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2014年31冊目「ジェフ・ベゾス果てなき野望」
480pもある読み応えのある本ですがお勧めです。アマゾンを創った無敵の奇才経営者 けたたましく笑い、批判を蹴散らし突き進むと副題に書かれています。
原書は The everything store:Jeff Bezos and the age of Amazon.とありますので、ジェフ・ベゾスが邦題を聞くと怒ってしまうかもしれません(笑)。しかし、内容を読むとその通りだとおもいます。
因みにアマゾンは外部への情報をコントロールしていたので、ここまでの内容がまとまって本になったのは初めてなのです。
私がアマゾンに興味を持ったのは1年ほど前に「アップルの失敗を犯さない」と言うコメントを読んだことでした。
もちろん、世界最大のショッピングモールであり、Kindleなど電子書籍を作り、何よりも最近はITの世界でAWS(Amazon Web Service=様々な従量課金のクラウドサービス)を立ち上げるなど注目してはいました。ただ、それらよりもこの「アップルの失敗を犯さない」が興味を引いたのです。
アップルは様々な革新的な商品を世の中に送り出したが、その高い利益率のせいで、競合企業も多数参入でき、しかも開発投資をする余力も与えてしまった。我々は顧客に最低価格を提示し(実際、赤字で販売することもあります。初期のAWSや配送料や初期の本の一律価格など)、競合企業が参入できないような利益率をターゲット(利益率は1、2%で2013年でも赤字の四半期があるくらいで、それでも株価は上がり続けているのです)にすることで、更に低価格を維持するとあったのです。
私はアップルについても、同社についてもそのような事を考えたことはありませんでした。しかし、アマゾンについて調べうる情報源は限られていました。ですので、この本は私の知的好奇心を満たしてくれることになったのです。
沢山のトピックスが載っているのですが、私がこの本を通して一番印象に残っているのは「顧客志向」。これも一般的に考えられるレベルの「顧客志向」とは桁違いなのです。
顧客には、沢山の選択肢を提供すべきである(だから The everything store)。それも最も安く提供することが良いことであり、それを実現できるのは我々だけであると言う思想というか教義が徹底されているのです。
これももしかすると思っている会社はたくさんあるかもしれませんが、アマゾンでは、これが関係者とのと軋轢を恐れずに徹底されているのです。
例えば、アマゾンの給料は決して高くありません。しかも福利厚生も良くありません。他のIT企業とは異なります。駐車場も有料です。食事も有料です。長時間労働です。ワークライフバランスとは無関係です。アイデアコンテストで入賞しても商品はスニーカーです。倹約を常に求められます。移動は役員でもエコノミーです。接待は自腹です。
しかも定期的に評価の低い人は首になります。上司は無理難題を言ってきます。その筆頭がジェフ・ベゾスです。顧客からの1通のクレームメールからも改善を求めます。それも短納期で、低コストで。ですので、合わない人は短期間で辞めていきます。
あるのは、苦しいけれどやりがいのある仕事だけです。顧客の要望を聞いてよりよりサービスを作り続ける仕事だけなのです。
顧客に低価格を提示するのを邪魔する場合、社内はもちろん、パートナー企業も容赦しません。仕入れ価格を下げることに協力しない会社には、アマゾン内ので表示順位を下げたり、カートボタンを無くしたり、はたまた3rdパーティで激安商品を並べたりします。
しばらくすると相手が根をあげてきます。新興競合であれば金にモノを言わせて、安売り攻勢をかけて資金的に兵糧攻めにして、買収してしまいます。それも短期間に、他の会社が提示する額よりも安くです。それを実現するために恫喝もします。仲間にならないと食べられてしまうと思わせるのです。獰猛なチータのような企業なのです。
もちろん、内部の生産性向上は凄まじいものがあります。これを放置すると内部コストが高くなり、低価格を維持できないからです。
倉庫の自動化は有名ですが、同社の仕事の仕方もユニークです。
ジェフ・ベゾスは、パワポの資料が嫌いです。その理由はキーワードなどで誤魔化すことができると考えているからです。
散文が良いと考えています。ですので、企画書は6枚までの文章が標準形です。みなで15分ほど読むそうです。それから議論が始まります。ただ、気に入らないとその場で破り捨てられることもしばしばです。これにより無駄な会議や時間を減らします(笑)
新商品や企画の場合は、顧客やマスコミへのニュースレターなどの広報資料の形式をとります。ニュースレターには、結局言いたいことが詰まっていますので、これから逆算して様々な事を議論するのです。
ジェフ・ベゾス流の無駄を省き低価格を維持する執念は凄まじいものがあります。同じようなことを考えてマネジメントしています。しかし、そのレベルと言うか徹底度合いがまったく違います。確か同い年です。もっともっともっと精進します。
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