2014年1冊目「IT幸福論」
(※この記事は2014年に書いたものです)
今月お会いする予定のNTTデータ社長の岩本敏男さんの著書です。せっかくお会いするので事前情報収集で読みました。
IT業界に興味を持った方、例えば大学の教養のIT系の学生、非IT系学部卒業者でIT系の会社に入社した人にお奨めの本だと思います。基本的な事から応用的な事まで、それも先人の言葉からご自身の業界での長年の知識や経験に裏打ちされた内容まで様々な観点で分かりやすく説明しています。
冒頭はアルビン・トフラーの第三の波(私はこの本が大好きです)から話が始まり、現代は「革命期」だと述べています。情報とは何か?それを定義に遡って説明してくれています。
情報とは「対象の不確実性を減少させるもの」としてシャノン(情報の量 bitを定義)、サイモン(情報の階層 Data、Information、Intelligenceを経て意思決定に寄与)、ノイマン(情報の利用価値を定義)などの業績についても触れられています。
更に近年起こったチュニジアのジャスミン革命やそれを起こしたSNSの歴史も学べます。将棋やスポーツへのITの寄与などにも触れています。冒頭の入り方が様々な観点から書かれているので、一気に本に入れます。
2章では、情報通信の3大基本技術、CPU、ストレージ、ネットワークの進歩が等比級数的に進歩していることが、この革命を支えていることを学べます。例えばハードディスクの大容量化は1990年には文庫本約60冊分だったのが現在では文庫本600万冊分。実に10万倍になっています。
3章では、未来を予見しています。グローバリゼーションとITによってもう一つの地球ができていること、NTTDATA社が未来を予見する年次レポートを出していることに触れています。その上で4つの情報社会トレンドとして「知識やノウハウの活用へのシフト」「マスから個へ」「リアルタイム」「誰でも活用 ナチュラル・ユーザー・インターフェイス NUI)について説明し、更にそれを支える5つの技術トレンドについても触れています。
4章では、日本のIT投資が少なく、それが維持保守という守りに使われていて、新規開発という攻めに使われていないことを憂いています。この話は先日お会いした政府CIOの方もおっしゃっていました。これでは海外の企業に勝てないって話です。また、ITは相変わらず労働集約的であり、日本のお家芸のメーカーの生産技術から学ぶべきであると提言します。生産性向上などです。当然ながらNTTDATA社には、それを支援する自動化プログラミングなどの仕組みがあります(笑)
最終章では経営者のITとの関わり方について触れています。経営者がやりたい事を明確にすること、そしてそれの優先順位を決めれることの重要性を説いています。IT部門に任せっきりにする危険性や愚について警鐘を鳴らしているのです。まさに同感です。
また、ITの影についても触れています。即ち、動かなくなる事、暴走する可能性、犯罪への関与あるいは人の職を奪う可能性があることについても経営者は理解しなければいけないと書いています。
それらを理解した上でも、積極的にITを活用し、将来の幸せを目指したいと閉じています。
ITの全体像が網羅されていて、とても読みやすいですね。お奨めです。
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