2019年 6冊目『人を助けるすんごい仕組み』
東日本の大震災の際に3000人のボランティアを組織化した「ふんばろう東日本支援プロジェクト」についてのノンフィクションです。
早稲田大学の講師で、ボランティア経験0の西條さんが、ご自身の研究テーマである構造構成主義を応用し、組織化を実現しました。
構造構成主義とは、「『方法』というのは、必ず『ある特定の状況』で使われますよね。『ある特定の状況』のもとで『ある目的を達成する手段』のことを『方法』と呼びますが、これって定義上『例外』がないんです。
要するに、考えればいいポイントは2つしかない。それは『状況』と『目的』です。いまはどういう状況で、何を目的にしているのか。今回の場合、目的は『被災者支援』ですけれども、この2つを見定めることで、『方法』の有効性が決まってくるんです」と説明されています。
具体的な事例としては、「実際、最初に「家電プロジェクト」を実施しようとしたとき、「ふんばろう」の現地スタッフからも、「公平に家電を渡せなければ、問題が起こる可能性があるからやめてほしい」と強く言われたことがある。僕は「僕らの目的は被災者支援です。問題を起こさないことが目的ではありません。被災者支援が目的である限り、やめるという選択肢はないのです」と説得することでわかってもらうことができたのだが、このように、「被災者支援」が目的なはずなのに、いつのまにかそうではないことに「関心」がすり替わってしまうことはめずらしくないのである」と説明されていました。
方法が論理的な一方、糸井重里さんとの対談の中では次のような会話がなされます。
「西條さんたちのプロジェクトには、常に『人の理解』が根っこにありますね」と指摘したように、非常に暖かみのあるものです。
「はい。『人間の心』に沿っていれば、自然とうまくいきます。そうじゃないと、必ず無理が生じて続かないんです。僕らは『人が人を支援する』という考え方を基本にしているんです。
人間は『忘れてしまう動物』ですけれど、人と人の間に縁が生まれれば、それが絆となって、絶対に『忘れる』ことには、ならない」
今後の災害支援のモデルケースになるだけでなく、応用範囲の広い仕組みというか考え方で、大変勉強になりました。
いろいろな具体的なエピソードも載っています。
西條さんが現地現物で把握した事実とニュースの間違った報道を目の当たりにして、あっという間に解決した話など素晴らしすぎて驚いてしまいます。
災害時の支援物資の基本的な輸送は、多段階輸送が前提でした。
大規模避難所→中規模避難所→小規模避難所や仮設住宅。
つまり自治体や赤十字社の支援物資は大きな避難所に集中しているのですが、仕分けができない。
しかも小規模な避難所と大規模な避難所の連絡網もできていない。
結果、大規模避難所では、支援物資の受け入れ拒否をおこし、物資はもういらないと誤ったニュースが流れてしまいます。
一方で、小規模避難所には物資が届かない。
小規模避難所に直接連絡をし、必要な物資を聞き取り、それをSNSにアップする。
それを送れる人が直接現地に送る。
しかも送ったらリストから消し込む。
つまり多段階輸送を直送に変えることで、必要なものが必要な所に届く仕組みを作るのです。
また、仮設住宅には電化製品が配給されるのですが、半壊した家で避難生活を送っている人々にはそのような支援は無かったのです。
しかし、実際は半壊した1階にテレビ、洗濯機、冷蔵庫といった主要な家電製品があり、使えなくなっていたのです。
それら半壊した家に全国の中古電化製品を贈るネットワークを作り上げます。
これらを実行した3000人のボランティア組織のふんばろう東日本は、代表の西條さん以外、融通無碍な組織なのです。
出入り自由、適材適所の組織なのです。
第56回TTPS勉強会にも来てもらいましたが、とても有意義な時間でした。
1月末から西條さんが主催されるエッセンシャルマネジメントスクール(全8週)にも参加しようと思っています。
楽しみです。