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2024年92冊目「ほんとうの日本経済」

リクルートワークス研究所の坂本貴志さんの本です。私が同研究所にいた時に官僚から転職した2人のうちの1人です。最近2人とも良い本を書いていますよね。OBとして誇らしいです。

同研究所の未来予測2040の書籍版の位置づけですね。

この分野を良く知っている人にとっては既知の事も多いかもしれませんが、よくまとまっていて分かりやすいですね。

1.労働供給制約の深刻化

少子高齢化の進行により、2040年には労働人口が大幅に減少し、これが経済や生活基盤に直接的な影響を与えると予測されています。特に、インフラ維持や医療・福祉分野では、労働力不足が致命的な課題となります。また、地域間で労働力の偏在が起こり、都市部に労働力が集中する一方で地方ではサービスの提供が困難になる「労働機会の空洞化」が進行すると考えられています。

地方の活性化を含む政策を通じて、人口分布のバランスを是正する必要があります。これには、地方への移住を支援する政策や、地方経済を支えるテレワークの普及が重要です。

2. 賃金上昇とインフレーションの兆候

労働力不足は賃金上昇を招き、これが製品やサービスの価格上昇、ひいてはインフレーションを引き起こす可能性があります。特に人件費の増加は、企業の収益構造を圧迫し、コスト削減や価格競争にさらなるプレッシャーをかけるリスクがあります。

賃金上昇を経営のイノベーションや付加価値創造に結びつけることが求められます。例えば、製造業では高度な技術を取り入れ、単価を引き上げる戦略が必要です。

3. 機械化・自動化の進展

人手不足を補うため、建設業や運輸業などでロボットやAI技術の導入が進展しています。これにより労働力の物理的な補完が可能になる一方で、技術導入のコスト負担や従業員のスキル転換が課題となります。

機械化と人材育成を両立させる戦略が必要です。AIやロボット技術を活用するための教育や研修プログラムを企業規模を問わず導入し、従業員が新たな環境で活躍できるようにする必要があります。

4. 労働生産性の向上

生産性向上は労働供給制約への最大の処方箋とされています。これには業務プロセスの見直しやデジタル化の推進が不可欠です。特に、日本企業の「マニュアル的思考」から脱却し、柔軟な意思決定を可能にする文化改革が求められています。

RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)やデータ分析ツールを活用し、単調な業務を削減することで、人間がより創造的な仕事に注力できる環境を整備することが必要です。

5. 多様な人材の活用

高齢者や女性、外国人労働者といった多様な人材の活用が必須です。しかし、日本ではこうした人材の受け入れ態勢が不十分であり、ジェンダーギャップや移民政策への課題が指摘されています。

ワークライフバランスを向上させるための柔軟な労働条件や、女性管理職を増やすための積極的な人材育成プログラムの実施が急務です。また、外国人労働者を受け入れるための法整備や、文化的相互理解を促進する環境整備も必要です。

6. 労働環境の改善

労働環境を改善し、柔軟な働き方を導入することで、労働力を最大限活用することができます。具体的には、リモートワークやフリーランスの増加、さらにはパラレルキャリアを促進する施策が考えられます。

従業員が自分のキャリアを自由に選択し、複数のプロジェクトに関与できるような柔軟な労働形態を企業文化として根付かせることが、労働市場の活性化に繋がります。

▼前回のブックレビューです。

▼プレイングマネジャーを助ける本を書き、12/18から発売になりました。


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