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「申し訳ない、御社をつぶしたのは私です」読みました
経営コンサル業界30年の著者が書いた本です。刺激的なタイトルですね。原題も同じです。I'm Sorry I Broke Your Company.
著者は言います。コンサルは「芝居」で商売している。 「在庫管理システムを導入すれば問題解決します」と断言しながら、肝心なのはサプライチェーン間の信頼関係構築だったり、「商品開発プロセスリエンジニアリング」プロジェクトを立ち上げても、実際は関係者の連携強化を支援するに過ぎなかった。
また、様々なビジネス理論(と読んで良いのか疑問)は、数社の情報から作られた根拠に立脚しているに過ぎず、明らかに間違っていたり、矛盾するものも多い。実際、ポーターの唱える5つの力と3つの基本戦略は、市場動向と業界によって決まると唱え、ハメルはコアコンピタンスで、企業の能力が新市場をも作れると唱えている。当然矛盾している。更に実際のコンサル場面では、複数の理論をツギハギして、一見良いとこどりの提案をしていることも少なくない。
画期的な「戦略計画」を作っても、その会社では出来ないことが大半だ。「最適化プロセス」は机上の空論で、データよりも現場の付箋の方が役立つことも多い。「数値目標」は上手に使えるケースもあるが、コストも売上もただの数え方の問題で短期的にはごまかしが効く。実際、数値目標を達成しながら業績が下がった会社も少なくない。「業績管理システム」を導入して、現場の士気はガタ落ちし、期末には、誰のために作っているのか分からない、終わりのない書類を作成している管理職をたくさん作ってしまっている。
世の中にはたくさんの「マネジメントモデル」があり、たくさんのマニュアルがある。あれを全て実行するのは不可能である。「人材開発プログラム」も曲者だ。そこに長期に参加した人はポストを失っている事が多い。「ベストプラクティス」は奇跡のダイエット食品。当り前の話だけれど全ての会社に当てはまるわけでは無い。
結果、コンサルが去った後に残るのは大量の資料だけに過ぎない。コンサル業界は企業が本来取り組むべき「どうしたら我が社はビジネスを通じて人々の暮らしをもっと良くするために貢献できるのか」を支援すべきである。
これだけ読むとコンサル批判に思うかもしれません。しかし、彼女が最終的に書いているのは、従来のコンサルティングファームの問題点であり、クライアントとコンサルタントの正しい付き合い方です。それは、「コンサルティングにおいて重要なのは方法論やツールではなく、対話である」「クライアントは経営をコンサルに任せずに、自分たちでももっとちゃんと考えるべきだ」という至極まっとうな話です。
実際、彼女はそれを実現するコンサルティング会社を立ち上げてもいます。
最後に「コンサルタントが役に立つ時、立たない時」「危険なコンサルタントの見分け方」「正しい理論、間違った理論」の3表が載っています。理論のところが面白かったのでメモしておきます。
・業績給やインセンティブ報酬は従業員をやる気にさせ、会社の目標に向かって努力させるのに役立つ:偽
・数値目標や指標付きの目標は従業員をやる気にさせ、業績の向上に役立つ。:偽
・会社が成功するためには優れた戦略が必要だ:証明されていない
・リーダには一定の特性が必要だ:証明されていない
・マネジメントには優れた対人スキルが必要である:正
・従業員への投資を行う企業は行わない企業より業績が良い(研修など人材開発や士気を高める活動への投資):正
当り前ですが、他人の意見に盲目的に従ってはいけないですね。
この本を読んで、Rはコンサル会社さんと比較的上手にお付き合いさせて頂いている気がしました。
※これは2014年50冊目の記事を転記したものです。
▼PIVOTに出演しました。よかったらご覧ください。
▼2024年12月18日に発売したプレイングマネジャー本、そこそこ評判良いです。良かったら読んでみてください。