戦う
・技術と経済は合理的な機能をエンジンにする
・文化は、これらと反対に動く
ベルが上げた現代病
1解決不能の問題だけが問題になる病気
2議会政治が行き詰まるから議会政治をするという病気
3公共暴力を取り締まれば私的暴力がふえていくという病気
4地域を平等化すると地域格差が大きくなる病気
5人種間と部族間の対立が起こっていく病気
6知識階級が知識から疎外されていくという病気
7いったん受けた戦争の屈辱が忘れられなくなる病気
文明の衝突:サミュエル・ハンチントン
・西洋文明とイスラム・儒教コネクションがやがて衝突するだろう
・文明という言葉はラテン語に由来する。
・元々は都市や国家を意味していた。
・都市化や国家化がおこることがシヴィリゼーション
・都市化は
人口の集中→食料の充当→階級と職能の分化→交易力の拡大→公共建築物の定着→言語的記憶力の発達→支配的な表現様式の出現
※例外はある
・文明とは、その文明圏で技術による物的な所産や生産手段が発達して都市化が平均的に進むことをいう。
・今では情報ネットワークが行き渡ることを加えた方が良い。
・近未来は8つの文明
1欧米
2中華
3日本
4イスラム
5ヒンドゥ
6スラブ
7ラテンアメリカ
8アフリカ
肥満と飢餓:ラジ・パテル
・ニクソン時代:HFCS:異性化糖:甘味の代替に加えて、代謝の短絡→肥満
・フォード時代:パーム油:過剰摂取が肥満+発がん(BHA)
追伸:何が隠されてきたのか
・文明が大きくて文化が小さい、などということはない。
・文明がグローバルで、文化がローカルだという事もない。
・文化は変化が起こりやすく、文明は訂正が効きにくい。
・そのため文明はしばしば大きなウソをついたまままになる
・文明は歴史の中で、誇張、粉飾、糊塗を加えた、文章書き換えは今に始まった事ではない。