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2014年6冊目「2045年問題 コンピュータが人類を超える日」

JUASの研修修了のご褒美で頂いた本です。おそらく自分では選ばない本ですがとても面白かったです。

2045年にコンピュータが人類全体の能力をはるかに超え、それ以降の歴史の進歩を予測できなくなると言う説があるそうです。知りませんでした。この問題を「2045年問題」と呼ぶのです。以前から類似の意見はあったのですが最近この仮説を唱えているのがiPhoneのSiriの音声認識の基礎研究を手掛けたアメリカのコンピュータ研究者のレイ・カーツワイルと言う方だそうです。

彼は進歩の3段階として遺伝子工学、ナノテクノロジー、ロボットを唱えています。遺伝子を改造することで人体改造が可能になり寿命が延び、更にナノテクにより赤血球レベルのロボットを作れるようになり、大半の病気を治せるようになります。そして最後のロボット、これは人工知能です。これによりコンピュータと人類が一体化すると言うわけです。そして結果として人類は「知りうることを、すべて知っていて、できることは何でもできる」ように進化して行くというのです。

カーツワイルはこの未来をかなり楽観的に考えているようです。しかし、著者はコンピュータが人間に逆らうかどうかが大きなポイントだと言います。

つまり、人工知能が意識を持ち生態圏に対して悪いことをする(している)人類を淘汰させる可能性があるかどうかと言うことです。ちなみに今までの宇宙の進化は強いものが弱いものを淘汰してきました。そう考えるとコンピュータが人類を淘汰するのもあり得るわけです。

ちなみに研究者の意見は3つに分かれるそうです。

進化の道なので人工知能に人類が滅ぼされるのは仕方が無いという方は宇宙の摂理なので「宇宙主義者」。
人類のために人工知能には意識を持たせず人類がコントロールすべきだと言うのが「地球主義者」
そして人類は人工知能の中に入って生き続けるのが良いというのが「サイボーグ主義者」です。
最後はマトリックスの世界ですね。講演などで参加者に多数決を取ると必ずしも地球主義者が多いわけではないそうです。みなさんはいかがですか?

ということは、2045年以降には4つのシナリオがあり得ます。

1つめは人類がコンピュータに支配される暗い未来です。マトリックスの世界ですね。
2つめはカーツワイルの描く未来で、コンピュータの中に意識をアップロードし、肉体を失った中で行き続けるというものです。
3つめは人類の子孫は肉体は持っていて、コンピュータを使って知能を増強しているというものです。
4つめは何も起こらないというものです。人工知能を開発することができないというものです。

うーん、どれも怖いですね。

どの未来が来るか分からないですが、直近でコンピュータの発展は第三の技術的失業を起こすはずだというのが著者の意見です。1回目の産業革命、2回目の近年の産業ロボット導入によるブルーカラーの失業。そして第三はロボットの発達による知的労働者、オフィスワーカの失業です。
コールセンターや証券トレーダー、弁護士などでその兆しが出てきていると言います。医療や教育でもロボット化が進む可能性があると言います。

では安泰な仕事は何か?トップとボトムだと言います。

トップとはロボットを作るコンピュータ・プログラム関係やトップマネジメント。そして、ボトムはマッサージや美容師、家庭の家事などロボットがすべて代替出来なかったり、ロボットにやってもらいたくない仕事だと言います。

例があまり出てこないのでドキドキします。生き残るためにコンピュータを使いこなすことと語学は必須だと言います。

この本の最終章は他のシミュレーションでも21世紀半ばに近代文明が崩壊する可能性があることについて書かれています。例えばエネルギー問題、人口問題、食糧問題などなどです。

一番最後に人工知能をこのように使ってはどうかという提言が書かれています。人の幸せは千差万別ですが、それを調べ、幸せに影響を及ぼす変数を確定させ、その変数に対して最適な法律や予算配分をシミュレーションするために使ってはどうかというのです。

全てが荒唐無稽にも思えるかもしれませんが、ここ数年のコンピュータの発展を見るとあながちあり得ない未来でもないとも思えます。一部の人たちだけではなく皆で幸せになることをきちんと考え始めるタイミングに来ているのかもしれないと思う本です。知識として知っておいても良いと思います。

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